きのうの夜遅く、NHK ETVとBBC World Newsとが、同じできごとにまったく異なる説明をしていた。男性の精液の精子の数が減ってきた、奇形の精子がの割合が増えたという全世界的現象についてである。
午後11時半からのNHKのサイエンスZEROは、その現象はホルモンの分泌が変化してきたからだと言う。人類に起きている体や心の性差が縮まる「中性化」は進化の流れで、変えることができないという。進化の過程で、男性に特徴的な目の上の額のもりあがりもしだいになくなってきたのと同じだと言う。手の指も、男では人差し指より中指がずっと長かったのが、人差し指がどんどん長くなっていると言う。
スペシャルナビゲータの井上咲楽が「私は男っぽい性格だが、確かに私の手の中指は人差し指より長い」といって、みんなを笑わせていた。
人類が中性化で、どんどん子づくりをしなくなり、人類は滅亡の危機にひんするという井上の心配に対し、ISP細胞から精子や卵細胞をつくったり、人工子宮で受精卵を育てたりする、男と女によらない「新たな生殖の仕組み」を作り出そうという研究も始まっていると答えていた。
ジェンダは生物学的性の問題ではなく、文化の問題だという立場からすると、暴力的であることが男だという番組の雰囲気は、我慢がならないものであった。井上が素朴にしゃべっているというより、番組プロデューサーやディレクターが脚本を書いてしゃっべているのだから、番組の発言の責任はNHK側にある。
午前0時10分からの BBC “Why Plastic? “シリーズの “We The Guinea Pigs”をみた。日本語への翻訳がなく聞き間違いもあるかもしれないが、プラスティックが「内分泌かく乱物質」と働いて、精子の減少、奇形を招いているというものである。海外の研究についてはBBCはNHKと同じ映像を用いていた。
guinea pigとは日本語のモルモットのことである。種としてはネズミの仲間だが、顔が豚のような雰囲気だから英語でそういう。人類は「内分泌かく乱物質」の実験動物になっているというのが、タイトルの意味である。
プラスティックとは、いろいろな用途に使われる形の成型が容易な石油系の人工物質であり、加工目的から色々な化合物が添加されている。
ビスフェノールA、PBCフェノール、フタル酸エステルなどが女性ホルモンのエストラゲンと同様な働きをしているという。海洋にプラスティックのゴミがさまよい、砕かれて微粒子となって海洋生物が「内分泌かく乱物質」を吸収し、最終的に人間が体内に取り入れるようになっていると、BBCの番組は警告している。
NHKのサイエンスZEROの「人類の進化の流れ」より、BBC “We The Guinea Pigs”の「内分泌かく乱物質の吸収」という仮説のほうが、私には本当のように思える。また、マッチョが男性の本質だとするサイエンスZEROの主張は納得できない。他のヒトに優しくできるかは社会機構や文化の問題である。ホルモンのせいにするのは短絡的すぎる。
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