自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「京アニ事件」、その後

2019年09月30日 | ⇒メディア時評

         大学で担当するマスメディア論では、メディアの5のチカラを解説することから始める。ニュースや情報を集める取材力、ニュースを選び扱いの順番をつける編集力、毎日紙面(番組)をつくる制作力、何が起きてもすぐ説明する解説力、世論を形成する論説力だ。

        そのチカラを発揮するのが、マスメディアの業界用語で「発生もの」だろう。事件や事故、災害など予期せぬことが起きて取材する場合、「発生ものだ。はやく現場に行け」と本社の報道デスクは記者に指示を飛ばす。発生ものの場合、本社の社会部や地域の支局の記者が現地に取材に入ることになる。たとえば火災現場なら、火災が起きた現場に行く(接近)。現場で消防や警察の関係者、火災の通報者、近所に住む住民から情報を多面的に収集する(取材)。その情報を得て、失火なのか放火なのか火災の原因性を調べる(調査)。その原因性の真実はどこにあるのか調査する(探求)。それらの取材を経て読者や視聴者に伝える(報道)。この5のポイントは報道記者の基本動作と言ってよい。

   ことし7月18日午前10時35分に発生したアニメ制作会社「京都アニメーション」への放火事件では35人が死亡、34人が負傷した。この事件から75日になるが、不可解な点がいくつか残る。犯行の動機だ。容疑者の犯行について、「『小説を盗んだ』恨みを抱く」(7月20日付・毎日新聞)と報じられた。実際、京都アニメーションは「京都アニメーション大賞」を設け、アニメ化を前提に小説やシナリオを公募していた。これについて、「京都府警は青葉容疑者自身が書いた小説を応募したとみて、京アニ側から作品を入手。捜査関係者によると、小説はストーリーを伴い、『ちゃんとした小説になっている』という。」(8月18日付・朝日新聞Web版)。犯行動機とされる著作権侵害に対し、「京アニの代理人弁護士は形式面で1次審査を通過しなかったとし、『これまで制作された作品との間に類似の点はないと確信している』」(同)と応えている。犯行の強い動機となった著作権侵害があったのか、なかったのか、さらに突っ込んだ取材が必要だろう。

   この事件めぐる犠牲者の実名報道についても「違和感」がある。京都府警は8月2日に10人の実名を公表し、同月27日に25人の実名を公表した。警察側の判断では、葬儀の終了が公表の目安だった。メディア各社は公表された実名を報道した。府警は同時に「犠牲になった35人の遺族のうち21人は実名公表拒否、14人は承諾の意向だった」(9月10日付・朝日新聞Web版)と説明している。その拒否の主な理由は「メディアの取材で暮らしが脅かされる」だった。遺族側が警戒しているのはメディアという現実が浮かび上がっている。

   被害者や遺族に対するメディアスクラム(集団的過熱取材)は以前からさまざまに批判を浴びている。「報道被害」という言葉も社会的にはある。冒頭で述べた現場記者が取材の基本動作を守れば、当然遺族への取材は必然になる。この矛盾をどう正せばよいのか。メディアスクラム化を避ける代表取材であったとしても、記者が玄関のドアホンを鳴らしただけで、生活を脅かされたと敏感に感じる遺族もいるだろう。

⇒30日(月)夜・金沢の天気    はれ

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☆仮想通貨リブラは世界を変えるのか

2019年09月24日 | ⇒トピック往来

     話題になるお金の話と言えば、ついこの間までは「MMT」だったが、最近は「リブラ」だろうか。先日も金融通の知人からメールが届いた。「キャッシュレス化が進む中国ではデジタル人民元の構想が進んでいるようだ・・・。リブラとガチンコ勝負になるのではないか」と。返信しようとしたが、デジタル人民元はなんとなく想像がつくが、リブラは無学に等しい。そこで、リブラのホームページをチェックすることから始めた。

A simple global currency and financial infrastructure that empowers billions of people. Reinvent money. Transform the global economy. So people everywhere can live better lives.(数十億人に力を与えるシンプルなグローバル通貨と金融インフラ。 お金を改革します。世界経済を変革します。そして、世界中の人々がより良い生活を送ることができます=グーグル翻訳)。単なるキャッシュレス通貨の構想ではなく、世界の金融革命を謳ったミッションがトップページに載っているではないか。

   フェイスブック社(アメリカ・カリフォルニア州)は今年6月18日、「リブラ」の仮想通貨(暗号資産)のサービスを来年2020年に始めると発表した。フェイスブックのユーザーは世界で20億人余りいるとされるので、とてつもない規模の通貨圏を創ることになる。おそらく、グーグル、アップル、アマゾンも黙ってはないだろう。さらなる巨大通貨圏が次々と構築されるのではないか。

   警戒を強めているのは各国の中央銀行だろう。フェイスブック社の発表に鋭く反応したのは、7月17日にフランス・シャンティイで開催されたG7(主要7カ国)の財務相・中銀総裁会議だった。議長を務めるフランスのルメール経済・財務相はリブラについて記者会見で「国家の主権を危険にさらすことはできない」と発言。「会議では、最近のリブラ計画発表を巡る懸念と、緊急の対応が必要との認識が共有された」と語った。各国がどのようにリブラに対応するのか、その方針を報告するよう各国の中央銀行総裁に対して要請が出された(7月18日付・ロイター日本版)。

   そもそもフェイスブック社は仮想通貨を発行するにほどの信頼性があるのかどうか。フェイスブック利用者8700万分のデータがイギリスの選挙コンサルティング会社に流れた事件があった。フェイスブックの検索ボックスにメールアドレスや電話番号を打ち込むことで利用者を互いに検索できるようにする機能を、悪意ある参加者が悪用していたという(2018年4月5日付・BBC日本語版)。「仮想通貨を発行をする前にセキュリティなど居住まいを正すべきだ」など、ユーザーからの声も当然あるだろう。

   もし、国際的な規制を受けながらもリブラが発行されればさまざまなことが起きるだろう。物価上昇が激しい国では現地の通貨がリブラに置き換えられることになるだろう。当然、その国の中央銀行は金融政策の制御を失うことにもなる。リブラはある意味でさまざまな場面での社会変革を起こすかもしれない。デジタル人民元との戦いも見どころかもしれない。ただ、知人への返信は勉強不足でまだ送れていないが。(※写真は、「リブラ」のホームページより)

⇒24日(火)夜・金沢の天気    はれ

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★ラグビーW杯、開幕戦の裏で

2019年09月22日 | ⇒トピック往来

   ラグビーのワールドカップが面白い。20日の東京スタジアムでの日本Vsロシアの開幕戦をテレビの中継で視聴した。最初から見ようと思ってリモコンを入れたわけではない。午後8時過ぎ、たまたま4チャンネル(日本テレビ系)で映っていた。実況アナが「松島幸太朗が逆転トライを決め・・」と選手名を言っているが、映像で見る松島の頭髪や顔が特徴的で「ハーフか」と思ったり、そのほかにもレゲエ風の頭髪の選手やあごひげの選手がいたり、ロシア人選手のタトゥーが気になったりしているうちに、前半が終わった。ラグビーは競技もさることながら、選手たちのキャラクターに醍醐味がある。

   後半では、松島がトライを決め、松田がゴールを決めて、30対10とリードを広げ、日本が初戦を飾った。前半の逆風に耐え、4トライでボーナスポイントも獲得。試合展開もさることながら、選手たちの風貌を見ていて飽きなかった。中継映像では、観客席の秋篠宮ご夫妻、メガネをかけ桜のジャージーを着た安倍総理が何度か写し出されていた。

   21日付の韓国の中央日報Web版をチェックすると、サムスン電子副会長の李在鎔氏51歳もこのラグビーW杯の開会式に出席し、開幕戦を観戦していたようだ。李氏はラグビーW杯の組織委員長を務める御手洗富士夫氏(キヤノン会長)から招待を受けたようだ(同紙Web版)。

   試合を観戦していた李氏の心中は穏やかではなかっただろう。先月(8月)29日、韓国の大法院(日本の最高裁)は執行猶予付きだったソウル高裁の二審判決を覆し、高裁に差し戻している。サムスンによる贈収賄事件で、朴槿恵大統領と旧知の崔順実氏に対し、馬3頭分を新たに含めて李氏が86億ウオンの賄賂を贈ったと大法院が判断した。韓国の国内法(特定経済犯罪加重処罰等に関する法律)では50億ウオン以上は執行猶予がつかないので、実刑が事実上確定したような状態だ。

         李氏の日本訪問は7月に日本政府がフッ化水素、フォトレジスト、フッ化ポリイミドの素材3品目に対する輸出規制に入った直後以来で、2ヵ月ぶりとなる。今年5月にも李氏は東京で移動通信事業者のNTTドコモとKDDIの経営陣に会った。当時サムスン電子は「日本国内の通信会社1・2位事業者と2020年の日本国内5Gサービス拡大とサービス定着のための相互協力を強化することにした」という報道資料を出した(同紙Web版)。この記事からも、日本と韓国の関係が悪化する中で、李氏は日本企業とのパイプをつなぎとめるために行動していることが分かる。

   ひょっとして、今回のW杯観戦は身柄が拘束される前に日本の関係者にしばし別れのあいさつに来たのではないか。御手洗氏もそれを承知で招待したのではないか。そんなふうに憶測すると、財閥企業のトップとは言え、政権に翻弄される姿がなんだか切ない。

⇒22日(日)夜・金沢の天気      あめ

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☆北の武装船、日本海の一触即発

2019年09月21日 | ⇒ニュース走査

   イギリスBBCテレビのWeb版をチェックしていると、日本海で北朝鮮がロシアとせめぎ合っている。「Russia holds 80 North Koreans on 'poaching' boats」の見出しの記事=17日付・BBCニュースWeb版=によると、ロシアの国境警備隊が今月17日、日本海のロシアの排他的経済水域(EEZ)で北朝鮮の密漁船2隻をだ捕し、乗組員80人以上を拘束したと発表した。ロシア側の説明によると、密漁船1隻から武力攻撃を受け、国境警備隊3人が負傷したという。

   ロシア連邦保安局(FSB)報道官はだ捕の経緯について、朝鮮半島とロシア、日本の間に位置する、日本海の好漁場「大和堆」で、北朝鮮のスクーナー(帆船)2隻とモーターボート11隻が密漁しているのを発見したと説明。さらに、ロシア外務省は北朝鮮の駐ロシア臨時代理大使を呼び出し、「深刻な懸念」を表明した。ロシア・インタファクス通信は、FSBの話として、拿捕された漁船は極東ナホトカ港に連行されたと伝えた。

   ロシアと北朝鮮がこの海域で争うのは今回が初めてではない。FSBは今月12日にもロシアのEEZでイカを密漁したとして北朝鮮の漁船16隻を拿捕し、250人以上を拘束したと発表していた。今年6月には、北朝鮮がロシア漁船をだ捕し、乗組員を逮捕した。北朝鮮側は今回のだ捕についてコメントしていない。

   懸念するのは北朝鮮の船の武装化だ。8月23日には、大和堆で武装した船員が乗った北朝鮮の船2隻を水産庁の取締船が見つけ、連絡を受けた海上保安庁の巡視船も駆け付けた。現場は日本のEEZ海域だった。北朝鮮海軍らしき旗を掲げた不審船は、小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた貨物船で、高速艇には小銃を持った船員がいたという。周辺では日本の漁船も操業していて、水産庁は漁船に対し、安全確保のため海域を離れるよう伝達した。日本海は一触即発の緊張感が漂っている。

⇒21日(土)夜・金沢の天気    はれ

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★スタディ・ツアーNoto(下)

2019年09月18日 | ⇒キャンパス見聞

  能登スタディ・ツアーの2日目(9月14日)、珠洲市の製炭所を訪れた。日本の伝統的な炭焼きを今も生業(なりわい)としている、石川県内で唯一の事業所でもある。代表の大野長一郎さんは43歳、炭焼き業の二代目。パワーポイントを交えながら、事業継承のいきさつや炭焼き業の課題と可能性についてレクチャーをいただいた。

   里山のカーボン・ニュートラル、里海のマイクロプラスティック除去

  その中で印象的な言葉は「里山と生物多様性、そしてカーボン・ニュートラルを炭焼きから起こすと決めたんです」。樹木の成長過程で光合成による二酸化炭素の吸収量と、炭の製造工程での燃料材の焼却による二酸化炭素の排出量が相殺され、炭焼きは大気中の二酸化炭素の増減に影響を与えない、とされる。しかし、実際はチェーンソーで伐採し、運ぶトラックのガソリン燃焼から出るCO²が回収されない。「炭焼きは環境にやさしくないと悩んでいたんです」

   そこで金沢大学の「能登里山マイスター養成プログラム」に参加し、研究者といっしょに6年分の帳簿から年間のガソリン使用量を計算し、どうすれば植林した樹木のCO²吸収量と相殺できるか検証した。結論は製造した炭の3割を燃やさない炭、つまり床下の吸湿材や、土壌改良材として土中に固定すればカーボン・ニュートラルが達成できることが計算上可能であることが分かった。これをきっかけに炭の商品生産の方針も明確になってきた。 

   付加価値の高い茶炭の生産にも力を入れている。茶炭とは茶道で釜で湯を沸かすのに使う燃料用の炭のこと。2008年から茶炭に適しているクヌギの木を休耕地に植林するイベント活動を開始した。すると、大野さんの計画に賛同した植林ボランティアが全国から集まるようになった。能登における、グリーンツーリズムの草分けになった。

   3日目(15日)、同市の塩田村を訪ねた。「揚げ浜式塩田」と呼ばれ、400年の伝統を受け継いでいる。塩をつくる場合、瀬戸内海では潮の干満が大きいので、満潮時に広い塩田に海水を取り込み、引き潮になれば水門を閉める(入り浜式塩田)。ところが、日本海は潮の干満が差がさほどないため、満潮とともに海水が自然に塩田に入ってくることはない。そこで、浜で海水を汲んで塩田まで人力で運ぶ(揚げ浜式塩田)。今では動力ポンプで海水を揚げている製塩業者もいるが、かたくなに伝統の製法を守る浜士(はまじ=塩づくりに携わる人)もいる。ひとにぎりの塩をつくるために、浜士は空を眺め、海水を汲み、知恵を絞り汗して、釜で火を燃やし続ける。機械化のモノづくりに慣れた現代人が忘れた、愚直で無欲でしたたかな労働の姿でもある。

  しかし、能登の海にも環境問題が押し寄せている。マイクロプラスティック問題だ。製塩業者は海水にマイクロプラスティックが含まれていないか定期的に検査している。製塩場を経営する中巳出理(なかみで・り)さんは徹底している。汲み上げた海水を5ミクロンと1ミクロンのフィルターのろ過装置に通し、マイクロプラスティックをはじめとするあらゆる固形物を除去した海水で伝統的な製塩作業を行っているのだ。

  さらに、塩の釜炊きに燃料は、ガソリンや石炭などの化石燃料を使わず、すべて能登の山林から切り出した間伐材を使っている。このことが、里山を保全することにもなる。伝統の塩づくりを守るということは実に奥が深い。(※写真は上から、大野長一郎のクヌギの林、「柞(ははそ)」とブランド名をつけた茶炭、塩の結晶がついた乾いた砂を垂れ船(たれぶね)に集める作業、海水のろ過装置)

⇒18日(水)夜・金沢の天気   くもり

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☆スタディ・ツアーNoto(上)

2019年09月17日 | ⇒キャンパス見聞

   先週13日から2泊3日で「能登の世界農業遺産を学ぶスタディ・ツアー」(単位科目)を実施した。スタディ・ツアーには学生9人のほかに留学生6人(ケニア、中国、インドネシア、ベトナム)が参加した。能登は国連食糧農業機関(FAO)から世界農業遺産(GIAHS=Globally Important Agricultural Heritage Systems)に認定されている。その能登の文化や風土には独特のアジアっぽいカラーがある。能登の国際評価は学生・留学生たちにはどう見えたのか。

             留学生たちが見た「能登のアジア」

    最初にの国史跡「雨の宮古墳群 」(中能登町)=写真・上=を訪ね、学芸員から解説を聞いた 。北陸地方最大級の前方後方墳と前方後円墳が隣接する。4 世紀から5世紀(弥生後期)の古墳で山頂にある。邑知(おうち)地溝帯と呼ばれる穀倉地帯を見渡す位置に古墳はある。能登の王は自ら干拓した穀倉地を死後も見守りたいという思いではなかったか。

    この地域は能登における稲作文化の発祥の地でもある。1987年、雨の宮古墳近くにある「杉谷チャノバ タケ遺跡」の竪穴式住居跡から、黒く炭化したおにぎりが発掘された。化石は約2000年前の弥生時代のものと推定され、日本最古のおにぎりと話題になった。また、この地域の神社3社では収穫に感謝する新嘗祭で振る舞う濁り酒「どぶろく」を連綿と造り続けている。延喜式内社でもある天日陰(あめひかげ)比咩神社でどぶろくをいただき、日本酒の成り立ちを学んだ。

   山が海にせり出すリアス式海岸では神々しい光景を見ることができる。13日午後5時35分に輪島市曽々木海岸に到着した。すると、窓岩で知られる海に突き出た岩石の穴に夕日が差し込んできた=写真・中=。岩の穴と夕日がちょうど同じ大きさで、すっぽり収まったときは思わずため息が漏れるの神々しさとなる。同40分ごろから5分間の夕日と奇岩のスペクタルショーを楽しませてもらった。インドネシアの留学生は「バリ島のサンセットと同じだ」と。

   中国の留学生が「能登はアジアですね」と目を輝かせたのは祭りだった。14日に半島の尖端、珠洲市を訪れ、地域の伝統的な祭礼「正院(しょういん)キリコ祭り」を見学した。能登では夏から秋にかけて祭礼のシーズン。キリコは収穫を神様に感謝する祭礼用の奉灯を巨大化したもので、大きなものは高さ16㍍にもなる。この日、輪島塗に蒔(まき)絵で装飾された何基ものキリコが地区の神社に集い、鉦(かね)と太鼓のリズムが祭りムードが盛り上がっていた。

    キリコを担ぎ、太鼓をたたく若者たちがまとっているのは地元でドテラと呼ばれる衣装だ=写真・下=。もともと女性の和服用の襦袢(じゅばん)を祭りのときに粋に羽織ったのがルーツとされる。それに花鳥風月の柄が入る。祭りの心意気を感じる。インドネシアの留学生は「少数民族も祭りのときには多彩でキラキラとした衣装を着ますよ」と。

⇒17日(火)夜・金沢の天気    はれ

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★「9・11」から18年、アメリカは

2019年09月11日 | ⇒ニュース走査

   「9・11」からもう18年になる。、アメリカで同時多発的にテロ攻撃が実行されたその日だ。イスラム過激派のテロ組織「アルカイダ」による犯行。死者は3千人ともいわれた。現地時間で午前8時46分、日本時間で午後9時46分だった。当時帰宅して、報道番組「ニュースステーション」が始まったばかりの同9時55分ごろにリモコンを入れると、ニューヨ-ク・マンハッタンの高層ビル「ワールドトレードセンター」に民間航空機が追突する事故があったと生中継の映像が映し出されていた。間もなくして、2機目が同じワールドトレードセンターの別棟に突っ込んできた。リアルタイムの映像で衝撃的だった。番組のコメンテーターが「これは事故ではなく、おそらくテロです」と解説していた。テロリズム(terrorism)という言葉が世界で認知されたのは、この事件がきっかけではなかったか。

   この同時多発テロはアメリカの中心部が初めて攻撃を受けた歴史的な事件でもあった。このころからアメリカ人の深層心理が揺らぎ始めたのではないかと推測している。デモクラシー(民主主義)という価値観を創造し、グローバルに展開してきたのはアメリカだったと言っても異論はないだろう。1862年9月、大統領のエイブラハム・リンカーンが奴隷解放宣言を発して以来、自由と平等、民主主義という共通価値を創り上げる先頭に立った。戦後、ソ連や北ベトナムなど共産圏との対立軸を構築できたのは資本主義という価値ではなく、自由と平等、民主主義という共通価値だった。冷戦終結後も、共通価値は性や人種、信仰、移民とへと広がり深化していく。アメリカ社会では、こうした共通価値を創ることを政治・社会における規範(ポリティカル・コレクトネス=Political Correctness)と呼んで自負してきた。

   ところが、アメリカの本丸が攻撃された同時多発テロをきっかけに、誰もが自由と平等だがそれが誰かの犠牲に上に成り立っているとすれば、それでは偽善ではないか、とアメリカ社会の白人層が考え始めた。2003年にアメリカを中心とする有志連合が始めたイラク戦争は大量破壊兵器の廃絶を名目とした軍事介入とされた。そこには自由と平等、民主主義という共通価値はすでになかった。ポリティカル・コレクトネスは政治的、社会的に公正・公平・中立的という概念だが、広意義に職業、性別、文化、宗教、人種、民族、障がい、年齢、婚姻をなどさまざまな言葉の表現から差別をなくすこととしてアメリカでは認識されている。しかし、ポリティカル・コレクトネスは同時に、本音が言えない、言葉の閉塞感として白人層を中心に受け止められている。心の根っこのところでそう思っていても、表だってはそうのように言わない人たちでもある。

   こうした「ポリティカル・コレクトネス疲れ」の白人層に支持されたトランプ政権のいまの在り様はポピュリズム(Populism)と称される。ポピュリズムは、国民の情緒的支持を基盤として、政治指導者が国益優先の政策を進める、といった解釈だろう。トランプ大統領は「アメリカ・ファースト」を唱え、世界に難題をふっかけている。もう、アメリカではポリティカル・コレクトネスは死語と化しているのではないだろうか。

⇒11日(水)朝・金沢の天気    くもり

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☆積乱雲の怖さ

2019年09月09日 | ⇒トピック往来

  関東を襲った台風15号の影響だろうか、北陸も午前中から気温が30度以上の真夏日になった。歩いているだけで熱中症になるのではないかと思ってしまうほど。金沢市で33度、能登半島の輪島市で32度と平年を5度上回る、厳しい残暑だった。

  写真は正午ごろ、金沢市内の道路を走っていて、信号待ちで撮影した。積乱雲がまるでヨーロッパアルプスの最高峰、モンブランのように見えた。上昇気流の影響で鉛直方向へ発達し、雲頂が成層圏下部に達したかのような巨大な雲だった。神々しさと同時に不気味さも感じた。

  積乱雲には気を付けたい。もう11年も前のことだが、「ダウンバースト」という現象が起きた。航空自衛隊がある石川県小松市。2008年7月27日午後3時半ごろ、突風が吹き荒れた。航空自衛隊小松基地が観測した最大風速は35㍍で、「強い台風」の分類だ。このため、神社の高さ4㍍の灯ろうが倒れたり、電柱が倒壊したり、民家70棟の窓ガラスが割れるなど被害が及んだ。このとき、小松基地が発表するのに使った言葉が「ダウンバースト」だった。積乱雲から急激に吹き降ろす下降気流。ダウンバースト、初めて聞いた言葉だった。

  積乱雲の「ガストフロント」も怖い。ダウンバーストと同じ27日、福井県敦賀市や滋賀県彦根市でその現象は起きた。午後1時ごろ、最大瞬間風速21㍍余り。敦賀では「西の空が急に暗くなって雨が強くなって、突風がきた」。このため、イベントの大型テントが横倒しになった。福井地方気象台では突風の原因を「ガストフロント」と説明した。非常に発達した積乱雲が成熟期から衰退期かけて発生する雨と風の現象。小型の寒冷前線のようなものでその線に沿って突風が吹く。つまり、北陸に前線が停滞し積乱雲が発生、ガストフロント現象が起き、その前線となった金沢では豪雨が、小松、敦賀、彦根では風速21㍍から35㍍のダウンバーストが発生したのだ。

  こうした嵐は想定外の規模でやってくる。日本だけではない。この年の5月に訪れたドイツで、シュバルツバルトの森が季節はずれの大嵐で1万㌶もの森がなぎ倒された現場をこの目で見た。地球環境学者のレスター・ブラウン氏は著書『プランB3.0』でこう述べている。「温暖化がもたらす脅威は何も海面の上昇だけではない。海面温度が上昇すれば、より多くのエネルギーが大気中に広がり、暴風雨の破壊力が増すことになる。破壊力を増した強力な暴風雨と海面の上昇が組み合わされば、大災害につながる恐れがある」と。レスター氏の警鐘が聞こえる。

⇒9日(月)夜・金沢の天気      はれ

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★茶道とアポロ11号の月面着陸

2019年09月08日 | ⇒トピック往来

  1969年7月21日(日本時間)、アポロ11号のアームストロング船長が月面に第一歩を記したとき、私は中学3年生だった。当時テレビは38万㌔先の月面の画像をリアルタイムに映し出していた。「偉大な一歩」の映像は脳裏に刻まれている。私の知り合いは、新聞の「地球人が月に立った」の見出しに衝撃を受け、それ以来、ずっと新聞の切り抜きを続けている。「地球人」という言葉の新鮮さと大局観に、「世界を読み解こう」という感性にスイッチが入った、と言っていた。月面の第一歩はさまざまな人と分野に波及した。きょう8日、金沢市宝町の曹洞宗「宝円(ほうえん)寺」で催された「月印(げついん)茶会」もその一つだ。

  茶会は午前7時から、表千家同門会石川県支部の主催で開かれた。アポロ11号が月面着陸したのを記念して、1969年のその年に始まり、毎年この時期に開催を重ねて半世紀、今回が第51回目となる。茶会発足の趣意に合わせ、月や宇宙にちなんだ茶道具が用意された。待ち合わせの場所である寄付(よりつき)の掛け軸は色紙「月知天下秋(月は天下の秋を知る)」=写真・上=が掲げられていた。禅語で、月は自らがもっとも美しく輝くことができる秋を知っている、と解釈している。太古より万物は少しも変わることなく絶えず働き続けている。ただ無心である、と。そのほか、茶席では月をイメージした茶碗もあった。

  では、茶道とアポロ11号の月面着陸はどんな関係があるのか。茶席には円相(えんそう)の掛け軸=写真・下=がよく用いられる。円相は絵なのか、それとも文字なのか分かりにくいが、禅宗の教えの一つとされる。円は欠けることのない無限を表現する、つまり宇宙を表している、と。茶の道も同じで、物事にとらわれず、純粋に精進することが茶の湯の道である、と。茶を点てるだけでなく、支度や片付け、掃除にいたるまでが一つの円のようにつながっている。

   千利休の口伝書とされる『南方録』には「水を運び、薪をとり、湯をわかし、茶を点てて仏に供え、人に施し、吾ものみ、花をたて香をたく、皆々仏祖の行いのあとを学ぶなり」とある。雑念を払い、ひたすら無限の境地で、自らの心を円相とせよ、それが茶の道の心得であると教えている。もちろん、ここで言う宇宙とは、互いに心の交わりを楽しむ「小宇宙」の空間ではある。その心の宇宙の象徴が満月、見事な円なのである。月印茶会の感想を取りとめもなく書いてしまった。

⇒8日(日)午後・金沢の天気     はれ

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☆レーダー照射事件の裏読み

2019年09月06日 | ⇒ニュース走査

    今の日本と韓国の関係性を「そもそも論」で振り返ってみたい。発端は2018年12月20日午後3時ごろ、能登半島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内で、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に対して火器管制レーダーを照射したことだった。火器管制レーダーは、ミサイルで対象を攻撃するために距離や高さ、移動速度を計測するためのもので、通常のレーダーとは全く違う。

   岩屋防衛大臣が翌日21日の緊急記者会見で、このレーダー照射の一件を公表した。火器管制レーダーを照射したのは韓国海軍の駆逐艦「クァンゲト・デワン」=写真・上、防衛省ホームページより=。P1は海上自衛隊厚木基地所属。P1は最初の照射を受け、回避のため現場空域を一時離脱した。その後、状況を確認するため旋回して戻ったところ、2度目の照射を受けた。P1は韓国艦に照射の意図を問い合わせたが、応答はなかった。照射は数分間に及んだ。防衛省ホームページには、P1が撮影した動画が掲載されていて、その経緯が詳細に紹介されている。

   これに対し、韓国側は火器管制レーダーの使用について「哨戒機の追跡が目的ではなく、遭難した北朝鮮船捜索のため」などと反論した。防衛省は不測の事態を招きかねず、意図しなければ起こりえない事案であり、「極めて危険な行為」として韓国側に強く抗議した。ここから日本と韓国の応酬がエスカレートしていく。では、そもそも、なぜ韓国は駆逐艦を派遣してまで「遭難した北朝鮮船」を捜索したのか、という疑問がずっと残る。防衛省ホームページの映像では駆逐艦と韓国・海洋警察庁の警備艦が洋上に見え、警備艦が北朝鮮の木造船らしき船に近づいている=写真・下=。問題はここにあるのではないか。

   映像から推察する。海難救助であるならば海軍と海洋警察が連携して救助に向かうこともあるだろう。北の船が救助信号を出してSOSを求めたのであれば、EEZ内なのでその信号は日本の海上保安庁にも海上自衛隊にも救助信号は届き、現場に向かったはずだ。ということは、北の船は救助信号を出していない。救助信号を出していないのに韓国はなぜ「遭難」の救助と弁明したのか。

  ここからは憶測だ。本来の海難救助でもないのに海軍と海洋警察が連動して、北の船と接触するのは、指揮系統上、そのような命令を出せるのは大統領府しかない。文在寅大統領が「遭難した北朝鮮船を捜索せよ」と命令した背景には、北の要請があったのだろう。大統領に要請をできる北の人物は、金正恩党委員長しかいない。ということは、遭難したのは単なる漁船ではなく、重要な任務を帯びた工作船ではなかったのか。特殊な通信機を装備している工作船ならば本国に直接SOSを出すことは可能だろう。工作船が能登半島沖で事故を起こし漂流した。そこであえて、韓国に捜索と救助を依頼した、と推測する。

  その現場は、自衛隊のレーダーがカバーしている。日本のP1哨戒機が飛んで来るのは十分に予想された。そこで、実際の遭難救護は警備救難艦、海軍の駆逐艦はP1哨戒機に射撃用レーダーを照射して追い払う役割だったのだろう。
 
   工作船についてさらに憶測する。能登半島の複雑に入り組んだリアス式海岸は工作員の絶好の隠れ場所となっていた。一連の日本人拉致を指揮した大物スパイも能登のリアス式海岸から入ってきた。1973年に輪島市の猿山岬から不法入国し、以後東京、京都、大阪に居住した北朝鮮のスパイ・辛光洙 (シン・ガンス)だ。彼を直接指揮したのが当時の金正日総書記だったといわれる。辛光洙はICPO(国際刑事警察機構)を通じて国際手配されている。
 
   今回、トップの命令を受けた工作員が乗船していたのではないか。韓国がそのことを承知しながら船の救助を行ったのはないか。工作船であるとしたら、何の目的で日本に向かっていたのか。疑念はさらに深まる。

⇒6日(金)夜・珠洲市の天気      はれ
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