フェアウェイが
縞々なのが高級だと
真剣に話していた先輩は、
もう亡くなって
10年は経ちます。
芝刈り機の機能で、
特別なものでは
なくなりますよ、と
説明したのに、
首を傾げていたのも
暑い夏ゴルフの
シーンでした。
夏空。
濃い緑。
そして……
亡くなった先輩を
思いだしたのは、
ゼブラカットを
見たからではなく、
フェアウェイの
中央の春に植えた木が
枯れてしまって、
真っ茶色だったからです。
枯れてしまったのは
これで2本目です。
少し位置をずらさないと
根付かないのかも
しれません。
先月には、
この木もダメだなぁ、
と様子を見て
思っていました。
亡くなった先輩は、
闘病しながら、
何度か許可を得て
退院しては、
ラウンドは無理だから
3ホールだけでも
プレーしたいと
無理を言ってコースに
来たそうです。
最後のプレーは
もうボールを
打てないのに、
何度もクラブを
力なく振って、
1番ホールの
グリーンまで20打以上
かかったそうです。
「パットは……
もういいや」
と息も絶え絶えで、
カートに乗ったので、
そのままハウスに戻り、
病院に直行したと
聞きました。
同伴していた方の話だと
後ろの組の質が悪くて
酷いヤジを浴びながらの
ラストプレーになった
ということでした。
まあ、1ホールで
30分もかかれば、
ヤジりたい気持ちも
わかりますけど、
文字通り『必死な様子』が
察知できない低い観察眼は
ゴルファーとして
致命的です。
権威主義で、
なんでも
お金に換算したがった
先輩らしい
最後のゴルフだと、
思うところは
多々ありましたが、
黙って話を聞きました。
お盆は過ぎたのに、
故人の思い出は
時間に装飾されて
どんどん良いものに
なってしまうようです。
枯れてしまった木が
悲しみを呼び、
その隙間から
変な思い出が
出てきたのだ、
と思いました。
夏ゴルフは、
あと数回で終わりです。