場末の雑文置き場

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山本周五郎人情時代劇 第七話「初蕾」感想

2016年01月07日 | BSジャパン時代劇

今回は今までで一番スッキリしたハッピーエンドだった。珍しく誰も死ななかったし。何より悪役がいないのがいい。
「身分違いの恋」という要素はあるものの、恋人の半之助の出番は少なくて、恋愛部分よりは半之助の両親との絆のほうにウェイトが置かれている。そこが良かったのかもしれない。

出番が少ないからそんなに気にならないけど、半之助ってわりとろくでもない男だと思うんだ。もっともな忠告をした友人に逆ギレして大怪我を負わせて、両親にも恋人にも迷惑かけまくって。知らなかったとは言え、女を孕ませて放置はかなりひどい。

ただ、決闘に至った経緯を思い出して、間違っていたのは自分のほうだと自覚して反省できるだけまだマシかな。あとはお民に「待っていろ」とは言わなかったことも多少は評価できる。
反省する前の半之助は本当にただのクズでしかないよな。お民も「どうせ泣くように生まれついたんだ」なんて愚痴ってるし、雑な扱いを受けてきたことが容易に想像できる。

でもあくまでメインテーマは別のところにあるから、半之助がロクデナシだからと言ってこの話の評価が下がることはない。いい話だったと思う。
それに、半之助が出来た人だったらそもそも話が成立しないからね、仕方ないね。

あと、こんなことを考えるのは野暮だけど、七年も経ったら心変わりしていたって全くおかしくないよな。
私は心が汚れているので、ラストの二人の感動の再会シーンを見ながら、実は半之助に別の女ができていてこのあと修羅場に、っていう展開を瞬間的に妄想してニヤニヤしてしまった。せっかくのいい話なのに私のバカ。

今回の話は好きなんだけど、いつもと違ってメインキャラクターのほとんどが武士階級だったところは、私としては少し不満だったかな。主人公が町人で、庶民の世界で繰り広げられる話っていうところが「山本周五郎人情時代劇」のいいところだと私は勝手に思っているので。あとは(今回ちょっとあったけど)チャンバラがないところ。
武士なんて当時の人口のほんの一部だったのに、時代劇の主役ってほとんど武士ばっかりだからさ。前回(「こんち午の日」)みたいな冴えない豆腐屋なんて、普通の時代劇だったらまず主役にならないと思う。そういう地味な人にもスポットを当ててくれるところが好きなんだ。

次回も武士が主人公の話か。ちょっと残念だな。庶民の世界に帰ってきてほしい。


BSジャパンの「山本周五郎人情時代劇」が意外に面白い

2015年12月18日 | BSジャパン時代劇

時代劇ってお金がかかりそうなイメージがあったから、テレビ東京の、しかもBSでどれだけのものが作れるんだろうっていう好奇心で見始めた。
そうしたらこれが意外と面白かったので、ずっと欠かさず見ている。今一番楽しみにしているテレビ番組はこれかもしれない。毎週放送じゃないのが残念だ。
同じ枠で松本清張の時代劇もやっていたけど、暗い話は苦手なのでこっちは見ていない。

こんなに面白いのに、twitterで検索しても言及している人はほとんどいないんだよな。なんだか寂しい。
視聴率がかなり低いのか(BSだしね)、SNSに興味がなさそうな人生の大先輩方がメイン視聴者だからなのか。まあその両方だろうな。

一話完結で、登場人物は毎回一新される。腕の立つ武士とかじゃなく、素朴な町人が主役。
みんな、強かったり特別有能だったりするわけでもない、本当に普通の人。チャンバラも基本的にはない。

第一話(「なみだ橋」)は評判もいいし、実際面白かったんだけど、本当の息子は死んでしまって、母親はそれを知らないままっていう結末はどうしても辛くて、若干モヤモヤしてしまったところはあった。だから第二話(「夜の辛夷」)、第三話(「釣忍」)のほうが私は好きかな。
第四話(「お美津簪」)は……演技力って大事だなって改めて感じさせられた回だった。続く第五話(「追いついた夢」)もイマイチに感じられて、若干不安になったんだけど、第六話(「こんち午の日」)は面白かった。今までで一番好きな話かもしれない。ストーリーも良かったし、主人公がとても好感の持てるタイプだった。

出てくる役者の絶妙なマイナー感も、私がかなり気に入っている要素。有名俳優をたくさんキャスティングできるほど予算がないからっていう理由でそうなっているだけなんだろうけど、見飽きた人があまり出てこないところが私は好き。よくテレビで見る人気俳優が演技が上手いかっていうとそうでない場合も多いし、知名度はそんなに高くないけどいい演技をする役者だっていくらでもいるしね。

第六話(「こんち午の日」)で主演していた伊嵜充則、初めて知ったけどいいね。男前には程遠いけど愛嬌のある顔立ちで、真面目で人の良いキャラがはまっていた。おすぎ役の大西礼芳は、「花子とアン」の優等生や「美女と男子」の気の弱そうなプロデューサーとは180度違う悪女を演じていてインパクトがあった。 
第二話(「夜の辛夷」)は最近気になっている秋元才加が主演だった。すごくメジャーっていうわけでもないけど好きな俳優が出てきたりして、なかなかいい人選だと思う。……第四話(「お美津簪」)以外は。