自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆バイデン大統領 就任100日目の演説

2021年04月30日 | ⇒トピック往来

   テレビニュース(4月29日)がアメリカ、バイデン大統領の施政方針演説の様子を報じていた。演説のキーワードは何かと思い、ホワイトハウスの公式ホームページをチェックする。「Remarks by President Biden in Address to a Joint Session of Congress」(バイデン大統領の上下両院合同会議での演説)と題するページに演説の全文が掲載されていた。

   「アメリカらしい」と感じさせたのが冒頭での言葉だ。「Madam Speaker, Madam Vice President — (applause) — no President has ever said those words from this podium.  No President has ever said those words, and it’s about time.  (Applause.) 」

   演壇に立ったバイデン氏はまず自分の後ろに並ぶナンシー・ペロシ下院議長と上院議長でもあるカマラ・ハリス副大統領にあいさつした。確かに、大統領の議会演説で後ろの上下院両議長がともに女性という光景はアメリカ史上初めてのこと。「Madam Speaker, Madam Vice President」で議場内は拍手や歓声で沸いたに違いない。

   演説で最初に触れたのは、「100年で最悪のパンデミックだ。大恐慌以来最悪の経済危機。南北戦争以来最悪の民主主義への攻撃だ」と表現したコロナ禍への対策だった。演説は就任100日目の日でもあった。「就任100日以内に1億回のワクチンを注射すると約束したのに、100日間で2億2000万回以上のワクチンを接種したことになる」と実績を。そして、アメリカの世帯の85%に1400㌦の救済小切手を送り約束を守ったと強調している。

   次に述べたのが経済の取り組みについての実績だ。「経済はこの100日間で130万人以上の雇用を生み出した。100日でこの数字は史上最多の雇用を創出だ」。そして、産業の内製化の方針を打ち出している。「考えてみてほしい。風力タービンのブレードを北京ではなくピッツバーグで製造できない理由はない」「だから皆さん、アメリカの労働者が電気自動車やバッテリーの生産で世界をリードできない理由はない。私たちの国には世界で最も聡明で訓練された人々がいます」と。産業の内製化はトランプ前大統領も強調していたが、主語を労働者に置いているところが民主党のバイデン氏らしい表現だ。

   中国との関係については、習近平国家主席のことを「autocrats」(独裁者)と称して、習氏との電話会談の印象をこう述べている。「彼をはじめとする独裁者たちは、民主主義が21世紀には独裁国家と競争することはできないと考えている。なぜなら、コンセンサスを得るのに時間がかかりすぎるからだ」と。

   富裕層への課税の話も具体的な数字で述べている。「私は時々、民主党の友達と口論する。あなたは億万長者にも百万長者にもなれるが、相応の分け前は払うべきです、と。昨年、アメリカの大手企業の55社が連邦税を納めなかった。これら55社の利益は400億㌦を超えた。スイスやバミューダ、ケイマン諸島のタックスヘイブンを通じて脱税する企業も多い。利益の海外移転に対する税金の抜け穴や控除の恩恵も受けている。それは正しくない」「2000万人のアメリカ人がパンデミックで職を失った。一方、アメリカの650人のビリオネアは純資産を1兆㌦以上増やした。今その増やした資産は4兆㌦以上の価値になっている」

   後半になって、中国への警戒感をあらわにしている。習氏との電話会談を再度持ちだす。「私は『われわれは、中国との競争を歓迎します。私たちは対立を求めているのではない』と述べ、アメリカの利益を全面的に守ることを明確にした。中国が行っている国有企業への補助金、技術や知的財産の盗用など、アメリカの労働者や産業を弱体化させる中国の不公正貿易の慣行に立ち向かう」「また、私は習氏に欧州におけるNATOと同じように、インド太平洋地域でも強力な軍事的プレゼンスを維持し、紛争を開始するのではなく予防するつもりだと伝えた」

   さらに、安全保障面での言及。「私たちは世界史上最大の戦闘部隊を持っている。私は、息子を戦争地帯で働かせることの意味を知っている40年ぶりの大統領だ」と。国内問題では、「銃暴力の蔓延からアメリカ国民を守るために私は全力を尽くすが、議会も行動を起こす時だ」と強調した。

  「We can do whatever we set our mind to do if we do it together.」(みんなが心を一つにして取り組めば、アメリカにできないことなど何もない)と述べて、66分の演説を終えた。バイデン氏の演説は数字を駆使して、具体的で実に分かりやすい内容だった。性格そのものが演説に表れているのかもしれない。ただ、アメリカ大統領の演説として、刺激的な言葉で国民に訴えてもよいのではないか。たとえば、ジョン・F・ケネディが「Ask not what your country can do for you―ask what you can do for your country.」と語ったように。(※写真は「The White House」公式ホームページより)

⇒30日(金)朝・金沢の天気     はれ時々くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★「心の灯り」能登の祭りがことしも

2021年04月29日 | ⇒ドキュメント回廊

   地域の祭りが盛んな能登でよく使われる言葉がある。「盆や正月に帰らんでいい。祭りには帰っておいで」と。親たちが、ふるさとを離れて都会などで暮らす子どもたちによく言う。能登の祭りは「キリコ」と呼ぶ高さ10㍍ほどの奉灯(ほうとう)や曳山(ひきやま)がにぎやかに練り、地域にとっては年に一度のビッグイベントなのだ。その祭りがことしも開催が危ぶまれている。

   先日、輪島市門前町の「黒島天領祭」の関係者から電話でヒアリングがあった。黒島はかつて北前船船主が集住した街で、貞享元年(1684)に幕府の天領(直轄地)となり、立葵(たちあおい)の紋が贈られたことを祝って始まった祭礼とされる。輪島塗と金箔銀箔で飾った豪華な曳山=写真=が特徴で、毎年8月17、18日に行われる。自身もこれまで祭りに参加する学生たち40人ほどを連れて黒島を訪れている。昨年(2020年)は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため中止となっていた。

    ヒアリングは「ことし祭りを実施したら、学生のみなさんには参加してもらえるでしょうか」との内容だった。祭りの実施をめぐって祭礼実行委員会のメンバーの中で意見が分かれているとのこと。2台の曳山には曳き手や行列などでそれぞれ100人ほどが携わる。まさに「3密」状態となるので、コロナ禍が治まっていない現状ではことしも中止せざるを得ない、との意見。一方、これまで祭りの歴史にはさまざま困難はあったものの継続してきたので、規模を縮小してでも実施すべきとの意見に分かれている。

   ヒアリングでの問いにはこう答えた。「大学の講義でもオンラインと対面の授業に分かれている。この状況では学生たちも前向きに祭りに参加しようというモチベーションにはなれない」と。「ワクチン接種が行き届くまで待ちましょう」と付け加えた。黒島天領祭の実施の結論はまだ出ていないが、中止派が多数と聞いた。地域の人にとって祭りは「心の灯り」のようなものだ。その灯りを絶やしたくないという想いは双方同じだろう。

   能登を代表する祭りとして知られる七尾市「青柏祭」(5月3-5日)のメイン行事は高さ12㍍の山車「でか山」3基が街を練るが、昨年に続きことしも山車の運行は中止となった。そして、きょうの紙面では「金沢百万石まつり」(6月4-6日)がことしも中止の方向で検討されているようだ(4月29日付・北國新聞)。石川県の発表によると、きょう新たに新型コロナウイルス感染者39人を確認した。1日の感染者数としては過去最多となった。また、能登半島の尖端に位置する珠洲市で初めて陽性が確認され、県内の全市町で感染者が出たことになる。祭りの季節を前にコロナ禍がことしも立ち塞がる。

⇒29日(木)夜・金沢の天気      くもり時々あめ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆北斎のパロディ画 中国側の意図

2021年04月28日 | ⇒メディア時評

   政府は東電福島第一原発で増え続けるトリチウムなど放射性物質を含む処理水を海へ放出する方針を決めた(4月13日)。すると、中国と韓国が反発し、中国外務省の趙立堅副報道局長がツイッターで、葛飾北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を模したパロディ画像=写真=を投稿して批判した。本人のツイッターをチェックする。

「An illustrator in #China re-created a famous Japanese painting The Great Wave off #Kanagawa. If Katsushika Hokusai, the original author is still alive today, he would also be very concerned about #JapanNuclearWater.」(意訳:中国のイラストレーターが、有名な日本画 「神奈川沖浪裏」 を再現した。原作者の北斎が生きていれば、#JapanNuclearWaterも非常に気になるところ)

   中国のイラストレーターが描いたパロディ画は、背景の富士山を原発とみられるものに書き換え、大波を進む船上から防護服姿の作業員が汚染水らしき液体を海に捨てる様子が描かれている。そして雲の上には十字架がかかっている。趙氏は以前も「太平洋は日本の下水道ではない」などと批判している。

   広報担当の趙氏とすると日本政府の放射性物質の処理水を海に放出する発表は、中国批判を逸らすグッドタイミングだったに違いない。何しろ、中国が台湾の領空と海域で軍事訓練を繰り返し、長距離ミサイルを配備するなど攻撃能力を強化しているとアメリカなど各国から批判され、香港やウイグルにおける人権弾圧問題でも手厳しい国際批判を浴びている。この批判を逸らすために、おそくら中国は執拗に北斎のパロディ画を世界に発信し、日本批判を続けるのだろう。

   アメリカ国務省のプライス報道官は「世界的に認められた原子力安全基準に合致したアプローチを採用したようだ」との声明を発表。国際原子力機関(IAEA)も日本の放出計画を支持している(4月16日付・BloombergニュースWeb版日本語)。また、BBCとCNNをチェックしたが、北斎のパロディ画をニュースとして取り上げてはいない(4月28日午後10時現在)。

⇒28日(水)夜・金沢の天気    くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★「大麻解禁」アメリカへの留学 

2021年04月27日 | ⇒メディア時評

   「五風十雨(ごふうじゅうう)」は五日に一度は風が吹き、十日に一度は雨が降るという、落ち着いた天気のことを表現する言葉だ。季節的には春から初夏にかけての今ごろの天候を言う。庭にウツギの白い花が咲き、ツキヌキニンドウの赤い花も青空に映えている。二つの花を切って、玄関に生ける=写真=。赤と白の花のコントラストがまたいい。自慢話になってしまった。

   確かに植物は人に安らぎを与えてくれるが、この植物はどうだろう。アサ、つまり大麻草のこと。茎の皮の植物繊維は麻織物として重宝され、人類が栽培してきた最も古い植物の一つに数えられる (「Wikipedia」)。それを人類はいつしか「快楽の薬」として使い始めた。大麻やマリファナはアサの花や茎、葉を乾燥させたもので、細かく切り刻んで燃やして発生した煙を吸引する。薬の作用もあり、医療薬として用いられるケースもある。大麻をめぐっては、麻薬ほど強くないのでタバコと同様に認めるべきだとの声や、大麻がきっかけで他の薬物にはまっていくのではないかと懸念する声もある。

   きょうのニュースで、慶応大学の男子学生19歳が大麻取締法違反(有償譲渡)の疑いで、また、アメリカ・ニューヨーク州にある慶応ニューヨーク学院(高等部)の男子生徒18歳ら4人が同法違反(所持)の疑いで逮捕された。男子学生はニューヨーク学院の卒業生で、同学院の生徒らはコロナ禍で一時帰国していた(4月27日付・朝日新聞Web版)。

   このニュースの微妙なところは、ニューヨーク州ではことし3月31日に大麻の使用や栽培を合法化していることだ。大麻は許可を得た小売店で販売され、21歳以上の成人であれば購入できる。大麻を使用した際の車の運転は禁止されるなど規制も設けられている(4月1日付・NHKニュースWeb版)。このほか、首都ワシントンやカリフォルニア州など16の州で認められている。隣国のカナダも3年前に合法化している。

   アメリカの大麻解禁の流れには背景がある。国連麻薬委員会(CND)が最も危険な薬物に分類していた大麻および大麻樹脂をリストから除外することを承認し、大麻の医療的価値を認めたことによる(2020年12月3日付・CNNニュースWeb版日本語)。アメリカでこの動きは全土に広がるだろう。日本人が旅行やビジネスでアメリカに出かけ、大麻を勧められたとしても、渡航先での使用は現行の日本の大麻取締法では罰則対象とされてはいない。日本に持ち帰った場合、所持であっても罰せられる。

   「民主主義・人権」は共有できても「大麻」は共有できない日本とアメリカ。その是非を政治の場で議論すべき時が日本でもめぐってきたのではないか。前述の記事を読んで感じたことだ。

⇒27日(火)夜・金沢の天気    くもり

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆「とんでもにゃあ」選挙モンスター

2021年04月26日 | ⇒メディア時評

   きょうの朝刊一面は「自民全敗」の見出しが躍っている。菅政権になって初めての国政選挙となった衆院北海道2区、参院長野、同広島できのう25日投開票が行われた。与野党対決となった長野と広島で自民候補が敗れ、北海道は候補者擁立を見送った、いわゆる自民の不戦敗だった。北海道は贈収賄事件、広島は公職選挙法違反事件の「政治スキャンダル」があり、野党有利の風が吹いた。長野は新型コロナウイルス感染による現職急逝の「弔い合戦」だった。衆参の3つの選挙は、それらしい結果だろう。

   むしろ選挙の醍醐味を感じるのは名古屋市長選だ。愛知県知事のリコール運動をめぐり大量の署名偽造が発覚するスキャンダルがあり、そのリコール運動の推進役だった現職の河村たかし氏が、出直し選を含め5回目の当選を果たした。自らは無所属だが、相手は自民、立憲民主、公明、国民民主が推薦する「相乗り候補」だった。選挙で問われる年齢は河村氏が72歳、相乗り候補は59歳。さらに、名古屋市長として初の4期目を賭けた選挙だった。本来ならば逆風となる「スキャンダル、支持政党なし、高齢・多選批判」を見事に乗り越えた「選挙モンスター」だ。

   名古屋の有権者は河村氏のどこに共感したのか。本人のツイッターをチェックしてみる=写真=。当選後の日付のものはないが、4月23日付でツイートしている。「ナゴヤ市長選挙。市民(河村たかし)対 超高給職業議員(自民・民主・公明・共産)生活協同組合。とんでもにゃあ。 日本1ナゴヤコロナ対策『感染防止』『くらし・経済』両立。保健所の地を這う調査 しっかり続けて 感染拡大抑え込みます。 動画是非見てちょうよ。」

   名古屋市長選は「市民(河村たかし)対 超高給職業議員(自民・民主・公明・共産)生活協同組合」そのものだと表現している。つまり、河村氏は主要政党と全面対決という実に分かりやすい選挙の構図を描いた。その上で、「日本で1番給料の安い市長(人口比圧倒的、年収800万円)」や「日本でただ1つの減税都市ナゴヤ市長になってから10年で1,000億円減税」(同ツイッター)と具体的な数字で訴えた。

   ただ、知事リコール運動をめぐるスキャンダル問題は選挙戦でかなり響いた。今回、河村氏は39万票を獲得し得票率は51%、相乗り候補は35万票で同45%だった。前回2017年選挙では河村氏は45万票で得票率67%だった。単純な計算だが、「河村離れ」が6万票、16ポイント、それぞれ減という数字で表れた。

   それにしても河村氏のキャラは超絶だ。選挙運動の最終日の演説を終えてのツイッター(24日付)が面白い。「河村たかし72才 政治目指し28年付き合ってくれた古女房自転車とさゅあご(最後)speech。よう不肖河村たかし 皆さん応援してちょうた。サンキューベリマッチ。ほんなら風呂ひゃあて寝るは ばいばい」

          気取らずモノを言うこのキャラは日常空間に人を引き込んで飽きさせない。選挙モンスターたるゆえんかもしれない。

⇒26日(月)午前・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★「花と生き物たちの楽園」小原古邨の世界

2021年04月25日 | ⇒トピック往来

    そこに描かれていた作品の数々はまるで「花と生き物たちの楽園」だった。作者は小原古邨(おはら・こそん、1877-1945)、明治末から昭和にかけて活躍した花鳥画の絵師だ。金沢出身で、初の「里帰り」展がきのう24日、金沢市の石川県立歴史博物館で開幕した。実は自身もこれまで名前すら知らなかった。きょう鑑賞に出かけた。

   作品を鑑賞して、動物たちの表情が印象的だった。展覧会のチラシにもなっている「蓮に雀」=写真・上=は、ハスの花が開き始める様子を、茎に舞い降りたスズメがじっと観察している様子が描かれている。ハスの花の線やスズメの毛並みまで実に細やかだ。

   会場で鑑賞者が多く足を止めていたのが「踊る狐」だった=写真・中=。ハスの葉を被って、まるで踊っているように面白く描いた作品だ。この作品を眺めていて国宝の「鳥獣戯画」のワンシーンを連想した。生き物たちのユートピアだ。緊張感のある絵もある。「金魚鉢に猫」=写真・下=は、鉢の中の金魚をじっと見つめて狙っている。このネコの姿は現代も変わらない。こうした鳥や動物、花といった身近な自然を木版画で写実している。

   いわゆる江戸時代の浮世絵と同じようには見えない。伝統的で高度な浮世絵の技術をベースにまるで水彩画のように美しい色合いで表現することで、明治、大正、昭和と生き抜いた画家だったのだろう。大正末期からは「祥邨」の号を用い、華やかな色とモダンな画面構成の作品はアメリカやポーランドなど欧米で展示されるようになった(チラシ文より)。

   「お帰りなさい。楽しませてくれてありがとう」と言いたい。県立歴史博物館の「小原古邨 海をこえた花鳥の世界」展では版画を中心に200点が展示されている。6月27日まで。(※写真の中と下は会場で販売されている絵葉書より)

⇒25日(日)夕・金沢の天気     くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆東京オリンピックまで90日 見えてきた課題

2021年04月24日 | ⇒トピック往来

   7月23日の東京オリンピック開幕式まであと90日に迫った。やはり思うことは、コロナ対策として果たして準備できているのだろうか、そして何を準備する必要があるのか、大会組織委員会から国民に向けたメッセージが聞こえてこない。

   3月20日の大会組織委員会と政府や東京都、IOCなどの5者会談で現在のコロナ禍の状況では海外から日本への自由な入国を保証することは困難だとして、海外からの観客の受け入れを断念することを決めている。さらに、国内観客の入場制限について結論を6月まで先送りするようだ(4月21日付・NHKニュースWeb版)。その成り行きは、25日から5月11日まで実施される東京都などを対象にした緊急事態宣言の効果がどれほど上がるのか、その結果次第かもしれない。5月半ばまでに感染拡大が治まらなければ、当然7月も見通しが暗くなり、無観客とせざるを得ないだろう。

   それと同時に気になるのは医療サポートの体制が組めるのだろうか。選手が1万人以上、コーチなどのスタッフを絞ったとして5万人が集まるとされる。ところが、国内の現状として、ワクチン接種の注射をする医師が足りていない。そのような現状で、オリンピック医師団の体制をつくることができるのだろうか。

   そして、選手へのワクチン接種をどうするか、だ。自民党の下村政務調査会長は、東京オリンピック・パラリンピックに出場する日本選手への優先的な接種の必要性について、党内で検討する考えを示したと報じられいる(4月14日付・NHKニュースWeb版)。現在、選手や関係者にワクチン接種を優先する計画はないが、格闘技などで日本選手がワクチンを接種していないとリスクがあるとのこと。また、IOCのバッハ会長は、ワクチン接種を東京オリンピック出場の前提条件にはしないと発言している(4月8日付・AFP通信Web版日本語)。結局、選手へのワクチン接種は各国での判断となる。     

          あすから始まる緊急事態宣言は、GW中の人の流れを徹底的に抑制する17日間の短期集中型の対策だろう。この効果を見極めてのオリンピック対策なのだが、まさに実行性が問われる。

⇒24日(土)夜・金沢の天気     くもり

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★タイムリーに放った文春「バズーカ砲」

2021年04月23日 | ⇒メディア時評

   いま国民の関心事は「コロナ禍とワクチン」と「東京オリンピックの開催」、そして「眞子さま婚約内定にまつわる問題」の3つではないだろうか。このブログでは、眞子さまの婚約内定については触れてこなかった。が、小室圭氏本人が国民に向けて発表したA4用紙28ページの「文書」(4月8日)がネットで公開されたのを機に感想を書いた(同月18日付)。ブログというのは不思議な媒体で、あるテーマについて述べると、さらに好奇心が沸いて放っておけなくなる。

   新聞広告で「週刊文春」(4月29日号)の「小室圭さん母 『年金詐取』計画 口止めメール」の見出しを読んでコンビニで文春を買い求めた。いわゆる「文春砲」と称されるだけあって、強烈な内容だった。というのも、冒頭の「小室文書」では、母親の元婚約者との金銭トラブルをめぐるもので、2012年9月、元婚約者からの婚約破棄にともない金銭に関する要求はしないとの会話を収めた録音データがあると記されている。「切実に名誉の問題」とまで述べていた。ところが、今週の文春では、見出しの通り「年金詐取」というまったく異なるステージの話が展開している。以下、記事の引用。

   記事の主役は圭氏の母親である。母親が元婚約者に宛てていたメールが紹介されている。「話は変わりますが、パピーとの将来に向けての話し合いの中で要である経済の話しに触れてないですね。私にとって結婚=主人の遺族年金を無くす事なので大切な問題です・・・」(2010年8月31日付)。パピーは当時の婚約者の男性のこと。これを読み進んでいくと、母親が当時の婚約者からの生活費と、元夫が8年前に自死したことによる遺族年金を継続して取得する、いわゆる「二重取り」の意図が読める。遺族年金は一時的でも再婚したり、入籍しなくても事実婚が認められれば受給資格を失う。このために、事実婚であることがバレないように当時の婚約者に口止めを依頼するメールを送っていた。

   記事を読んでいて、ある意味で緻密な計算が仕組まれていたことが分かる。それを印象付けるのが、婚約者の生命保険の受取人を母親に変更する件だ。まったくの他人はで受取人にはなれない。ただ、籍に入れなくても一緒に住まなくても「生計を一つにする」事実婚であれば認められる。遺族年金を失わずに婚約者から生活費を得て、さらに保険金の受取人にこだわる。まるで欲望のドラマで演じられるストーリ-のようではある。小室圭氏が主観的につづった「切実に名誉の問題」文書より、「パピー」に宛てたメールは客観的であり、真実味がある。そして、詐取という事件性が絡むだけに重みがある。

   それにしても、今回の文春の記事は、小室氏側から「文書」公開(4月8日)と「解決金を渡す意向」(同月12日)が続いて国民の関心が引き寄せられた後だけに、実にタイムリーに「バズーカ砲」を放った。

⇒23日(金)夜・金沢の天気     はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆後手後手「アベノマスク」と「スガノワクチン」

2021年04月22日 | ⇒メディア時評

   それにしても対応が遅い。今月20日に待ちに待った65歳以上の高齢者向け新型コロナウイルスの「ワクチン接種券」が金沢市役所から郵送されてきた。さっそく申し込もうと思い、封を切って書類をチェックした=写真=。「予診票」や「接種券」はあるが、肝心の何日から、どこで接種できるのかといった案内のペーパーがない。ひょっとして市役所サイドで入れ忘れたのではないのかと思い、自宅近くの市民センターに出かけた。すると窓口で「ここではワクチンに関することは取り扱っておりません。本庁のコールセンターにお問い合わせください」とけんもほろろな対応だった。

   自宅に戻り本庁に電話をすると、「接種の開始日や、どの医療機関で接種を受けることができるか、まだ、決まっておりません」と。思わず「エッー」と叫んだ。丁寧な電話対応だったが、正直「そんなバカな」と不信感が募った。そもそも肝心なことが決まっていなのに、なぜ接種券を郵送したのか。これに対しては「申し訳ありません。決まり次第ホームページなどでお知らせします」と繰り返すだけだった。受け取った側が混乱するだけではないか。

   翌日21日のテレビのニュースで「金沢市議会で、山野市長が高齢者向けワクチン接種を来月15日に開始、予約は6日から予約を受け付けることを明らかにした」と報じていた(21日付・石川テレビ)。ここでさらなる不信感が。市長が議会で説明するまで情報を伏せたのではないか、と。本来ならば、接種開始など決まれば、議会での説明より真っ先に記者会見して市民に知らせるべきだ。

   予約開始が来月6日だとして、どこの医療機関で受け付けるのか、市役所のホームページで調べたが表記がない。しびれを切らして、きょう22日いよいよ市役所に乗り込んだ。担当は健康政策課だ。「予約が来月6日から開始と市長が議会で発表したのになぜ医療機関の一覧表がホームページに掲載されていないのか。リストがあれば出してほしい」と。窓口の担当者は「決まったのはきのう21日でして、ご迷惑をおかけしております」と「金沢市内医療機関一覧」というA4のペーパーを出してきた。接種が可能な診療所や病院109の医療機関のリストだった。

   「ご自宅の近くの医療機関にそれぞれ電話で申し込むことになります」と説明があった。ところが、リストには住所は掲載されているが、電話番号がかかれてないのだ。「そこまでまだ手が回っておりません。ご自身でお調べください」と。行政も限られた人数での対応であることは理解できなくもないが、それにしても後手後手の対応だ。

   この一件で思い出したのは「アベノマスク」だ。当時、コロナ禍のマスク不足で安倍内閣が国家支給のマスク2枚を全家庭に届けると2020年4月7日に閣議決定した。マスク支給予算は466億円。ところが、4月中どころか5月に入っても届かない。緊急事態宣言が全面解除(5月25日)となって以降、ドラッグストアなどではマスクの安売りが始まっていた。我が家にビニール袋に入った布マスク2枚、あの「アベノマスク」が届いたのは6月1日だった。そして、「スガノワクチン」も後手後手だ。

⇒22日(木)夜・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

★まるで「戦時下」 大阪のコロナ禍

2021年04月21日 | ⇒ニュース走査

   新型コロナウイルス感染者が急拡大している大阪府できのう20日新たに1153人増えた。また、医療体制がひっ迫していることから、全国の大学病院などから看護師ら90人の医療従事者が大阪に入るとニュースで報じられていた。ここまで来ると、まさに「戦時下」の印象だ。そして、昨夜に大阪府は国に緊急事態宣言の発令を正式に国に要請した。緊急事態宣言が発令されれば、人の流れを減らすために、百貨店など商業施設やテーマパークなどに休業要請がなされる。宣言の期間については3週間から1ヵ月の見込み。

   しかし、大阪府では3度目となる緊急事態宣言の効果は果たしてあるのか。2度目の緊急事態宣言(1月14日から2月28日)の後、大阪市内に「まん延防止措置」(4月5日から5月5日)が適用され、飲食店に午後8時までの営業時間の短縮を要請し、府民に対しても不要不急の外出自粛を求めている。それでもほぼ連日のように新たな感染者が1000人を超えている。そして、今回の3度目の緊急事態宣言の要請だ。

   大阪のメディアのニュースをチェックすると、3度目の緊急事態宣言中の飲食店に対する措置として3つの案を国と調整する。1つ目は、すべての飲食店の休業、2つ目は土日祝日は休業し、平日は午後8時までの時短営業で酒の提供を自粛、3つ目は休業要請はせずに酒の提供は自粛する、という内容(4月20日付・読売テレビニュースWeb版)。仮にすべての飲食店の休業だとしても効果はあるのか。

   先日、大阪の梅田の繁華街で、店が開いてないからとマスクもせずに路上で宴会する若者たちの姿がテレビで報じられていた。このとき思い出したのが、子どものころ父親から聞いた、「また逃げたか八連隊」という言葉だった。戦時中、大阪を中心に部隊編成された陸軍の八連隊では司令官が「突撃」と叫んでも、逆に逃げる兵士が多くいて部隊の統制が効かないとの例えだった。コロナ禍でこのような言葉を持ち出すことは相応しくないが、吉村府知事が緊急事態宣言だといくら叫んでも、実行性が伴わなければコロナ禍は治まらないのではないか。むしろ大阪にワクチン接種を集中させてもよいのではないだろうか。(※写真は大阪府庁舎=「Wikipedia」より)

⇒21日(水)午前・金沢の天気      はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする