池上永一:著 文春文庫
産婆のオバァのまじないによって姿を見えなくされてしまった愛する息子。未婚の母、津奈美は命をかけて井戸に飛び込み、陰の世界へと向かう。他の人間にかけた「七つの願い」を奪うことで、息子の姿を取り戻すのだ・・・
「子を失う母の悲しみ」という古風な、ちょっと間違えると嘘臭くなりそうなテーマです。
それを、ここまで爽やかに仕上げているのは、さすが池上永一ですね。
この中で、脇役だけど重要な人物は、やっぱり津奈美のアルバイト先「島豆腐屋の親子」でしょう。
働き者で正直な、ひたすら「清らかでおいしい島豆腐」を作ることに専念している島豆腐屋の親子。でも自分の息子を助けるためには、この親子の願いを奪って、怠惰な島豆腐屋に陥れなければならないのです。
「自分の息子のためなら、他人は犠牲にする」というところが、この話をリアルにしているところでしょうね。子を思う母の心は、美しいだけじゃないし、また美しくないからといって悪というわけでもない。著者のお母さんも、きっと逞しい人だったんだろうな、と思わせる作品です。
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