二週間ほど前に「傍若無人な自転車を取り締まれ!」と云う小文を書いた。それは、私が下り坂の歩道を歩いていた時に、背後から猛スピードの自転車がベルを鳴らしながら近づき追い越し、追い越しざまに接触すると云う、怪我こそなかったものの実に不愉快かつ危険な自転車に遭遇したからである。自動車やバイクであれば肩にかけたカメラをすぐに手に取ってナンバーを撮影するところだが、自転車ではその意味もない。
考えてもみれば、二週間前に列挙したような危険な、道路交通法やマナーを無視した自転車の走行は今に始まったわけではない。かく云う私にしたところでかつては(今は自転車に乗らない)一時停止や信号の無視、右側や歩道の走行などは当たり前のように行っていたし、それは私だけではなく自転車の一般的な乗り方であり、歩行者(その多くは自転車運転者でもあるはず)もある程度それを許容していたようにも思う。
なのに何故、そのような自転車の運転を無謀な有るまじき運転だと思うようになったのか、何故ベルを鳴らされたことに腹をたてるようになったのか。その理由は齢を重ねるとともに自分本位の考えが強くなり、怒りっぽくなってきた自分自身にあることをある程度自覚はしているのだが、私だけの問題ではなく、世の中全般に寛容さに欠ける、有り体に云えば不寛容な空気が充満してきているからなのではないかと思えてならない。
かつて、どのくらいかつてかと云えば3、40年くらい前(ものによってはつい10年くらい)のことだが、学校における体罰、所構わずの喫煙、今で云うところのパワーハラスメント、助平な部長が女子社員のお尻をチョイと触る行為などは日常茶飯事であり、する方は「この程度は許される」「親しみの表現」、体罰に至っては「躾なのだからむしろ親に感謝される」ものだと勝手に思い込んでいたのである。
しかし考えてもみれば、される方は体罰や所構わぬタバコ、お尻を触られることを喜んでいた訳では無論なく、何かにつけ寛容であった時代には「先生に助けてもらったこともあった」「匂いのきつい香水を注意されたことがあった」「自分の財布じゃいけないレストランでご馳走してもらった」ことなどを思いだし、さらにが「情けは人の為ならず」と云う言葉(の本来の意味)を思いだして我慢し、あるいは寛容の精神を発揮して許容していただけであったのだ。
しかしながら不寛容な空気が充満しつつある時代にあっては、それらの行為はすべて不法行為、人権侵害であるとして厳しく指摘され、時に公的機関に通報され、逮捕・起訴され有罪となり、起訴猶予となったとしても社会的な信用を著しく毀損する結果を招く事になる。
他者に対する寛容という美しき精神はどこへ行ってしまったのか。「情けは人の為ならず」の本意を忘れれば、自らが不法行為、人権侵害であるとして厳しく指摘される対象となり得る懸念が常につきまとう、ギスギスと息苦しいき世の中になってしまうではないのか。それは既述の自転車における、これまでは当たり前、軽微とされてきた違反行為までもが厳しい取り締まりを受け、なおかつ処罰されるのと同様なことがあらゆる場面で起こりうる社会が到来する(あるいは既にそのような時代であるかもしれない)ことを意味しているのである。
考えてもみれば社会が、人が無制限に寛容なのであるとすれば不寛容、つまりその行為が法律に照らし違反・違法、あるいは人権侵害がたとえ些細なものであったとしても通報し、逮捕・起訴され処罰されることをもまた許容しなければならない事になる。かくして寛容は不寛容によって駆逐され、猜疑心に満ち疑心暗鬼を生ずる世の中となってしまうのではないのか。
違法行為や迷惑行為を容認するつもりは毛頭ないが、日常生活の些細なことまでを法律によって規定し処罰することで住みやすく気持ち良い社会を作る事が出来るのか。今こそ「法令遵守」ではなく法律には記されていない倫理観、モラルやマナー、他者への思いやりを持つことが、多少のことは許し合い、時に甘え甘えられる関係性こそが求められている時代なのではなのか。日常生活のあらゆる場面を法律で縛ることによって住みやすい社会、人に優しい社会が到来するとは到底思えないのである。
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と云うわけで、記事本文とは何の関係もない今日の一枚は、美しいオクラの花。明日には収穫できそうな実もありますね。オクラは収穫時を逃すとあっという間にきゅうり程の大きさになり、硬い筋ばかりになり食べられなくなってしまいます。
横浜市青葉区の住宅地の中に残された小さな里山の四季の移ろいを毎週撮影・掲載しているblog「恩田の森Now」に、ただいまは8月10日に撮影した写真を4点掲載いたしております。酷暑が続く森の様子をご覧いただけたら嬉しいです。
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