場末の雑文置き場

好きなことを、好きなときに、好き勝手に書いている自己満ブログ。

山本周五郎時代劇 武士の魂 第十二話「失蝶記」感想

2017年09月17日 | BSジャパン時代劇

タイトルは失聴とかけているらしく、主人公の谷川は序盤に聴力を失ってしまう。その割に結構普通にペラペラと喋っていて、聴こえていたことがあるとは言えこんなに喋れるもんだろうかという疑問は湧かないでもない。でもそうしないと多分ストーリー展開がもたついてしまうので仕方ないかな。

ラストはとても印象的だった。さあこれから二人の戦いが始まる、ってところでエンディングテーマが流れ出したことにまず衝撃を受けた。勝負の行方はわからずじまいで、これに最初は不満だったんだが、後になってジワジワと良さがわかってきた。このオチだからこそいいんだよな。
勝つのが谷川であれ梓であれ、若い命がまた一つ失われてしまうという結果は変わらない。どちらの命も同じように尊いもので、谷川が勝ったから良かったね、めでたしめでたしとはならないんだってことを表しているんだよね。

次回からは原作者が山本周五郎から池波正太郎にチェンジ。そして次回の主役は片岡愛之助。有名どころ持ってきたね。キャストの地味さが好きなので個人的にはこういうのに心惹かれなかったりはするんだけど。

キャストと言えば、今回の主役の水田航生はテニミュに出ていた人らしい。遠藤雄弥もそうだったはずだし、この枠にはテニミュだとか特撮出身で知名度低めな俳優がちょくちょく主役あるいは重要な役で出ているようだ。でもそういうのを喜びそうな層の人たちがこの時代劇を見てるかというと、あまり見てなさそう。「人形佐七捕物帳」には若い特撮ファンもそれなりに食いついていたっぽいけど。

なんとなくこの枠の過去のキャストを調べてみたら、同じ人が二回、三回と出ていたりした。今回杉永役で出ていた遠藤雄弥も「人形佐七捕物帳」にも出ていたみたい。
一回も出ていない人で、このシリーズの雰囲気に合っていそうな俳優と言えば、私がパッと思いつくのは林泰文かな。ちょうどいい感じの地味さだし、時代劇慣れもしていそうだし。いつか見られるといいな。


山本周五郎時代劇 武士の魂 第八話「茶摘は八十八夜から始まる」感想

2017年07月13日 | BSジャパン時代劇

BSジャパンの時代劇、相変わらず面白い。「武士の魂」だったら今のところ第六話「五十三右衛門」が一番好きかな。でも全体的に安定していて、どの話も好き。
作りが丁寧で、そのへんの地上波ドラマより出来がいいと思うんだけど、見ている人がほとんどいなくて全く話題になっていないのが残念。

脚本や演出だけじゃなくて、配役の地味さも好きなポイント。地上波ではまず主役に抜擢されないような俳優陣が主役をやっていたりするところが新鮮で面白い。
あまりネームバリューはないけどいい役者を使っていると思う。無名=ショボいでは決してないんだよね。名前だけは売れているけど下手糞な役者だっていくらでもいるし。

今回の「茶摘は八十八夜から始まる」は全く救いのない話だった。小さい子供の死体まで出てくるし。生きているときの描写がそれなりにあったので余計にキツい。でも引き込まれた。横暴だけど憎めない殿様と冷静で我慢強い平三郎、メインの二人の対照的な感じが良かった。
ただ、あんなに濃いハーフ顔の父親からあんな和顔の息子はできないだろうとは思う。母親似なのかな? まあ、平八郎まで濃い顔だったら画面が暑苦しくなるからな。あの配役で正解かもしれない。

ラスト、絵面は一見爽やかだけど、あれ生首持ってるんだよな。八神蓮、前回(男と女のミステリー時代劇 第七話「婿入り試験」)出たときもラストで爽やかな笑顔で死体背負ってたな。

八神蓮のBSジャパン時代劇の出演はこれで二回目。前回も実質主役で、今回も二番手。気に入られてるね。
でもわかる。演技もいいし、和装がとてもよく似合っている。顔は全然好みじゃないどころか好みの対極に位置するくらいなのに、今回はなぜか妙にカッコ良く見えて困惑した。
昔はヘッタクソだったのにね。「乾杯ジュテーム」の変な踊りが強烈な印象として残っていて、どちらかと言うとネタキャラのイメージだったし。こんなにいい役者さんになるなんて思ってなかったよ。

BSジャパンの時代劇で二回見て思った。八神蓮は現代劇ではそれほどでもないけど時代劇だと光る。時代劇全盛期だったら、この人もっと活躍できたんではないかな。


人形佐七捕物帳 第八夜「開かずの間」感想

2017年01月15日 | BSジャパン時代劇

「山本周五郎人情時代劇」以来BSジャパンの時代劇のファンなので、火曜9時のこの枠はずっと見ている。
現在放送中の「人形佐七捕物帳」も結構面白い。主人公の左七にはさほど魅力を感じないんだけど子分二人がいい味を出していて。特に豆六。あの三枚目風味なところがいい。池田純矢は「牙狼」ではプレイボーイの役だったみたいなのにね。直前の江戸巡り番組で素の二人を見たときには正直どっちもパッとしない感じに見えた。でも芝居してると違うな。辰五郎も男前なので左七ばかりモテるのが不自然に見えてしまうのは、まあ仕方ないのかな。

キャスティングは特撮ファンが見たら喜びそうな感じ。調べてみたところ、主演の要潤は「仮面ライダーアギト」の仮面ライダーG3、辰五郎役の三浦涼介は「仮面ライダーオーズ」のアンク、豆六役の池田純矢は「海賊戦隊ゴーカイジャー」のゴーカイシルバーと「牙狼-GARO- 〜闇を照らす者〜」の猛竜、らしい。
来週のゲスト、津田寛治も特撮にも出てたよな。「9係」のほうがメジャーだとは思うが、特撮で言うと「仮面ライダー龍騎」の編集長。また悪役かな?

今回の「開かずの間」は左七と辰五郎の関係の変化が丁寧に描かれていて、二人の友情(?)ものとしてはとても面白かった。
ただミステリーとしてはイマイチだったかな。犯人は私の予想を覆してくれたんだ。辰五郎の馴染みの遊女かと思ってたから。でも動機がちょっとなあ。 女将が「男の人にはわからないかもしれませんねえ」って言ってたけど、女にだってさっぱりわからないよ。女は男より嫉妬深い生き物だ、とでも言いたいのか?

この話を書いたのも「男の人にはわからない」って台詞を女の登場人物に言わせてるのもおっさんなんだよな。かしくの義母が抱いていたドロドロとした感情は、おっさんの想像の産物。
「人形佐七捕物帳」の原作は全く読んでいないんだけど、聞いたところによると女性蔑視的な表現が多いみたい。左七が日常的に妻を殴っていたり、女は若くないと無価値、みたいなことが何度も言われていたり。
BSジャパン版は、お粂の嫉妬をギャグ風味に描いている点が若干気にはなるものの、そういう面はかなり薄めているという印象だった。でも今回は、横溝正史の持っている女性に対する偏見がちょっと見えてしまった感じがした。全体としては面白かったんだけどね。


「男と女のミステリー時代劇」 第一話・第二話感想

2016年04月16日 | BSジャパン時代劇

BSジャパンで放送されていた「山本周五郎人情時代劇」が終わり、同じ枠で新しいシリーズが始まった。原作は多岐川恭という作家らしい。
ミステリーは好きじゃないのであまり期待せずに見始めたけど、こっちもなかなか面白かった。ただ、エンディング曲はちょっとドラマの雰囲気に合っていないんじゃないかと思った。

第一話「あだ討ち」はそこそこ笑える部分もあって明るい雰囲気だったのに対し、第二話「牢の女」は暗くてジメジメした話。ほとんど牢の中で話が展開されるから、画面も暗いしね。

第一話の方が面白かったけど、第二話も悪くなかった。百合成分も微妙にだけど摂取できたし。最後、名主様といちの顔が近かったな。チューするかな、とちょっと期待してしまったけど、勿論そんなわけなかった。ラストで一応いちの命は助かったけど、頼れる人は誰もいないし前途は多難だろうな。

第二話の犯人は最初から怪しさの固まりだったよな。種明かしされても「うん、知ってた」以外の言葉が出ない。第一話も特に謎らしきものはなかったし、これを「ミステリー」と読んでいいんだろうか。話は面白いし、そもそも私はミステリー好きじゃないし、全然文句はないけど。
長太郎は色男って設定なのか? だったらもうちょっと男前が良かったな。「ぼんくら2」の人のいい杢太郎さん役は合ってて良かったと思うけど、こういう役はちょっと無理があるような気がする。


「山本周五郎人情時代劇」最終話&全体感想

2016年03月18日 | BSジャパン時代劇

第十二話「めおと蝶」、ずっと嫌な感じだった夫が初めて本音を見せるシーンが良かった。今まで虚勢を張っていたんだっていうのがわかって。
今回、主人公と旦那を演じた二人の年齢差はかなりあるみたいなんだけど、前回の「おもかげ抄」と違ってあまり違和感はなかったな。主演女優が年齢不祥な感じなので。

これが最終回。とうとう終わってしまったか。好きだったんだよなこのシリーズ。純粋なクオリティのせいだけじゃなくて、低予算でいろいろ制約がある中で、いいものを作ろうとして一生懸命な感じが伝わってきたから好きだったんだと思う。

ちょっと残念だったのは、正月明けの後半部分から武士が主役の話が多くなってしまったこと。前半は町人中心の話で、武士は出てきても脇役だったのに。普通の庶民が主役の話をもっと見たかったな。

流れてくるCMが健康系ばっかりで、視聴者の年齢層の高さを実感させられることが多かったことも今となってはいい思い出だ。私と同年代の人はほとんど誰も見ていなかったのかもしれないな。

最終話まで全部見終わったので、好きな話ベスト5をば。

  1.  こんち午の日
  2.  初蕾
  3.  夜の辛夷
  4.  泥棒と若殿
  5.  釣忍

「こんち午の日」はダントツで好き。特に主人公が好き。冴えない豆腐屋っていう設定も、お人好しで芯の強いところも。

「初蕾」は、半之助に対してはいろいろと言いたいことはあるけど、義理の親子の情を描いた物語として面白かったし、スッキリしたハッピーエンドだったからこの位置。

「夜の辛夷」は、恋愛物としては一番好み。お滝が全然男に都合のいい女じゃないんだよね。そして元吉のほうも女が自分に尽くしてくれるとか、女らしいとか美人だとかそういうところに惚れたんじゃなくて、お滝のたくましさに惚れたってところが良かった。

このシリーズは役者がショボいとよく言われるけど、私はあまりそうは思わなかった。「お美津簪」では耐え難いレベルの演技を見せられたけど、それ以外の回ではそんなに気になるほど酷いのはなかったような。

地上波の人気ドラマでだって、モデル上がりやアイドルの下手な演技を見せられることはよくある。そういうのに比べてこのシリーズの俳優陣の演技が劣っているとは思えない。特に「こんち午の日」なんかはみんな上手くて、無名でも上手い俳優はやっぱりたくさんいるんだな、って感心したんだけどな。

知名度が低い俳優が多いのは確かだよ。でも、知名度ってそこまで大事なものなんだろうか。私はむしろ俳優陣のあのマイナーさ加減が気に入ってた。テレビに出まくって見飽きたような人ばっかり出てくるより、新鮮味があっていいと思う。

DVD出ないかな。出たら多分買うんだけど、難しいのかな。見てる人もあんまり多くないようだったし。