朝の日課なので、青空に映えるこいのぼりを見るとすがすがしい。通りがかりの学生たちが「こいのぼりをこんなに間近に見るのは初めて」とか「大学でこいのぼりを揚げているのは金大だけとちがうか…」などと言いながら見上げている。聖火リレーをめぐる騒ぎに比べれば、実にのどかな光景ではある。
ところで、金沢大学では気球も上げる。金沢大フロンティアサイエンス機構の研究者たちが、能登半島・珠洲市で黄砂に関する大気環境のモニタリングの拠点づくりを計画している。日本海に面して大陸からやってくる空気をいち早くキャッチできる能登半島は黄砂研究には持ってこいという訳で、三井物産環境基金を得て、高度の大気観測を可能とする大気観測サイトを構築中だ。この研究プログラムを称して「大気観測・能登スーパーサイト」。運営が軌道に乗れば世界から黄砂研究者が集まってくる、そんな研究拠点となるはずだ。
手始めとして、黄砂バイオエアロゾル研究チームによるサンプリング(気球による黄砂の採取)を行う。黄砂バイオエアロゾルというのは、黄砂にのって浮遊する微生物、花粉、有機粉塵などを指す。ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠から舞い上がった黄砂が日本海上空で水蒸気と絡まって能登半島辺りから落ちてくる。これをサンプリングして研究するのだ。さらに海に落ちた黄砂はどのように変容し、海洋生物に影響を与えるのか、などが研究対象となる。気球を上げる場所は、珠洲市三崎町の金沢大学能登学舎(旧・小泊小学校)のグラウンドで。5月7日から9日の時間を見計らって気球によるサンプリングが行われる。
能登半島では、金沢大学の別の研究班がすでに生物多様性の調査を行っていて、「研究フロンティア能登」の様相を呈している。生物多様性も黄砂も環境がテーマである。そこでもう一歩踏み込んで、東アジアにおける「環境センサー」としての能登半島という役割があるのでは、と密かに思っている。青空に泳ぐこいのぼりから話がえらく飛躍した。
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