自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「軍事衛星」を打ち上げる北朝鮮の狙いは何か

2023年05月31日 | ⇒ニュース走査

   きょう朝、目が覚めてスマホでNHKニュースを視ると大騒ぎになっていた。「政府は午前6時半にJアラート=全国瞬時警報システムで、沖縄県を対象に情報を発信し、『北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中や地下に避難して下さい』と伝えました」。その後、「政府は午前7時4分にJアラートで新たに情報を発信し、『先ほどのミサイルは我が国には飛来しないものとみられます。避難の呼びかけを解除します』と伝えました」と=写真=。NHKも混乱したのだろう。ただ、民放のニュースとは比べ物にならないくらいのスピード感のある速報だった。

   北朝鮮は29日に「31日から来月11日までの間に『人工衛星』を打ち上げる」と日本に通報していた。自身を含めての多くの日本人は「またミサイルか」と思ったに違いない。なにしろ、北朝鮮は去年1年間で弾道ミサイルなどを37回も発射し、ことしに入ってからも12回の発射を繰り返している。ところが、韓国の通信社「聯合ニュース」は、韓国軍の消息筋の話として、北の宇宙発射体が予告された落下地点に行かず、レーダーから消失したと伝えた。

   そこで、北朝鮮の国営メディア「朝鮮中央通信」(Web版)をチェックすると、「午前6時27分に西海衛星発射場から軍事衛星『万里鏡1号』を新型ロケット『千里馬1型』に搭載・発射した」「1段目の分離後、2段目のエンジン始動に異常があり推進力を失って朝鮮西海(黄海)に落ちた」。失敗の原因を「千里馬1型に導入された新型エンジンシステムの信頼性と安定性が低く、使用された燃料の特性が不安定であることに事故の原因があった」とした上で、「国家宇宙開発局は衛星発射で現れた重大な欠陥を具体的に調査、解明し、可能な限り早期に2回目の発射を断行する」と報じている。

   防衛省公式サイトを検索すると、浜田防衛大臣の臨時会見(午前9時35分-同40分)の内容が掲載されている。上記の朝鮮中央通信の「2回目の発射を断行」を意識した記者の質問に防衛大臣が答えている。
「Q:北朝鮮側は、2回目の発射の可能性に言及しているようですけれども、日本政府として、現状2回目の発射があるというふうにお考えでしょうか。分析をお願いします。

A:色々な発表に対してのことについてはですね、我々いちいちコメントをすることは避けさせていただきたいと思いますが、防衛省としては、引き続き必要な態勢を構築していきたいというふうに考えております」

   緊迫感のある朝だった。北朝鮮の「軍事衛星」の打ち上げは失敗した。が、次なる発射を準備していることは明確だ。「我々いちいちコメントをすることは避けさせていただきたい」ではなく、防衛のトップとして、北朝鮮の軍事衛星についてどのような分析をしているのか、具体的な返答がほしい。

⇒31日(水)夜・金沢の天気    くもり     

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☆「衛星」であってもなくても / 世論調査で読む心象風景

2023年05月29日 | ⇒ニュース走査

   きょう北朝鮮から、今月31日から来月11日の間に「衛星」を発射すると通報があったと日本政府が明らかにした。政府では、この「衛星」が弾道ミサイルの発射予告と見なし、防衛大臣は日本の領空に飛来した場合には破壊措置命令を出すと発表した(29日付・NHKニュースWeb版)。このニュースを知って、正直な話、北朝鮮の「ディープフェイク」ではないかと疑った。

   2022年12月18日、偵察衛星開発のための実験と主張し、中距離弾道ミサイル2発を日本海に向けて発射しているが=写真・上=、事前の通報などはなかった。逆に、これまで通報なしに弾道ミサイルを飛ばしてしてはいたが、あえて通報があったということは本当に衛星を打ち上げるのではないか、との見方もある。ただ、それが国威発揚告につながったとしても、北朝鮮のなすべきことかと、世界の人々はいぶかるだろう。「もっと人民のために金を使え」「われわれが人道支援をする意義はあるのだろうか」と。

   きょうメディア各社は世論調査での岸田内閣の支持率を発表している。朝日新聞(29日付)の内閣支持率は46%(前回4月調査は38%)、不支持率は42%(同45%)だった。G7広島サミットの議長国として「指導力を発揮した」が59%で、「そう思わない」の32%を上回り、いわゆるサミット効果が支持率を押し上げたと読める。日経新聞(29日付)の内閣支持率は47%で、前回4月の調査から5ポイント下落した。不支持率は44%で、前回より4ポイント上昇した。G7サミットでの岸田氏の働きぶりを「評価する」は66%あったものの、直近で総理の長男による首相公邸内での忘年会の騒ぎが報道され支持率を下げたと同紙は分析している。

   共同通信社が28日に実施した世論調査では、内閣支持率は47.0%(前回4月調査は46.6%)と横ばいだった。不支持率は35.9%(同35.5%)とこれも横ばいだった。岸田総理について、「総理は、子ども予算の倍増のほか、防衛費の増額も目指してします。あなたは、今後の日本の財政に不安を感じますか、感じませんか」との問いでは、「不安を感じる」が78.3%もある。「不安を感じない」が20.0%だ。支持はするものの、大いなる不安もある。支持率横ばいの数字から、有権者の微妙な心象風景が見えてくる。

⇒29日(月)夜・金沢の天気   あめ時々くもり

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★拉致被害は終わらない どうする「外交の岸田総理」

2023年05月28日 | ⇒ニュース走査

   北朝鮮に拉致された被害者の家族会などがきのう27日、東京で集会を開いた。出席した岸田総理は「現在の状況が長引けば長引くほど、日朝間の実りある関係を樹立することは、困難になってしまいかねない。日朝間の懸案を解決し、共に新しい時代を切り開いていく観点から私の決意をあらゆる機会を逃さず伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」と述べた(27日付・NHKニュースWeb版)。

   このニュースで意外だったのは、家族会は今年の新しい活動方針に「親世代が存命のうちに被害者全員の帰国が実現するなら、政府が北朝鮮に人道支援を行うことに反対しない」と明記したことだった。家族会が北朝鮮への「支援」に踏み込んだのは初めてのことだ(同)。拉致問題から46年がたち、今も健在な親は横田めぐみさんの母親の早紀江さん87歳と、有本恵子さんの父親の明弘さん94歳の2人となり、家族会として焦燥感があるのかもしれない。   

   拉致の「1号事件」は能登半島の尖端近くで起きた。1977年9月19日の「宇出津(うしつ)事件」だ。能登町宇出津の遠島山公園の下の入り江。山が海に突き出たような岬で、入り組んだリアス式海岸だ。東京都三鷹市の警備員だった久米裕さん52歳と在日朝鮮人の男37歳が宇出津の旅館に到着し、午後9時ごろに2人は宿を出た。怪しんだ旅館の経営者は警察に通報した。旅館から歩いて5分ほどの入り江で、男は外国人登録証の提示を拒否したとして、駆けつけた捜査員に逮捕された。久米さんの姿はなかった。

   しかし、当時は拉致事件としては扱われず、公にされなかった。その後、拉致は立て続けに起きた。10月21日に鳥取県では松本京子さん29歳が自宅近くの編み物教室に向かったまま失踪(2号事件)。そして、11月15日、新潟県では下校途中だった横田めぐみさん13歳が日本海に面した町から姿を消した(3号事件)。(※政府の拉致問題対策本部がつくったポスター。12歳のときの横田めぐみさんの写真)

           2002年9月17日、当時の小泉純一郎総理と北朝鮮の金正日国防委員長による首脳会談で、北朝鮮は長年否定してきた日本人の拉致を認めて謝罪。日本人拉致被害者の5人が帰国した。2004年5月26日にも小泉総理が北朝鮮を訪れ首脳会談で、先に帰国した5人の家族が帰国することになった。

   現在、日本政府は北朝鮮に拉致された被害者として17人(5人帰国)を認定しているが、さらに、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない871人に関して、引き続き捜査や調査を続けている(警察庁「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」)。北朝鮮による拉致事件は終わっていない。

⇒28日(日)午後・金沢の天気    くもり

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☆電気料金値上げの「闇」と「負のスパイラル」

2023年05月27日 | ⇒ニュース走査

   もう4年も前の話になるが、金沢大学で教員をしていたころ、学生や留学生たちと語り合う機会があった。話題が、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが日本に来てホームステイをしたら、彼女は何を言うかという話になった。すると、ドイツとフィンランドからの留学生が声をそろえ、「トイレットペーパーのムダ遣い、ウオシュレットによる水のムダ遣い、電気の消し忘れによるムダ遣い、彼女は日本人のこの3つのムダ遣いに怒りまくるだろう」と。

   では、トイレットペーパーのムダ遣いは実際どれほどなのか、試しに目測で一回で使うトイレットペーパーの長さを左右の手で間隔を示してもらった。それを定規で測ると、日本人学生(男子)2人は85㌢と90㌢、ドイツとフィンランドの男子学生はそれぞれ50㌢と60㌢だった。最大で40㌢も差があった。ドイツの留学生は小さいころから折りたたんで使うことをしつけられたそうだ。ウオシュレットも日本人学生は清潔で便利と絶賛していたが、留学生たちは丁寧に尻を拭けばよいだけで、また、少し腰を上げただけで水が流れる日本のウオシュレット便器は水の浪費だと違和感を感じていると語っていた。

   そして、3つ目の電気の消し忘れによるムダ遣いはむしろ日本人学生たちが実感していた。学生たちが海外に留学した折に寮の管理人から「日本人はルーズだ」と電気を消さないで外出したことを何度か叱責されたと話していた。自身もそうなのだが、テレビはつけっ放しで、部屋の照明やエアコンもまめに消さない。確かに、日本人には節電という意識が薄い。

   話は変わるが、日本人が電気のムダ遣いに襟を正すきっかけとなりそうだ。電力各社は6月から電気料金を一斉に値上げする。自身が契約している北陸電力の場合は39.7%も値上げとなる=写真=。標準的な家庭の値上げ幅は2548円とされる。値上げの背景には、ロシアによるウクライナ侵攻やこのところの円安によって、火力発電の燃料価格が高騰していることが理由とされている。そして、関西電力や九州電力など原発が稼働中の電力会社は今回値上げを予定していない。となると、原発の再稼働問題と電気料金値上げを絡めて、政府が世論づくりに利用するのではないかと勘繰ってしまう。

   さらに気になるのは、このところの円安だ。円相場は半年ぶりに1㌦=140円台に下落した。これが150円台に下落となれば、円安を理由とした食品の一斉値上げなどが家計を圧迫してくるに違いない。さらに、電気料金の再値上げもありうるのではないか。電気料金値上げの「闇」と「負のスパイラル」は今後も続くのか。

⇒27日(土)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

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★日本海中部地震から40年 能登の輪島ではその時

2023年05月26日 | ⇒ドキュメント回廊

   前回ブログの続き。日本海中部地震は40年前の1983年5月26日に発生したマグニチュード7.7の地震だった。同時に津波が発生し、能登半島にも押し寄せた。このブログでも日本海中部沖地震の津波のことは何回か書いてきたが、きょう改めて「あれから40年か」と思い起こす。

   当時、金沢のローカル紙の新聞記者で、輪島支局で勤務していた。正午ごろ、日本海中部地震が起き、輪島も震度3の揺れがあった。金沢本社の報道デスクから電話があり、「津波が発生しているようだ。輪島にも来るかもしれないので港に行け」と指示があった。輪島漁港に駆けつけると、すでに津波が押し寄せていて、港内に巨大な渦巻きが起きていた。高さ数㍍の波が海上を滑って走るように次々と向かってくる。

   接岸部を見渡すと、漁船同士が衝突し、沈没しかかっている船から仲間を助け上げている漁船員の姿があった。現場に近づいて数回シャッターを切って、すぐ立ち去った。大波が間近に見えていたからだ。撮影した写真が翌日27日付の紙面で掲載された。撮影した2人の漁船員は無事だった。記者とすると、現場にさらに近いづいて撮影し、インタビューもしたかったが、あの大波には記者魂より恐怖心が先立った。

   きょう付のNHKニュースWeb版は、日本海中部地震について記載している。地震活動を分析してきた弘前大学の小菅正裕名誉教授によると、この地震で青森県西方沖から秋田県沖で海底の断層がずれ動き、この40年間、断層に沿うように今も地震活動が続いている。直ちに大地震が発生する可能性は低い一方、その南側にあたる秋田県沖から新潟の佐渡島北方沖では津波を伴う地震のおそれもあると指摘している。
 
   佐渡島と能登半島は地図上では近い。ワンランクアップの地震と津波への対策が必要となっているのかもしれない。
 
⇒26日(金)夜・金沢の天気   くもり
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☆日本海の海底地滑り 津波の脅威

2023年05月25日 | ⇒ニュース走査

   震度6強の地震に見舞われた能登半島の尖端、珠洲市の海岸沿いの道路を走ると、ドキリとする看板が電柱に貼られている。「想定津波高 20.0m以上」=写真=。少し移動すると別の電柱看板にも「想定津波高 15.6m以上」と。同じような表記の電柱看板が海沿いに10数本にあった。津波に注意しなければならいことは理解できるが、このようにリアルな数字で示されると市民の心構えも違うだろうと想像した。

   日本海に突き出る能登半島の尖端にある同市は過去に津波による被害を受けている。石川県庁がまとめた『石川県災異誌』(1993年版)によると、1833年12月7日の新潟県沖を震源とする津波では、同市ほか能登で流出家屋が345戸あり、死者は約100人に上った。1964年の新潟地震や1983年の日本海中部地震、1993年の北海道南西沖地震などでも能登に津波が押し寄せている。

   そこで、同市の危機管理室に電話で尋ねた。2018年1月に「津波ハザードマップ」を改訂した際にリスクがある地域への周知の意味を込めて電柱看板を活用したそうだ。確かに、数字で示されると20㍍以上の高台に避難しようと日ごろから前向きに考えるだろう。そこでさらに、「この数字の根拠は何ですか」と重ねて質問をすると、石川県危機管理監室からのデータとのことだった。そこで、県に問い合わせると、東日本大震災をきっかけに国交省がまとめた「津波浸水想定」(2017年)をベースにしたもの。珠洲市の20㍍の津波の高さは県内では一番高いケースとのことだった。

   津波イコール地震というイメージがあったが、それ以外でも津波は起きる。きょうの地元紙によると、「日本海8ヵ所で海底地滑り津波」の見出しで、防衛大学と岡山大学の共同研究による海底地形の解析が報じられていた(25日付・北陸中日新聞)。記事によると、北海道南西沖と山形-新潟沖の2カ所にある幅2.3~5.6㌔の地滑り跡では、3.6~10平方㌔の範囲で土砂が動いたと見られ、海面を20㍍以上動かして大津波が発生したと推定されるとの内容だった。

   日本海には大陸棚や海底活断層の隆起による起伏に富んだ地形が広く分布しているといわれる。それだけ海底地滑りによる津波のリスクも高いということになる。

⇒25日(木)夕・金沢の天気    くもり

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★「大地の公園」白山と手取川が世界ジオパークに認定

2023年05月24日 | ⇒ニュース走査
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☆能登のコウノトリ 幸福を運ぶのか 

2023年05月23日 | ⇒ドキュメント回廊
          国の特別天然記念物のコウノトリの営巣地としては日本で最北といわれる能登半島の志賀町に出かけた。同町の山中で誕生した3羽のヒナを見学するためで、ヒナの誕生は2年連続となる。ヒナを育てているつがいは足環のナンバーから、兵庫県豊岡市で生まれたオスと福井県越前市生まれのメスで、去年と同じペアだ。
 
   現地到着は午後5時30分ごろ。小雨が降っていて、気温は15度だった。電柱の上につくられた巣を見上げたが、ヒナが頭が少々見える程度だった。20分ほど見上げていたがよく見えなかったので撮影をあきらめて帰ろうとしたとき、親鳥が巣に戻って来た。すると、ヒナが口ばしを開けて、エサをねだっている様子が見え、シャッターを押した=写真=。静かだった辺りの雰囲気も親鳥やヒナの鳴き声でにぎやかになった。
   
   去年ここで巣立ったコウノトリのオスの1羽が10月から11月にかけて台湾で確認された。足環のナンバーから判明した。能登半島からダイレクトに飛んで渡ったとすれば、距離にして2000㌔におよぶ。日本生まれの個体が台湾で確認されたのは初めてのケースだった(台湾野鳥保育協会調べ)。
 
   「コウノトリが住み着くと幸福が訪れる」「コウノトリが赤ん坊を運んでくる」との伝承がヨーロッパにある。能登から飛び立ったコウノトリたちが伴侶をともなって戻って定着することで、少子高齢化が進む能登もにぎやかになればと夢を膨らませてしまう。
 
   これは自治体への提案だ。能登で生まれ育ったコウノトリは足環をつけているので、「戸籍」を持ったようなものだ。この際、コウノトリの子どもたちに名前をつけてはどうだろうか。かつて、能登で生まれ育ったトキに愛称を募集して、「能里(のり)」とネーミングしたことがある。名前が与えられると、人々の愛着もさらにわくものだ。
 
⇒23日(火)夜・金沢の天気   くもり
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★ゼレンスキー大統領がヒロシマで発したメッセージ

2023年05月22日 | ⇒ニュース走査

   G7広島サミットは21日に閉会したが、ウクライナのゼレンスキー大統領が急きょ日本を訪れ参加したことで、注目度が一気にアップした。19日午後にテレビで来日のニュース速報が流れ、20日午後3時35分にフランス政府専用機で広島空港に到着した。タラップを降りる姿はトレードマークとなった全身カーキ色の服で軽くステップしながらも堂々とした姿で、ロシアの侵略戦争と戦う指導者というイメージがさらにアップした印象だった。

   翌日21日午後、ゼレンスキー大統領がサミット閉幕後に原爆資料館を訪れ、岸田総理とともに平和記念公園の原爆慰霊碑に献花した。このとき、前日のカーキ色のトレーナーを黒いトレーナーに着替えていたように見えた。外務省の公式サイトをチェックすると、黒のトレーナーで献花していた。哀悼の意を込めて黒色に着替えたのだろう=写真・上=。

   原爆資料館を訪れたときに、芳名帳に記帳したゼンスキー大統領のメッセージが外務省公式サイトに掲載されている=写真・下=。「Глибоко вражений відвіданням Музею. Жодна держава світу не має пережити такий біль і руйнування. Ядерному шантажу не місце в сучасному світі.」(原爆資料館の訪問に深く感銘を受けた。世界中のどの国も、このような苦痛と破壊を経験することがあってはいけない。現代の世界に核による脅しの居場所はない)

   ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用も辞さない構えを見せる中、被爆地ヒロシマで核の脅しに屈しない姿勢をメッセージとして伝えた。

   平和記念公園の原爆慰霊碑に献花した後に行われた記者会見で述べた言葉。「ウクライナのバフムトで起きている破壊とかつての広島の写真の風景が似ている。バフムトはすべての建物や道路が壊された状態だ。広島を見て、生きている街だと感じた。バフムトも将来、必ず再建できると思う」(21日付・NHKニュースWeb版)。

   バフムトはウクライナ最大の激戦地となっている東部ドネツク州の要衝。ガレキと化しても、広島のように復興し、繁栄できる、それを目標にするという決意でもある。ゼレンスキー大統領が被爆地ヒロシマから世界へ発信したメッセージだ。

⇒22日(月)夜・金沢の天気    くもり 

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☆生成AIの進化と危険性とは

2023年05月20日 | ⇒メディア時評

   「生成AI」をめぐる議論が沸騰している。画像や文章だけでなく、複数の材料を読み込ませることで自動的にコンテンツを生成する「ジェネレーティブAI(生成AI)」の技術は企業のDX化の活用などで注目されていると同時に警戒もされている。

   何かと話題に上っているのは「チャットGPT」。アメリカのIT企業「OpenAI」が開発した、いわゆる「自然言語処理モデル」。簡単に言えば、自然な対話形式での対応で、人が普段通りの文章で質問しても、丁寧に返答する。ただ、その回答は的確な場合もあれば、疑問符がつくものもある、とされる。

   生成AIが議論されるようになったのは、いわゆるフェイクニュースや誤情報の拡散、誹謗中傷、詐欺などに利用される恐れがないのか、という点だ。何しろ、自身のスマホやPCにも、連日のように迷惑メールが届く。最近は、金融機関やネットショップからのような偽装メールが多い。チャットGPTがこうした詐欺に悪用されるのではないかと懸念を抱いたりもする。

    マスメディアの警戒感も強いようだ。国内の新聞社や通信社、放送局が加盟する日本新聞協会は今月17日、チャットGPTなど生成AIによる報道関連コンテンツの利用に対する見解を公表した。記事や写真が無断でAIに利用されたり、AIがつくる偽情報や世論を誘導する情報がインターネット上に拡散したりすれば、言論空間を混乱させると警鐘を鳴らした(17日付・朝日新聞ニュースWeb版)。

   生成AIがネット上の報道記事や写真を無断で取り込み、第三者にサービス展開を有料でするとなれば、メディア各社が有する著作権などの権利を侵害することになる。アメリカの新聞協会にあたるニュース・メディア・アライアンス(NMA)も先月、「AI原則」と題した開発者や政府に対する要望書を公表。報道機関などのコンテンツの無許可の使用は「盗んでいることになる」として、生成AIへの利用には明確な許可が必要だと主張している(同)。

   アメリカのバイデン政権は今月4日、AIや量子技術などの先進技術を巡り、国際標準のルールづくりを主導するための新戦略を発表した。経済界や学界などと協力し、グローバル企業が国境をまたいだ活動をしやすくする。日本やEUに加えて、新興国にも参画を促す(4日付・日経新聞Web版)。一方で、バイデン大統領は同じ日、OpenAIなど4社のCEOと会談し、AIをめぐる安全性確保の法的責任を負うように求めた(同)。

   確かに、AIなどの新技術をルールを制定せずに放置しておくことは「人類の危機」を招くことになるかもしれない。G7広島サミットでは核軍縮・不拡散と同時に、AIのルールづくりなどをテーマにしてほしいものだ。

☜20日(土)夜・金沢の天気      はれ

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