94日間で読んだ本は200冊に上ったという。百科事典のほか、中国の歴史書である「史記」や「白い巨塔」(山崎豊子著)、それに韓国語の勉強もしていたらしい。体重は8㌔減量。ダイエットした人なら想像はつくかもしれないが、3ヵ月で8㌔は無理のない数字である。適度な運動をし、間食せず、就寝前3時間は物を口にしなければ無理しなくともこのくらいの減量は可能だろう。
それにしても、あれだけ物々しい捜査当局の動きの割には、問われた罪は粉飾決算、偽計、風説の流布である。構造汚職事件といわれ、未公開株を政官界に大量にばらまいたリクルート事件(1988年発覚)のような大騒ぎ。それだけに今回の事件の本質がいま一つ理解しにくい。大型脱税なら理解もでききる。ところが粉飾決算をしてまで税金を払っているのである。確かに、「市場を欺いた」行為であることは理解できるが、それでは、3月22日にNECが発表した連結対象子会社が5年間で累計363億円もの架空売上高と93億円の架空営業利益を計上していた問題はどうなった。決算をごまかし、連結から外したという点では同じ線上ではないか。「逮捕」という事実が本質以上に問題を大きく見せてしてしまうという点もある。
あの事件を思い出す。石川県信用保証協会の代位弁済(肩代わり返済)をめぐる背任事件で、金沢市に本店がある北國銀行の現職の頭取が逮捕された事件(1997年)のことである。頭取は保証協会の役員3人と共謀し、北國銀行が93年に融資した直後に倒産した機械メーカーの債務8000万円を保証協会に不正に肩代わりさせ、損害を与えたとして逮捕、起訴された。2004年9月の最高裁判決は懲役2年6月、執行猶予4年とした一、二審判決を破棄、審理を差し戻した。差し戻し審判決も「元頭取が協会役員と背任の共謀を遂げたと認定するには合理的な疑いが残る」と判断された。結局、05年11月、名古屋高検は「適法な上告理由を見出せなかった」として上告を断念、元頭取の無罪が確定した。
特捜の切れ味は鋭いものがあった。ただ、頭取の逮捕直後に名古屋の記者の間で「ちょっと無理があったかも知れない」とささやかれているのを聞いた。たずねると、当時は名古屋地検に特捜部が発足したばかりで、「東証一部の上場企業で、しかも現役の頭取なら大きな手柄になるので、功をあせったのではないか」という主旨だった。捜査のことだからその真偽は分からない。が、結果は無罪である。
今回の事件で捜査手法に疑問を投げかけているわけではない。検察は「マスコミが騒ぎすぎるだけ」と言うだろう。ホリエモンは保釈中である。テレビ出演は裁判での証人に対する圧力とみなされる可能性があるので無理だろう。しかし、執筆活動や選挙に出ることは可能である。事実、受託収賄の罪に問われ保釈中の鈴木宗男氏は05年9月の総選挙で堂々と当選した。今後、ホリエモンはどう動くのか…。
⇒29日(土)午後・金沢の天気 はれ