猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

コソコソと原発を推進する政府と官僚に怒る、高村薫

2019-06-28 23:56:39 | 原発を考える

けさ(6月28日)の朝日新聞で、作家、高村薫が、安全性も確立されていないのに、なし崩し的に政府が原発再稼働を推し進めている、と怒っていた。寄稿『原発と人間の限界』である。

私も、この日本政府の無責任さと役人の陰湿さに怒らなければならないと思う。

昨年7月3日に第5次エネルギー基本計画が閣議決定された。しかし、その105ページにわたる『エネルギー基本計画』のどこにも、具体的な原子力エネルギーの比率が設定されていない。にもかかわらず、同じ日の経済産業省資源エネルギー庁の『エネルギー基本計画』についての解説、『新しくなった「エネルギー基本計画」、2050年に向けたエネルギー政策とは?』では、2030年の原子力発電の電源構成比率を20~22%としている。

すなわち、105ページにわたる基本計画の前に、原子力発電の電源構成比率が決まっていたのである。閣議決定された『エネルギー基本計画』に先立って、資源エネルギー庁は、同年3月26日の『2030年エネルギーミックス 実現へ向けた 対応について~全体整理』で、原子力発電の電源構成比率を20~22%と書いている。

では、閣議決定された「エネルギー基本計画」では、どう書かれているか。

「2013年度の(CO2)ゼロエミッション比率は再生可能エネルギー11%と原子力1%を合わせて12%程度であり、2030年度には再生可能エネルギーの導入促進や、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を通じて、44%程度とすること」

「2013年度のエネルギー自給率は東日本大震災後大きく低下し6%となったが、2030年度には再生可能エネルギーの導入促進や、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた原子力発電所の再稼働を通じて、24%とすること」

これらと合わせて、再生可能エネルギーの比率を上げないという暗黙の了解のもとに、資源エネルギー庁は、原発の比率20~22%が閣議決定されたとするのである。これは、ペテンでないか。

高村薫は、「原発の新規制基準に伴うコスト増や、40年を超えた原発の延命の困難などを考えると、原子力の比率の20%超という数字はおよそ現実味がない」と批判する。

いっぽう、エネルギー基本計画には、「年1%ポイント程度の上昇」で可能だと言っている。すなわち、年に2台程度の再稼働、または新規稼働を進めれば、可能だと、資源エネルギー庁は考えているのだ。経済産業省の役人は陰湿だ。毎年、少しづつ再稼働すれば、国民は気づかないとバカにしているのだ。

エネルギー基本計画の冒頭に、「第一に、東京電力福島第一原子力発電所事故の経験、反省と教訓を肝に銘じて取り組むことが原点であるという姿勢は一貫して変わらない」と書くが、「世界で最も厳しい水準の規制基準」と同じく、真実がない。「確率論的リスク評価(PRA)等の客観的・定量的なリスク評価手法を高度化し、リスク情報を活用した意思決定(RIDM)」などと、とんでもないことを書いている。

原子炉重大事故という頻度が少ないことに、正確な確率なんて推定できっこない。原発のリスクなんて気のせいで、国民への安全の広報に力を入れれば良いという考えが、エネルギー基本計画に貫いている。

高村薫のいうように、地震、火山、津波が頻繁に起きる日本では、使用済み核燃料の放射性物質の処分に妙案がなく、ひとたび事故が起きた際の想像を絶する放射能被害が起きる。

エネルギー基本計画では、相変わらず、使用済み核燃料の再処理、核燃料サイクルを唱えている。これらの、技術的に まったく見込みのない技術にお金をそそぐより、確立した技術の太陽光発電、風力発電を電源網に接続できるように、エネルギー基本計画の言う通り「欧州の事例も参考にしながら、『日本版コネクト&マネージ』の具体化を早期に実現する」を最優先化すべきである。

日本国の政策は、客観的な科学技術の見通しよりも、戦前と同じく、「地政学」「地経学」的な観点と大企業の利害で決まっているようだ。

世界には、原発なしで、うまく経済を回している国が多数ある。また、ドイツのように、2022年に原発をすべて運転終了すると宣言している国もある。

高村薫の結論「(原子力発電も)核兵器の拡散も地球温暖化も、そういう人間の不条理な本態と、度し難い欲望の写し絵」に私は同意する。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿