猫じじいのブログ

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山口彰(原子力小委員会委員長)の原発新増設に反論する

2022-10-20 00:03:14 | 原発を考える

きのうの朝日新聞『(交論)なぜいま「原発回帰」』に山口彰、飯田哲也にインタビュー記事がのった。別に論戦か交わされるわけでないので「交論」というタグの意味がわからない。原発推進派の山口は、反論されずに、一方的にウソを述べているだけである。それで、ここでは、彼の問題発言の問題点をとりあげたい。

山口は、原発の新増設を促すため、「建設から廃炉までの100年間、合計で20万人の雇用が生まれるという国際機関の報告書もあり、雇用維持も期待されます」と言っている。

山口は、原子炉工学の東大教授で、経済産業省の原子力小委員会の委員長である。原子力発電所を建設することが彼の利益に合致する。

原発の建設から廃炉までが「100年間」という数値がどこから出てきたのか、疑わしい。

現在、日本で稼働している原発は、建設時は、原子炉の耐久年度が20年の予定であった。原子炉の安全性を確認するために、原子炉と同じ鋼材を原子炉内に保管し、炉のメンテナンスの際に、取りだして、その強度を確認することになっていた。経済産業省は、原子炉の使用年度を10年延長し、使用上限を30年にした。その結果、強度を確認する鋼材がなくなったまま、30年超を運転することになった。ドイツの原子炉は30年で廃炉にするから、ここまではありうる話である。

ところが、経済産業省は40年まで原子炉を稼働することにした。

2011年の福島第1原発重大事故のとき、私の属する物理学科同窓会で、緊急用のタンク水でなぜ原子炉を冷やさないのか話題になった。原子炉にはメルトダウンを防ぐために、電源が止まっても、緊急用の冷却水を原子炉にかけるように設計されていた、これが使われなかったのである。私が思ったのは、鋼材の強度が急激な冷却に耐えられないと判断したからではないかと思う。

緊急冷却をしなかったので、水がすべて沸騰して一時炉内は高圧になったが、原子炉のあらゆる隙間からガスとして抜けでた。それで炉内の圧力が下がり、原子炉の崩壊は幸運にも起きなかった。そのかわりに、原子炉から漏れた水素ガスで、原子炉建屋が爆発した。また、原子炉が冷却されなかったので、内部の核燃料は炉の外に溶け落ちた。メルトダウンが起きたのである。

いま、経済産業省は、例外的に40年超の原子炉を認めることにしている。しかし、それでも、45年以上稼働している原子炉はない。建設から廃炉まで100年間とは、建設が何年で、稼働が何年で、廃炉が何年というのか。まさか、廃炉に50年間というのではないだろうか。

 (補足)規制委員会と経済産業省は根拠なく60年超の原発運転まで言い出している。

また、合計で20万人というのは、20万人×年ということだろうか。雇用も、建設、稼働、廃炉の内訳がほしい。稼働のメンテナンス作業、廃炉作業は放射線を浴びる。雇用20万人×年のうち、放射線を浴びる雇用は、何パーセントにあたるのか。

また、稼働、廃炉で出てくる放射性物質(核のゴミ)はどうするのか。その処分場が決まらないままでは、福島の第1原発の汚染水タンクのように、核のゴミが全国の原発で山積みになるしかない。

また、山口が言い張るこの報告書がどこが出しているのか。原発推進の国際機関 IEAだろうと思われる。ここは原発建設によって利益をうる機関だから客観的な報告と言えない。したがって、追及をさけるため、「期待されます」と山口は語ったのであろう。

原発の発電コストは、すでに、太陽光発電や風力発電より高くなっている。したがって、山口は、発電コストでなく、ありもしない経済効果を主張している。

太陽光発電、風力発電は、まだ、開発途上にあり、これからいっそう発電コストが下がると、これこそ「期待」される。反対に、これから原発建設コストがあがり、原発の発電コストは上がり続けるであろう。

いまなお、核のゴミ捨て場が建設されていず、その建設と維持のコストが、これから発電コストに載せられるので、どこまで、発電コストがあがるか、予測がむずかくなっている。核のゴミは人工的に減らせないので、自然な核崩壊に任すしかない。放射線がほとんどでなくなるのに、何百年も待つ必要がある。

また、山口は、いっぽう的に、次世代の革新炉の夢を語っているが、本人が言うように、現実的には、「革新軽水炉」しかない。これは、「革新」と言っているが、「改良」でしかない。すなわち、原理は以前と同じで、水で、炉のなかを飛びかう中性子のエネルギーを吸収し、その結果生じる熱水で発電をするというだけである。もちろん、福島第1原発事故の教訓を生かし、部分的に改良を加え、安全性を高めるのだろう。そして、建設費が高くなる。

アメリカやイギリスやドイツは新規増設を止めているのは、電力会社にとって、原発は経済的に成り立たないからである。儲かるのは、原発製造建設メーカだけである。

経済産業省は、東芝の原子炉製造部門を救うために、原発の新増設を言っているのではないだろうか。

原発を作る側の人が、原子力小委員会の委員長になって、経済産業省に答申することは、利益相反行為だと思う。現役の東大生も、山口彰の発言に怒ったらどうか。このまま放置することが恥ずかしくないのか。

では、将来の電気需要に答えるには、どうしたらよいであろうか。

現在、実験室レベルでは、触媒を使い光化学反応で水を分解するのが、植物より効率的になっている。水素ガスは貯めることができるので、貯めたガスを使い、水素燃料電池で発電すれば、昼夜を通じた発電が可能となる。大電力を安定して経済的に供給できるかの実証実験を始めるときがきたと思う。これこそイノベーション技術である。



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