本集では「題知らず」だが、家集に「梨の花盛りなりけるを見て」と。山梨の大木に鈴なりに咲いた花が、風に揺らいで海の波のように見える。見飽きない美しさに、歩みが進まない。春盛りの風景。
厳しい冬の到来に、せめて短歌で花の世界に遊ぶ一興。
ひらかなy119:さくらいろの あさのなみして よせかえす
やまなしのはな あきないでみる
ひらかなs1472:さくらあさの をふのうらなみ たちかへり
みれどもあかず やまなしのはな
【略注】○桜麻=桜色の麻。「苧生」の枕詞であり、「山梨」の縁語。
○苧生(をふ=おう)=「麻生」とも書く。麻。
○源俊頼=(3日の放送大学・古文書の講師は、しきりに「しゅんらい」
とだけ発音していた。古人の読みは、慣用として、訓・音併読もあれば、
訓だけもあるので注意。)経信の子。俊成の歌風に道を開く。11首入集。
【補説】山梨。バラ科。10m~15m。一見、白梅の一重花のようであるが、花
期の春には鈴なりして、俊頼が絶賛するとおり、美しい。万葉・古今・新古
今に、しばしば詠われて、それほど珍しい花樹ではなかった。山梨県の
由来ともされるが、地元の人もほとんど実物は知らないようだ。
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