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「火力優勢ドクトリンじゃない?1輌に対して10輌で攻撃ね」
対大学選抜戦前の作戦会議にて、サンダース大学付属高校チーム隊長のケイがこう言いました。ヨーロッパ戦線においては火力でも装甲でもドイツ軍戦車に敵わなかったアメリカ軍の、哀しいまでの現実をよく反映させたひとつの基本作戦方針とも言えます。
ですが、これを模型戦車道に応用するならば、「1輌作るよりも、10輌を作るの」となりましょう。物量をたのんで数で押し寄せるアメリカ軍の基本作戦方針にもよく合致していますね。
サンダース大学付属高校チームは、アメリカ軍テイストのチームなので、戦車も当然ながらアメリカ軍の車輌を運用しています。数が多ければよりアメリカ軍らしさが増しますので、私の制作計画においてもサンダース大学付属高校チームのプラモデルは複数作ることにしています。劇場版に登場したトリプルシャーマンはもちろん、TVシリーズに登場した車輌も幾つか作ってみたいところです。
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今回は、ケイの搭乗車である、M4シャーマン75mm砲搭載型を劇場版仕様にて制作します。使用キットは上図のドラゴンの製品「M4シャーマン中戦車 75mm砲搭載型 ノルマンディ上陸作戦」です。ファインモールドが発売している公式キットよりも劇場版劇中車に近く、VVSSも初期型でピッタリであるため、現時点では一番の適応キットではないかと思います。
問題は、履帯が劇中車のT48型ではなくてT51型になっていることですが、私の制作においては簡単に解決しました。
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中身はこんな感じです。ドラゴンキットの常で、パーツ数はかなりのものです。ですが、その半分近くは不要パーツです。しかし、不要パーツの幾つかは、サンダース大学付属高校チームの他の車輌を作る際に役に立ちます。ファインモールド発の公式キットを使う場合に不足するパーツも含まれているのが有難いです。
今回のキットは、2009年の発売ですので、ファインモールド発の公式キットの元製品であるタミヤキットとは30年以上の隔たりがあります。パーツやモールドの精度は当然こちらが勝っていますし、劇中車の細かな部分の形状ともよく一致しています。公式キットでは省略されている部分も忠実に造形されており、戦時中の実車の状態をよく再現しているようです。
劇中車では各所が省略されたりしていますから、今回の製作では、さらに不要なパーツが出ますし、モールドなどの幾つかは消す必要があります。
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ベルト式の履帯パーツは、T51型です。劇中車はT48型です。アリサの搭乗車を作るために購入してあったドラゴンのM4A1の76ミリ砲搭載型オペレーションコブラのキットにはT48型のパーツが入っているのですが、劇中のアリサ車の履帯はT51型です。つまり、双方のキットの履帯パーツを交換すれば、いずれも劇中車に一致するわけです。
こうした理由にて、履帯パーツの問題は難なくクリアしました。
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製作ガイドの不要パーツの表示です。ブルーの部分が不要パーツですが、なかにはアリサ搭乗車やナオミ搭乗車の製作に使えそうなものがかなり含まれています。ペリスコープガードや車外装備品や車体パーツの一部などです。ケイ搭乗車の製作にあたり、公式キットよりも今回のキットを選んだ理由の一つがそれでした。
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製作に先立ち、上部車体パーツHの修正作業を行ないました。上図は、作業前のオリジナルの状態です。
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御覧のように、車体前面や側面などに溶接跡のラインがモールドされています。実在の車輌にはみられますが、劇中車ではこうした溶接跡のラインが無いので、これらのモールドは消す必要があります。
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車体側面にも、溶接跡のラインがモールドされています。これらは全て削って消します。
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車体上面左側の二ヶ所に、ワイヤーを留める金具がモールドされています。劇中車はワイヤーを装備しておらず、留め具もありませんので、これらも削り取ります。
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劇中のワンシーンでも、車体各所の溶接跡のラインが全く無いのが確認出来ます。砲塔右前の増加装甲にもありませんが、キットのパーツE5には溝状の溶接跡がモールドされていますので、それも後で手直しします。
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アートナイフでカンナがけして削り、さらにヤスリやサンドペーパーなどで目立たないまでに削りました。
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作業後の状態です。ファインモールドの公式キットの車体パーツにも同様の溶接跡ラインが表現されていますので、修正作業が必要な点は同じです。 (続く)