自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆核攻撃をシュミレーション 北朝鮮また弾道ミサイル

2023年08月31日 | ⇒ニュース走査

          北朝鮮が深夜にまた弾道ミサイルを日本海に向けて発射した。防衛省公式サイト(31日付)によると、発射は30日午後11時38分と同午後11時46分の2回。1回目は最高高度およそ50㌔で、350㌔ほど飛翔した。2回目も最高高度およそ50㌔で、400㌔ほど飛翔した。2発とも北朝鮮西岸付近から発射され、落下したのはいずれも朝鮮半島東岸の日本海で、日本のEEZ外だった=イメージ図、防衛省作成=。

   北朝鮮は1週間前の今月24日午前3時51分、北朝鮮北西部沿岸地域から、弾道ミサイル技術を使用した衛星を発射している。発射された1発は複数に分離し、午前4時ごろまでに日本のEEZ外にあたる朝鮮半島の西300㌔ほどの黄海、南西およそ350㌔の東シナ海、フィリピンの東600㌔程度の太平洋にそれぞれ落下した。衛星の打ち上げを試みたものの、地球周回軌道への衛星の投入は確認されておらず、打ち上げは失敗したとみられる。

   北朝鮮は失敗を繰り返しながら弾道ミサイル技術を進化させ、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発にこぎつけている。そして、ミサイルよりさらに高コストの衛星の打ち上げにも挑んでいる。では、今回の深夜2発はどのような意図で打ち上げたのか。読売新聞Web版(31日付)によると、北朝鮮の朝鮮中央通信は、北朝鮮軍が30日夜、平壌の飛行場から北東に向け、弾道ミサイル2発を発射する「戦術核打撃訓練」を実施したと報じている。

   「戦術核打撃訓練」とはどのような訓練なのか。BBCニュースWeb版(31日付)は「North Korea says it simulated nuclear strike on South」(意訳:北朝鮮、韓国への核攻撃をシミュレーションしたと発表)の見出しで今回の発射を伝えている=写真・下=。北朝鮮の発射は、韓国軍とアメリカ軍による11日間の合同軍事演習の最終日の前日に行われた。北朝鮮はこれまで「合同訓練は戦争のリハーサル」として非難してきたが、最近では軍事行動によって明確なメッセージを送っている。「戦術核打撃訓練」は韓国軍の主要な司令部と飛行場を戦術核で攻撃する作戦のシュミレーションと分析されている。

   確かに、防衛省が作成した落下地点のイメージ図をそのまま南に向けるとソウルなどの拠点がすっぽりと入る。さらにメディアによると、今回発射された2発の弾道ミサイルは目標とした島の上空400㍍で空中爆発をさせている。これは、核弾頭の空中起爆を想定した訓練だったと、朝鮮中央通信を引用して伝えている(31日付・日経新聞Web版)。

   となれば、核兵器の開発を急ぐ北朝鮮の7回目の核実験はいつあるのか、いつ起きても不思議ではない情勢になってきた。   

⇒31日(木)午前・金沢の天気  はれ時々くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★最後の一滴までモニタリング IAEAの科学のスタンス

2023年08月30日 | ⇒ニュース走査

   きょうの金沢は最高気温が33度の予報で真夏日が続く。ただ、夜にはスズムシやコウロギの虫の音が聞こえ、季節の移ろいを感じさせる。和室の床の間の掛け軸もそろそろ秋のものをと思い、掛け替えた。「清風払明月(せいふうめいげつをはらう)」=写真・上=。すがすがしい秋の夜、月は明るくこの世を照らし、風がしずかに吹きわたる(『茶席の禅語大辞典』淡交社)。 

   この句は「明月払清風」と対句である。明月と秋風が、互いに主となり客となり無心に払い合って自然美を極めている、という意味だろうか。それに比べ、世俗の人の動きはなんとも醜い。

   福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する措置を始めた日本に対し、中国の嫌がらせが止まらない。NHKニュースWeb版(29日付)によると、北京にある日本大使館で今月24日、中国人が大使館の敷地にレンガの破片を投げ込み、その場で警察に拘束された。これについて、中国外務省の報道官は29日の記者会見で、「日本政府が核汚染水の海への放出を一方的に強行し、各国の国民の強烈な憤慨を引き起こしたことが根本的な原因だ」と述べ、日本側に責任があると主張し、レンガの破片を投げ込んだ行為を正当化した。

   この建前論で何でも正当化されるのであれば、日本人に対する略奪行為などが許されることにもなる。すでに、日本人学校で石や卵が投げ込まれているのが見つかったほか、日本の大使館や総領事館には嫌がらせの電話などが相次いでいる。

   去年2月に処理水の海洋放出についての安全性を評価するため、IAEA調査団が現地調査を行っている。調査団はIAEAスタッフ7人と各国の専門家8人で構成され、中国と韓国の専門家も加わっていた。5日間にわたって、トリチウムを含む処理水の放出方法や、環境への影響を調べた。IAEAはことし7月4日、処理水の海洋放出について、国際安全基準に合致していることを結論付ける「包括報告書」=写真・下、経済産業省公式サイト「国際機関によるALPS処理水海洋放出の安全性確認」より=を公表している。

   同月7日にIAEAのグロッシ事務局長はNHKの単独インタビューに応じ、海洋放出する日本の計画は「国際的な安全基準に合致する」と評価したIAEAの報告書について「科学的に正しく、全面的に支える」と強調。中国や韓国などであがっている懸念の声について、「批判的な声があがることは予想外でも驚くことでもない。IAEAは商業的にも政治的にも利害関係がなく、原子力の安全確保を使命とする者として中立の声を届けることで役立てる。批判的な声などと向き合い、不安を取り除くために責任を果たすことが重要だ」と述べ、IAEAとしても向き合っていく考えを示した(7月8日付・NHKニュースWeb版)。

   さらに、AFP通信Web版日本語(30日付)によると、スウェーデンの首都ストックホルムを訪問中のグロッシ事務局長は29日、AFPのインタビューに対し、「(日本の処理水の海洋放出について)これまでに確認した限りでは、初期に放出された処理水に有害なレベルの放射性核種(物質)は一切含まれていなかった」「第1段階は想定通りだが、最後の一滴が放出されるまで(モニタリングを)続ける」と述べた。

   科学に基づいた調査を行い、その結論からIAEAとしてのスタンスは崩さない。そして、「最後の一滴」までモニタリングを続ける、と。実にすがすがしい秋の夜の明るい月のようなストーリーではある。

⇒30日(水)午後・金沢の天気    くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆盆過ぎても猛烈な残暑 「寝釈迦」の積乱雲に思うこと

2023年08月29日 | ⇒トピック往来

   盆を過ぎても猛烈な残暑が続く。きのう28日、能登半島で一番高い山として知られる宝達山(637㍍)のふもとの国道を走行していると、積乱雲が山を覆っているのが見えた。よく見ると、右腕を腕枕にして寝ている姿のようにも見え、まるで「寝釈迦」だと思い、シャッターを切った=撮影午後3時57分=。

   雲の面白いカタチは想像をたくましくさせてくれるが、積乱雲には気を付けたい。もう15年も前のことだが、「ダウンバースト」という現象が起きた。航空自衛隊がある石川県小松市。2008年7月27日午後3時半ごろ、突風が吹き荒れた。航空自衛隊小松基地が観測した最大風速は35㍍で、「強い台風」の分類だ。このため、神社の高さ4㍍の灯ろうが倒れたり、電柱が倒壊したり、民家70棟の窓ガラスが割れるなど被害が及んだ。このとき、小松基地が発表するのに使った言葉が「ダウンバースト」だった。積乱雲から急激に吹き降ろす下降気流。ダウンバースト、初めて聞いた言葉だった。

  同じ日に積乱雲の「ガストフロント」という現象が起きた。福井県敦賀市や滋賀県彦根市で午後1時ごろ、最大瞬間風速21㍍余り。敦賀では「西の空が急に暗くなって雨が強くなって、突風がきた」。このため、イベントの大型テントが横倒しになった。福井地方気象台では突風の原因を「ガストフロント」と説明した。非常に発達した積乱雲が成熟期から衰退期かけて発生する雨と風の現象。小型の寒冷前線のようなものでその線に沿って突風が吹く。北陸に前線が停滞し積乱雲が発生、ガストフロント現象が起き、その前線となった金沢では豪雨が、小松、敦賀、彦根では風速21㍍から35㍍のダウンバーストが発生した。

   地球環境学者のレスター・ブラウンは著書『プランB3.0』(2008)で述べている。「温暖化がもたらす脅威は何も海面の上昇だけではない。海面温度が上昇すれば、より多くのエネルギーが大気中に広がり、暴風雨の破壊力が増すことになる。破壊力を増した強力な暴風雨と海面の上昇が組み合わされば、大災害につながる恐れがある」と。

   レスター・ブラウンの警鐘が現実になった。異常気象は世界を覆っている。ことしの7月の暑さが記録的だったことから、国連のグレーテス事務総長は「the planet is entering an "era of global boiling"(地球は沸騰化の時代に入った)」と述べた。ことし11月から開催される国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、二酸化炭素を排出するすべての化石燃料の段階的廃止の具体化が決議されるのではないか、と自身は注目している。

⇒29日(火)午前・金沢の天気    はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★処理水放出めぐる中国の動き 福沢諭吉ならどう語る

2023年08月28日 | ⇒トレンド探査

   やはりあのシーンが印象的だ。夏の全国高校野球で慶応高校が、連覇を目指した仙台育英高校に8対2で勝って、107年ぶりに優勝を果たした。テレビの生中継を視聴していたが、慶応大学のOB・OGがいっしょになってスクラムを組んで応援歌『若き血』を歌う、あの応援ぶりは今でも耳目に焼きついている。OBの一人なのでそう思うのかもしれないが。

   甲子園で決勝を観戦した大学時代の友人からSMSメールが届いた。「ひさしぶりに若き血を歌って、盛り上がった。これも福沢センセイのおかげ、引退を前に福業ですな」と。後半の「引退」と「福業」という文字が気になって、何度かメールを交わした。

   福沢センセイは慶応の創設者である福沢諭吉のこと。引退の意味は、2024年度から1万円札のデザインが福沢諭吉から渋沢栄一になるとのことのようだ。そして、「福業」とは神業をもじったもので、福沢諭吉のオーラがこの決勝戦にはあふれていたとの意味を込めていた。

   なるほど。1984年に1万円札のデザインが聖徳太子から福沢諭吉になったので、40年を経て来年「引退」だ。引退前に大正時代の第2回大会以来、107年ぶり2回目の優勝に導いてくれたという、少々スピリチュアルなスト-リーだ。

   話は変えて、では、もし福沢センセイが生きておられたら、このニュースについてどう語るだろうか。東京電力福島第1原発の処理水の放出をめぐり、中国で抗議や嫌がらせが相次いでいる一連の動きだ。もともと福沢諭吉は隣国に対する憤りの念を持っていた。主宰する日刊紙「時事新報」(明治18年3月16日付)の1面社説にこう記した。「我れは心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」と。

   社説は福沢の「脱亜論」で知られる。福沢の執筆の背景は、当時の清国、李氏朝鮮は近代化を拒否して儒教などの旧態依然とした体制に固執していた。そこで福沢は政治的な縁切り(国交断絶)ではなく、「謝絶」と表現した。要求には謝りつつ応じない、と。当時の福沢の気持ちが現代にも通じるのではないか。そして、福沢センセイは「中国は昔も今も変わりませんな。放っておきなさい」と苦笑いするかもしれない。

(※写真は、慶応義塾大学三田キャンパスの福沢諭吉像)

⇒28日(月)午前・金沢の天気    はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆「核汚染水」キャンペーンを張る中国のどん詰まり事情

2023年08月26日 | ⇒ニュース走査

   それにしても中国では過剰反応が起きている。福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する措置が今月24日に始まったことを受けて、中国の税関総署は「日本水産物の輸入全面停止に関する公告」を出し、即日発効した。それ以前からも、中国税関は日本からの輸入食品、特に水産品(ホタテ貝など魚介類など含む)に放射能検査を課していた。検査結果が出るまで商品が留め置かれるため、輸出する日本側の企業は魚介類の鮮度の悪化を考慮し、出荷を止めざるを得なかった。実質的な中国側の水産物の輸入禁止措置だった。

   さらに24日以降は、処理水の放出とは関係のない日本国内の個人や団体に対して中国から嫌がらせの電話が相次いでいる。メディア各社の報道によると、とくに、福島県内の自治体や飲食店、学校などに中国の国番号「86」から始まる国際電話の着信があり、たどたどしい日本語で処理水の放出の理由を尋ねたり、中には「汚染水を飲みましたか、おいしかったですか」「核汚染水の放出は国際犯罪だ」と大声を出す者もいる。以下は憶測だが、この電話をかけている若者たちは電話番号を調べるチームと電話をかけるチームで分担しているのではないか。つまり「動員された者たち」ではないだろうか。

    中国が相手につけ込む振る舞いをするのは今回の処理水の放出だけではない。直近だと、ことし1月10日に中国国家移民管理局は日本に対し入国ビザ発給を中断し、トランジットビザ免除政策も中断した(1月29日に再開)。当時、中国では新型コロナウイルスの感染爆発が起きていて、日本政府が中国本土から入国する人を対象に抗原検査など水際措置を強化したことに対して、中国側は「差別的入国制限」の対抗策だと発表していた。

   今回の処理水の放出に関連する中国側の水産物の輸入全面停止には別の意図も感じる。巨額な赤字で経営危機に陥っている中国の不動産大手「恒大グループ」は今月17日、アメリカ・ニューヨーク州のマンハッタン地区連邦破産裁判所に連邦破産法15条の適用を申請した。恒大グループだけでなく、中国最大級の不動産会社「碧桂園」も経営危機が表面化していて、不動産危機の不安が高まっている。販売されたものの未完成の集合住宅は72万戸もあるとされ、住宅に入居できない人からは抗議の声が各地で上がっている。

   また、経済指標も悪化していて、雇用で言えば16歳から24歳までの若者の失業率(6月分)は過去最悪の21.3%と発表された。しかし、都合の悪い数字なので、7月分以降は非公表としている。

   憶測だが、中国政府とすれば拡大する不都合な現状から人々の目をそらしたいのではないか。なので、国を挙げて大々的な「核汚染水」キャンペーンを張っている。そう思えてならない。

(※写真は、2022年5月19日、福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に向けて現地視察をするIAEAのグロッシ-事務局長=東京電力公式サイトより)

⇒26日(土)夜・金沢の天気    はれ 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★プリゴジン氏「墜落死」はプーチン大統領の「粛清」なのか

2023年08月25日 | ⇒ニュース走査

   ロシアには「チーストカ(чистка、粛清)」の歴史がある。あのソビエト連邦時代の最高指導者だったスターリン(1878-1953)は国内の反革命や不正者を徹底的に弾圧したことで歴史上で知られる。粛清は、ある意味で敵の脅威をつくり出すことで国民を恐れさせ、団結させることにあるとされる。たった一日とは言え、私兵を率いて政府軍に盾突いたプリゴンジ氏はプーチン大統領にとっては、いわゆる「反逆者」だ。はたしてプーチン氏は彼を許すだろうか。

   その結末が、プリゴジン氏が搭乗していた自家用ジェット機が今月23日、モスクワ北西のトベリ州で墜落し、乗客乗員10人全員死亡したことだ。ジェット機はモスクワからサンクトペテルブルクに向かっていた。

   この事故について、アメリカの複数のメディアは機内に仕掛けられた爆発物が爆発したことによって墜落した可能性があると伝えている。24日付の「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、「Early Intelligence Suggests Prigozhin Was Assassinated, U.S. Officials Say」の見出し=写真=で、アメリカ政府当局者の初期段階の分析として、機内に仕掛けられた爆発物が爆発したか、あるいは破壊工作がなされたことによる墜落と見られると報じている。また、イギリス政府当局者のコメントとして、ロシアの連邦保安庁(FSB)が関与した可能性が高い、と伝えている。

   「ニューヨーク・タイムズ」は、欧米の政府当局者の初期段階の分析としてジェット機内に仕掛けられた爆発物が有力な原因だとする一方、不純物が混ざった燃料が爆発を引き起こした可能性もあると報じている。

   この事故について、プーチン大統領は24日、ウクライナ東部ドネツク州の親ロシア派の代表と会談した際、「犠牲者の家族に哀悼の意を表したい」「プリゴジン氏のことは1990年代初めからよく知っている。複雑な運命を背負った男だ。人生で重大な過ちを犯したが、私の求めには必要な結果も達成した。才能のある人物だった。彼はきのう、アフリカから戻ったばかりでここで何人かの関係者と会っていた」などと述べ、プリゴジン氏の死亡を認めた(25日付・NHKニュースWeb版)。

   以下は憶測だ。プーチン大統領はプリゴジン氏の遺体があったとしてもおそらく遺族には引き渡さずに、完全に消去するのではないだろうか。ロシアの粛清方法は、墓などをつくらせずに、地上に存在したことを消すことだ。

⇒25日(金)夜・金沢の天気   はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆国土保全より衛星開発を優先させる隣国の事情

2023年08月24日 | ⇒ニュース走査

   北朝鮮がまた弾道ミサイルのような衛星を発射した。防衛省公式サイト(24日付)によると、北朝鮮はきょう午前3時51分、北朝鮮北西部沿岸地域のトンチャンリ地区から、弾道ミサイル技術を使用した衛星の発射を強行した。発射された1発は複数に分離し、午前4時ごろまでに日本のEEZ外にあたる朝鮮半島の西300㌔ほどの黄海、南西およそ350㌔の東シナ海、フィリピンの東600㌔程度の太平洋にそれぞれ落下したと推定される=イメージ図、防衛省作成=。衛星の打ち上げを試みたものの、地球周回軌道への衛星の投入は確認されておらず、衛星打ち上げは失敗したとみられる。

   北朝鮮は5月31日にも衛星を打ち上げたが、エンジン異常で墜落。今月22日に、24日午前0時から31日午前0時に再度衛星を打ち上げると海上保安庁などに通告していた。これに対し、内閣府は衛星打ち上げが目的であっても、弾道ミサイル技術を用いた発射は国連安保理の決議違反であると非難していた。

   朝日新聞Web版は、北朝鮮の朝鮮中央通信のきょうの発表を伝えている。偵察衛星「万里鏡1号」を新型の衛星運搬ロケット「千里馬1型」に載せ、北朝鮮北西部、平安北道(ピョンアンブクト)の「西海衛星発射場」から発射した。2段目までは正常に飛行したが、3段目の飛行中に「非常爆発システムに異常が発生した」としている。北朝鮮の国家宇宙開発局は「エンジンの信頼性とシステム上、大きな問題ではない」と主張。原因究明と対策を進め、「10月に3回目の偵察衛星発射を断行する」と伝えている。

   北朝鮮は失敗を繰り返しながら弾道ミサイル技術を進化させ、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の開発にこぎつけた。しかし、ミサイルよりさらに高コストの衛星を打ち上げたが再度失敗。そして、22日付のロイター通信Web版日本語は、金正恩総書記が干拓地の冠水を巡り金徳訓首相の対応が「無責任」だったために、国家経済に深刻な損害を与えたと強く批判したと報じている。国土保全より人工衛星が優先されているようだ。

⇒24日(木)夜・金沢の天気    はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★応援歌『若き血』の大合唱 懐かしくもあり

2023年08月23日 | ⇒ニュース走査

   慶応大学の応援歌『若き血』はかつて自身も歌っていた。それは神宮野球場で開催される東京六大学野球での対早稲田大学との慶早戦のときだ。点数が入るごとに、「若き血に 燃ゆるもの・・・陸の王者 慶応」と隣席の学生と肩を組んで歌った。すると、早稲田も点数が入るごとに応援歌『紺碧の空』を「紺碧の空 仰ぐ日輪・・・覇者 覇者 早稲田」と歌う。この応援合戦にやりがいを感じたものだ。なので、対戦相手が早稲田以外のチーム(明治、法政、東京、立教)の応援に行ったことがない。

   その懐かしい光景が甲子園球場での全国高校野球選手権大会の決勝戦、慶應高校と仙台育英高校との対戦でクローズアップされた。初回、1番・丸田外野手の右翼スタンドへの先頭打者アーチから始まり、慶応が得点を奪うたびに、三塁内野席、左翼スタンドの応援団が肩を組んでの『若き血』の大合唱が沸き起こった。

   1916年以来、107年ぶりに優勝をかけた試合だったので、おそらく関西在住の慶応大学の在校生やOB・OGも応援に駆けつけたのだろう。応援方法は冒頭のように、対早稲田戦での応援合戦で経験があるので、『若き血』の大合唱に参加することができた。三塁側アルプススタンドを含めた球場左半分からの大声援が球場に鳴り響いた。

   球場全体が慶應の応援団というような雰囲気で仙台育英にとっては、いわゆるアウェイムードは想定外だったのかもしれない。テレビで視ていると、この大声援で仙台育英の外野手同士が声が聞こえにくそうにしている場面もあった。ただ、慶応の応援団は、相手守備陣がタイムを取った時などは声量を落とすなど配慮をしているようにも感じた。

⇒23日(水)夜・能登の天気     くもり    

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆超高齢化社会の妙薬か 認知症新薬「レカネマブ」承認へ

2023年08月22日 | ⇒ニュース走査

   ようやく承認されることになった。メディア各社の報道によると、早期アルツハイマー病の新薬として期待されている「LEQEMBI(レカネマブ)」がきのう21日に厚労省専門部会で承認が了承された。日本のエーザイが主導し、アメリカの医薬品バイオジェンと共同開発した。冒頭に「ようやく」と述べたのも、アメリカでは食品医薬品局(FDA)がことし1月により早く治療を提供する「迅速承認」という措置で承認し、7月6日に正式承認を行っている。

   アルツハイマー病は、脳内に異常なタンパク質「アミロイドβ 」が蓄積することで神経細胞が傷つき、記憶力や判断力などが低下するとされる。これまでの治療薬は症状の一時的な改善を促すものだが、レカネマブは脳内のアミロイドβ そのものを除去することで病気の進行を長期的に遅らせる。臨床試験でこの新薬を投与したグループと偽薬のグループを比較し、レカネマブのグループでは記憶や判断力などの症状の悪化が27%抑制された。両社は日米欧、中国、韓国などで承認申請を行っている(エーザイ公式サイト)。

   これがアルツハイマー病の画期的な治療薬になるとすれば、問題は治療費だ。2週間に1回、体重に応じた点滴を施すことになる。アメリカでの価格は、体重75㌔の患者に換算して1人当たり年間2万6500㌦ と設定している(同)。きょうの為替相場は1㌦146円なので、ざっと387万円だ。今回の日本での承認の了承によって、年内にも保険適用の対象となる可能性があると報じられている。仮に年間1万人が利用するとして、年間387億円となる。高額医療の患者負担の割合をどのように設定するのか、議論になるだろう。アメリカでは高齢者向け公的医療保険「メディケア」は保険適用の対象とし、患者負担を2割程度に抑えている(7月7日・東京新聞Web版)。

   さらに検査体制だ。投薬の対象者は日常生活に支障がない「軽度」のアルツハイマー病患者が想定されている。軽度かどうかは、アミロイドβ の蓄積量を調べる検査が必要となる。2通りあり、一つはアミロイドPET(陽電子放射断層撮影)での測定と、二つめが脳脊髄液を採取して測る。いずれも保険適用外である。レカネマブの承認と同時に検査体制の充実もキーポイントになってくるだろう。   

   国内のアルツハイマー型認知症の医療や介護に要するコストは、家族による無償の介護を金額に換算した額を含めると、最大で年間12兆6000億円を超えるとの推計値の報告がある(2021年3月・「Journal of Alzheimer's Disease」国際医療福祉大学医学部公衆衛生学の池田俊也氏らの研究)。今回のレカネマブの承認が、超高齢化社会といわれる日本で、患者の生活の質を向上させ、家族の負担を減らす「妙薬」となってほしいと願う。

⇒22日(火)午後・金沢の天気    はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★日米韓はワンランクアップで結束 どう出る中国は反発

2023年08月21日 | ⇒ニュース走査

   アメリカ大統領の専用別荘「キャンプデービッド」はアメリカの外交のシンボルのようなイメージがある。ホワイトハウスは少々堅い印象だが、キャンプデービッドは打ち解けた雰囲気で会談ができ、首脳間の親密さを演出するのにもってこいの場所なのだろう。そのキャンプデービッドで日米韓3か国の首脳会談を開催(日本時間19日未明)、これまでよりワンランクアップした安全保障の連携に合意した。

   外務省公式サイトには首脳会談で合意した共同声明「キャンプデービッドの精神」(日本語は外務省の仮訳)が掲載されている。冒頭で「強固な日米同盟及び米韓同盟に支えられ、それぞれの二国間関係は今やかつてなく強固である。日米韓三か国の関係もまた、かつてなく強固である」と強調。その上で、「我々は、少なくとも年に一度、三か国の首脳、外務大臣、防衛大臣及び国家安全保障局長間でそれぞれ会合を開催し、三か国の外交及び国防当局間での各々の既存の日米韓会合を補完する」と、首脳や閣僚級の会談の定例化するとしている。

   中国に関して名指しで批判している。「我々は、南シナ海において最近我々が目の当たりにした、中国による不法な海洋権益に関する主張を後押しする危険かつ攻撃的な行動に関して各国が公に表明した立場を想起し、インド太平洋地域の水域におけるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する。特に、我々は、埋め立てられた地形の軍事化、沿岸警備隊及び海上民兵船舶の危険な使用並びに威圧的な活動に強く反対する」。

   また、北朝鮮についても、「我々は、朝鮮半島及びそれを超える地域の平和及び安全に対する重大な脅威を及ぼす、複数の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を含む、北朝鮮によるかつてない数の弾道ミサイル発射、並びに相次ぐ通常の軍事的活動を強く非難する。我々は、北朝鮮の不法な大量破壊兵器及び弾道ミサイル計画の資金源となる、北朝鮮の不正なサイバー活動に対する懸念を表明する」。その上で、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイムでの共有をことし年末までに運用開始するとした。

   経済安全保障についても触れている。「我々は現在、とりわけ半導体や蓄電池に関するサプライチェーン強靱性、技術安全保障及び標準、クリーンエネルギー及びエネルギー安全保障、バイオテクノロジー、重要鉱物、医薬品、人工知能(AI)、量子計算及び科学研究において三か国で協力している」と述べ、新たにクリーン・エネルギー分野でも協力するとしている。「クリーン・エネルギーへの移行を加速し、三か国の開発金融機関間の連携及びグローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)を通じたものを含めて質の高いインフラ及び強靱なサプライチェーンのための資金を動員」と提案している。

   共同声明で最後に、「本日、我々は、日米韓三か国の関係における新たな章が幕を開けたことを宣言する」と述べ、日米韓のさらなるパートナーシップを強調した。

   一方、共同声明で中国を名指し批判したことに対し、中国国営通信新華社は19日、「中国脅威論というデマを拡散させた」と非難する評論を配信した。中国は安全保障を含むあらゆる分野で連携を強化する日米韓が中国を封じ込めることを警戒し、反発を強めている(20日付・日経新聞Web版)。この中国の反発がどのようなカタチで表面化してくるのか。

(※写真は、日米韓の3か国首脳会談後の共同記者会見=外務省公式サイトより)

⇒21日(月)午後・金沢の天気     はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする