猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

「地域おこし協力隊」炎上はなぜ?

2023-09-07 11:24:42 | 社会時評

2日前、NHK総合のクローズアップ現代で『都市と地方のすれ違い “地域おこし炎上”はなぜ?』を放映していた。

見ていて、すこし、ズレていると私は思った。

これは「都市と地方のすれ違い」の問題ではない。「地域おこし協力隊」そのものが間違っているのである。NHKは自民党と中央の役人の雑な「地方創生政策」を批判しなければならない。

「協力隊」に「海外協力隊」がある。海外協力隊員になるには、書類審査、面接だけでなく、受かれば研修がある。研修をうけて派遣され、期限が過ぎれば、戻るのである。

「地域おこし協力隊」は研修をうけていない。派遣でなく、移住である。

当然、「地域おこし協力隊」は侵入者であるから、もともとの地域住民ともめ事を起こすのは当然である。それに、地域のボスは、新参者は自分に従えと、マウントしてかかる。

地域に過疎化がおきるのは、それなりの理由があるからだ。単に中央からの移住者を求めれば良いわけではない。

いま過疎地でも、昔、子どもたちが生まれていたのだ。その子供たちが、大人になって、どうして、その地を離れたか、理由があるはずだ。その理由を検討せずに、移住者が増えれば何とかなるというのは、安易すぎる。移住者を騙していることになる。

過疎化が起きるのは経済的理由かもしれない。自由がなく息苦しいという精神的理由かもしれない。診療所が近くにない、あるいは、土地が公害で汚染されているという健康上の理由かもしれない。自然災害が繰り返されるという生命の安全が理由かもしれない。娯楽が少ない買い物の楽しみがないという理由かもしれない。

もっとも、人の好みは多様だから、他の人がいないからというのが住みたい理由になるかもしれない。私は、娯楽が少ない、買い物の楽しみがないという空間を好む。

過疎化に理由があるとすれば、過疎化はある意味で仕方がないことである。

番組が最初にとりあげたケースは、カフェを開いた移住者と朝鮮ニンジンを栽培して産業を起こそうとする地域住民リーダのあいだのもめ事である。

地域住民リーダは、かっての別子銅山の繁栄を懐かしんでいる。そんなものは帰ってこない。過疎化が進むのは当然であり受け入れるべきだ。朝鮮ニンジンの栽培で苦労しているようだが、それを受け入れる人たちだけで、生活すればよい。そんなに多くの人を養えない。カフェを開いた移住者は若者の観光客をあてにしてだろう。それもさらに少ない人数の人しか養えない。

それなのに、「地域おこし協力隊」を送り込んだ地方自治体の役人は、誤ったことを行っただけでなく、双方を騙したことになる。

地方自治体と自民党は、選挙対策のために、地域創生を行っているポーズをしているだけである。地域住民は、自分の頭で考え、生き抜くべきである。過疎化はある程度仕方がない自然の摂理である。過疎化は悪いことではない。


ALPS処理水の海洋放出の非常識と再処理工場のトリチウム巨大放出

2023-09-05 00:06:27 | 原発を考える

いま日本のテレビや新聞は、福島第1原発のALPS処理水の海洋放出に反対するのは、中国の反日運動に加担する「非国民」か、科学を知らない「低能国民」かのように、言う。しかし、事実はこの逆であり、テレビや新聞は日本政府の作るウソを垂れ流している。これは、とても悲しいことである。

まず、ALPS処理水を、なぜ、福島第1原発敷地内のタンクに閉じこめたか、このことから確認しないといけない。トリチウムを別にしても、8割のタンクのALPS処理水は、含まれている放射性物質の総和が規制値を越えているからである。したがって、トリチウムを別にしても、ALPS処理水を放出するなら、もともと薄めないといけなかったのである。

さらに、ALPS処理水を100倍に薄めるというのも、あまり根拠のある話ではない。

東京電力は、放出のトリチウム濃度を1500Bq/Lにするためだと主張する。そして、「この濃度は、国の安全規制の基準(告示濃度限度)である60000Bq/L および世界保健機関(WHO) の飲料水水質ガイドラインである10000Bq/Lを十分下回ります」と言う。

賢い読み手は気づくと思うが、日本の「安全基準」は「飲料水の基準」ではない。日本には飲料水の基準はないのだ。じつは、EUの飲料水の基準は100Bq/L、アメリカの飲料水の基準は700Bq/Lである。計画の放出濃度は、EUの基準の15倍、アメリカの2倍強なのだ。決して、十分に低い濃度とは言えない。

ちなみに、自然状態でのトリチウム濃度は、関東地方での降水では、0.4Bq/Lである。

トリチウムの体内蓄積の過程はよくわかっていない。人間は、大量の水を飲み、大量の水を排出するから、トリチウムは他の放射性物質に比べ、安全であると考えられてきた。

しかし、有機物質の水素原子は、いずれ、水分子に含まれる水素原子で置き換わるから、自然にほとんどないトリチウムを長い年月をかけて大量に海洋に放出して良いわけはない。生き物は有機物質から構成されている。トリチウム(3重水素)原子は普通の水素原子と化学的性質が同じだから、海洋のトリチウム濃度と同じ割合のトリチウムをすべての生き物が体内に抱えることになる。

自然環境を守ると言う立場から、トリチウムも海洋放出を控えるべきである。

東京電力や政府は、すでに、全国の稼働中の原発が毎年大量のトリチウムを放出しているから、福島第1原発のトリチウム年間22兆Bqの海洋放出はたいしたことはないとも主張している。

 22兆 Bq = 22000000000000 Bq

きょうの朝日新聞に、「電力各社によると、再稼働した原発の昨年度のトリチウムの年間放出量は、関西電力美浜2.8兆Bq、大飯24兆Bq、高浜26兆Bq、四国電力伊方30兆Bq 九州電力玄海19兆Bq 川内37兆Bq」とある。

これらの原発は、どういうトリチウム濃度で海洋に放出しているのか、私は気になる。トリチウムの検出は手間がかかるから、測定していない可能性がある。日本の近海は、福島沖だけでなく、すべて汚染されていることになる。

ほかでもトリチウム水を海洋に放出しているから、福島でも海洋に放出しましょうというロジックはおかしい。

海洋の自然環境を守るために、自然には ほとんどないトリチウムを生産する 原発の利用をやめよう。

それだけではない。朝日新聞はさらに「日本原燃再処理工場(青森県)では、試運転した2007年度に1300兆Bqを放出した」と書き加えている。これは、驚くべき大きさである。

これは別に事故によるものではない。原燃が再処理工場の建設にあたって、年間の放出するトリチウムの量を18000兆Bqと申告している。

 18000兆Bq = 18000000000000000 Bq

日本政府は、もっと真剣に、人類共有の海洋の環境を守ることを考えるべきである。


東北大学を「国際卓越研究大学」候補に認定の怪

2023-09-04 00:02:16 | 科学と技術

きのうの新聞に、9月1日、文部科学省が「国際卓越研究大学」の初めての認定候補に東北大を選んだと発表した。

この「国際卓越研究大学」とはなんなのか、誰がえらぶのか、選ばれると大学にとって何がいいのか、この制度の裏の意図はなんなのか、と私は考えこんでしまう。

新聞によると、「この制度は、政府が巨額の資金を投じて国際競争力のある大学づくりを後押しし、低迷が続く日本の研究力を底上げしようというもの」らしい。

まず、私がわからないのは、「研究大学」とは何かである。大学は教育と研究とを行っている。東北大学を選んだとは、学生を取らない大学のことでもない。うさん臭い。

「低迷が続く日本の研究力を底上げする」のなら、本当は、研究者の身分を安定化し、研究者を目指す動機を高めるべきである。物理学や化学の分野では、将来の生活の不安から、いま、博士課程に進む者が少なくなり、研究者層が薄くなっている。

文部科学省のサイトをみると、制度を作った背景が長々と書いてあり、制度そのものについては、つぎのようにしか書かれていない。

「国際的に卓越した研究の展開及び経済社会に変化をもたらす研究成果の活用が相当程度見込まれる大学を国際卓越研究大学として認定し、当該大学が作成する国際卓越研究大学研究等体制強化計画に対して、大学ファンドによる助成を実施します。」

まさに、悪文、何を言いたいのか、わからない。

簡略化すると、「研究の展開」と「研究成果の活用」が「見込まれる大学」を認定し、助成すると言っている。単に国際的にすごい研究と言っているのではなく、経済効果を生む研究と言っているのだ。

助成するといっても、新聞によれば、初年度百億円である。小さな研究大学で研究分野が限られていなければ、研究資金としては決して多くない。文部科学省の狙いは、「認定」を餌に大学の変革を狙っていると私は考える。

認定する有識者会議(アドバイザリーボード)のメンバーは10人で、大学の研究者は2人だけで、後は富士通、NTTなど企業や政府関係者である。ノーベル賞受賞者やフィールズ賞受賞者は一人も含まれていない。

私は、産業とすぐに結び付く研究なら、企業でやってくださいと思う。国がでる必要がない。さもないと、特許権で争いが起きる。市場原理で動く社会では、企業は互いに競争している。どの企業も、当然、自分の研究成果を囲い込みたい。したがって、欧米では、成果が予測でき、成果の活用が見込まれる研究は、大手企業が自分で行うか、あるいは、ベンチャー企業に委託し、成果を独占しようとする。

大学は研究を担う新しい人材を育て、将来、企業が取り組む研究のタネを生む所である。大学の研究は国際的に公表するのが原則である。

今回の東北大の候補認定において、文部科学省はそのサイトに、つぎの3つの「審査の視点」を掲げている。

① 国際的に卓越した研究成果を創出できる研究力

② 実効性が高く、意欲的な事業・財務戦略

③ 自律と責任のあるガバナンス体制

①でわかるように、現在研究成果がでているか、国際的に評価されているかでなく、「現状を変革しようとする強い意志」があるかを審査している。それを、②や③で測るというのである。

これをさらに10の視点に分けているが驚くべき内容も含まれている。

(1) 国内の学術研究ネットワーク全体を牽引すること。(すでに学会があって研究ネットワークが民主的に運営されているのに、少数の研究大学の下に国内の大学を系列化したいのか)

(2) 全学的な変革が求められる。学内外の叡智を大学の下に結集。(いろいろな学部があるのに、なぜ一律の全学的変革が必要か)

(3) テニュア制度や評価システム等も導入。(いまでも多くの研究者が不安定な有期雇用に置かれているのに、このテニュア制度は終身雇用の地位をさらに限定するためか)

(4) 質的な向上の測定、モニタリング。

(5) 国内企業や海外からの資金調達の具体的な計画や構想。(大学は自活しろというのか)

(6) 同窓生からの寄附金獲得やスタートアップ創出などの手段や計画。

(7) ベンチマークしている海外大学の取組の比較(何のために何を)

(8) 大学の組織を再構築する有効な戦略・戦術。(組織の再構築とは何か、なぜ戦略と戦術が求められるのか)

(9) 資源の配分を決めていく仕組み。(「資源」とは助成金のことなのか)

(10) 研究マネジメント人材や技術職員、ファンドレイザー、スタートアップ育成等の専門職人材の確保の方策。(これって、お金を要する話で、大学側でお金を確保せよと言うののか)

きょうの朝日新聞2面で言っているように、認定を餌に、文部科学省が変革を「押し売り」していて、今回、東北大学が一番素直に文部科学省のいうことに従ったというのが真相のようだ。

総長が強権を発揮し、自分でお金を稼いでくる大学が「国際卓越研究大学」なら、そんな大学だと認定されることは、大学にとって恥ずかしいことだと私は思う


汚染水を汚染水と言って何が悪い、農林水産相の「汚染水」発言

2023-09-01 13:08:04 | 原発を考える

農林水産相の野村哲郎がきのう記者団に福島第1原発の「処理水」を「汚染水」と言ったとテレビや新聞のマスメディアが責めている。「汚染水」を「汚染水」とつい本音を言ったからといって、なぜマスメディアは大臣を責めるのか。言論統制ではないか。

「処理水」という言葉は昔はなかった。私の手もとの小学館新解国語辞典にも岩波国語辞典にもない。自民党と経産省の役人が、放射線物質を含む水、汚染水を海洋に放出するために「処理水」という言葉を作っただけである。東芝のALPSに入るのが「汚染水」でALPSから出てくるのを「処理水」と呼ぶと、役人が考案しただけである。

首相の岸田文雄は野村の発言について「遺憾なことであり、全面的に謝罪するとともに撤回することを指示した」と語った。「福島第1原発の汚染水はアンダーコントロールだ」と言って東京五輪を招致した安倍晋三以来の自公民政権の虚構を破ったから「遺憾」なのだ。

放射性物質は不安定な原子核をもつ物質を言う。不安定な原子核は中性子線、ガンマ線、ベター線、アルファ線などの放射線を出して、安定な原子核に転換する。これが原子核の崩壊である。1秒間に1個の原子核が崩壊する原子の個数を1Bq(ベクレル)という。

ALPSからでてくる「処理水」は平均で14万Bq/リットルのトリチウム(3重水素)を含むという。EUの飲料水の規制は100Bq/リットルである。当面は「処理水」を海水で約100倍に薄めて1500Bq/リットルにして、1年に約22兆Bqのトリチウムを海洋に放出するのが東電と日本政府の方針である。

  22兆=22,000,000,000,000

東電のサイトには「当面」という単語がすべてつけられているので、国民の反応如何では、1500Bq/リットルすら、今後守られるかどうかわからない。8月28日は、800倍の海水で薄め、200Bq/リットルにして放出したが、約束していないから、これを 今だけ と思った方が良い。

とにかく、ALPSから出てくるのは、「汚染水」であるのは厳然たる事実である。

原発が生産する放射性物質の原子核は、中性子の数が多いだけで、原子の大きさや化学的性質で他の同位体から選別できない。同位体とは陽子の数が同じ原子核のことである。すなわち、東芝のALPSはもともと無理なことである。たとえば放射性セシウムをとり除くと言って、放射性でないセシウムをも除去しているのである。放射性物質だけを除去するとなると、「拡散」という物理的性質を使うことになるが、それは高価な装置になる。ウラン238を同位体のウランから取り出すときしか、これまで「拡散法」が使われていない。

放射性物質だけを汚染水から除去する装置はもともと科学の原理に反するウソである。

原発事故が起きたとき、科学的に正しい処置は、これ以上放射性物質が漏れ出ないようにし、漏れ出た放射性物質を閉じ込め、人間の生活空間から隔離することである。

いまだに、福島第1原発で放射能汚染水が発生するのは異常である。

汚染水の発生は、地下水が原子炉建屋に流れ込まないようにし、デブリの冷却を循環水型にすれば、防げるのだ。

「処理水」を閉じ込めるタンクが足りないというが、埋設型の大きなタンクに閉じ込めるか、地中深く、砂礫層に圧力を加えて注入すれば、問題が解決する。もちろん、周囲の土地を買収して、いまのタンクを増設してもよい。

これらは私の思い付きでなく、事故直後から技術者や科学者が言っていたことである。

日本政府は、原発の安全性のウソ、安倍晋三の「アンダーコントロール」のウソ、東芝のALPSのウソ、海洋放出が科学的判断だというウソを守るため、事態をこじらせている。

日本政府が人類共有の海洋に汚染水を放出することを、中国人や中国政府が非難することは理に適う。マスメディアは、もう少し、科学的に問題を見ることができないのか、と情けなく思う。