場末の雑文置き場

好きなことを、好きなときに、好き勝手に書いている自己満ブログ。

「オペラ座の怪人」感想

2014年11月15日 | 小説

テレビドラマ「金田一少年の事件簿」に、「オペラ座の怪人」をモチーフにした回があった。孤島にある洋館の中で、オペラ座の怪人を名乗る人物が連続殺人を起こす話。怪人が不気味で、当時小学生だった私にはトラウマレベルの怖さだった。

このドラマの影響で、「オペラ座の怪人」はグロテスクなホラーだと何年も思っていた。でも最近、どうもそうではないんじゃないかという気がしてきた。「オペラ座の怪人」のミュージカルや映画を見て「怖かった」と言っている人がいないので。
きちんと話を知ってトラウマを払拭したいと思い、英語の勉強も兼ねてOxford Bookwormsの「The Phantom of the Opera」を読んでみた。STAGE1(初心者向け)で本文は40ページのもの。

感想としては、よくわからなかった。簡単な英語で、しかも40ページで表現できるような話ではなかったようだ。多分、ページ数の関係で重要な説明をいくつも省いているんだろう。
唐突に「ペルシャ人」なる人物が登場して、ここでまず疑問符でいっぱいになった。最後まで読んだけど、結局この人は何者だったんだろう。
最初はラウルを殺そうとしていた怪人が死を選んだ理由もさっぱり。クリスティーヌの純粋さに打たれて、とかそういう話なんだろうか。
ラウルの兄は溺死するらしいけど、この本ではその辺もカットされている。

そんな感じで筋はあまり楽しめなかったが、オペラ座の地下に湖があって、怪人がそこに家を建てて住んでいるという設定は面白いと思った。この湖が実在するというのもまたいい。

怪人がとても不幸な生い立ちの人というのもわかった。醜さのあまり親からも疎まれ、人には顔を見せただけで不気味がられ。だから隠れて生きていくしかなかったという。
でも映画版(2004年)のポスターに映っているファントムは、どう見てもそんなに醜い人には見えない。顔半分しか隠してないし。やけどを負っているとか、痘痕があるとかそんな設定になっているんだろうか。
ファントムの顔の設定、ミュージカル版や映画版は原作と違ったりするのかな?


「笑傲江湖」の林平之

2014年03月30日 | 小説

大分前に、「笑傲江湖」に出てくる岳霊珊というキャラクターについて書いた。(→「笑傲江湖」の岳霊珊

「岳霊珊」で検索してみたことがあるけど、この記事がかなり上位に来てびっくりした。
うちは過疎ブログだけど、岳霊珊たん萌えの人はもしかしたらこの記事を見たことがあるのかな。

「岳霊珊」で検索する人がまずほとんどいないんだけどな!

というわけで、今回は「笑傲江湖」シリーズ第二弾。林平之のことを書こうと思う。

……岳霊珊よりもっと需要なさそう。

例によって小説版の話。映像化作品のことは知らない。

「笑傲江湖」は、主人公がなかなか出てこない。第一巻だけ読んだら、林平之が主人公のようにしか見えない。
序盤では完全に林平之に感情移入しながら読んでいたので、視点が主人公の令狐冲に移動したあとも、林平之のことがずっと気になっていた。

林平之は金庸作品には珍しい(らしい)中性的な美少年キャラ。そして正義感が強い……はずだった。それが、どうしてあんなに変わってしまったの。
悲しかったよ。岳霊珊と幸せになって欲しかったよ。

作中では、さんざん男を見つめがないと言われていた(ような記憶がある)岳霊珊。
でも、私は岳霊珊の気持ちわかるよ。そりゃあ若いイケメンの方がいいに決まってるじゃない。令狐冲って、岳霊珊よりかなり年上みたいだし。

「笑傲江湖」は一応ハッピーエンドなんだけど、私にとってはあまりハッピーじゃなかったかもしれない。令狐冲や任盈盈よりも、岳霊珊や林平之のほうが好きだったから。

林平之はあんなに一途に思ってくれる岳霊珊を殺したクズ野郎なわけだけど、これ林ちゃんの気持ちになってみると、どうだろう。

両親を失い、信頼していた師匠にも裏切られた。誰も信じられなくなって、絶望していた。結婚する直前に去勢したのだって、悲壮な決意のはずだ。
そして、捻じ曲がってしまってもしょうがないくらいの経験を確かに彼はしているんだよな。

で、岳霊珊のことも信用できなくなっていた。父親とグルになってだましているとしか思えなかったんだろうな。
だから邪険に扱って、殺した。可愛さ余って憎さが百倍。
岳霊珊の本当の気持ちを知っていたら、こんなことにならなかったんじゃないかな。だからといって許されるわけじゃもちろんないけど。

林平之と二人きりで何度も密会してて、最後には結婚までしたのに、岳霊珊は処女のままお亡くなりになった。
もしかして、金庸先生って処女厨?
金庸作品は二作品しか読んでいないけど、日本のヲタクに似たメンタリティを少ーし感じたのでちょっとそう思ってしまった。


ヘンリー8世とエドワード6世

2014年03月25日 | 小説

前の記事で小説「ブーリン家の姉妹」の感想を書いた。
この小説の題材になっているヘンリー8世といえば、6人もの妻をとっかえひっかえして、いらなくなったら処刑したエロ鬼畜王だ。

腹心の部下なんかでも、ちょっと気に入らなくなったらすぐ殺す。
お気に入りだったクロムウェルも殺された。処刑するとき、わざと未経験の処刑人を雇って、苦しんで死なせるようにしたらしいけど、むごい。

強烈に嫌な奴なんだけど、高校生の頃世界史で習って一番インパクトが強かった王様がこのヘンリー8世。嫌いなんだけど気になる存在ではある。

そう言えば、「王子と乞食」の序盤も、ヘンリー8世時代の話だった。
主人公の王子は、3番目の妻ジェーン・シーモアとの間に生まれたエドワード6世。
最初はすごくワガママで嫌な子供なんだけど、宮廷の外の世界を見て変化していく、というお話。そりゃ親父があれじゃあクソガキにもなりますわな。

親切にしてくれた善良そうな一般市民女性が火刑に会うのを主人公が目の当たりにする、というショッキングなシーンもあった。
児童文学と思って甘く見ていたのでダメージでかかった。インパクトが強すぎて今でも忘れられない。

いろいろ経験を積み、人間的に成長して戻ってきたエドワードが立派な王になる、というところで物語は幕を閉じる。
ハッピーエンドに見えるけど、史実のエドワード6世は15歳くらいで早世してしまうことを知って、なんだか悲しい気持ちになったのを覚えてる。


「ブーリン家の姉妹」感想

2014年03月24日 | 小説

フィリッパ・グレゴリーの「ブーリン家の姉妹」を読んだ。

アン・ブーリンは割と嫌な女として描かれているけど、私はこのアン、嫌いじゃない。というより好きかもしれない。
アンはとても頭が良くて気性が激しくて、男性に従順ではない女性だ。意地悪で狡猾なんだけど、虚勢を張りながらも苦悩しているさまがものすごく伝わってくるし、彼女の末路を知っているだけに哀れさのほうが勝る。

それよりも、ヘンリー8世に本気で嫌悪感が湧いた。あまりにも自己中で。
でも、この描写でもまだ控え目なほうかもしれない。ヘンリーはかなりたくさんの人を処刑してきたけど、そのことについてはわりとさらっと流してあるから。史実の彼はもっと残虐で嫌な奴だったんじゃないかな。

面白い小説なんだけど、読んでいてだんだんやりきれない気持ちになってくる。結末はアレだし、人間の汚さが嫌というほど描かれていて。家の繁栄のために一族の娘を利用するだけ利用しておいて、立場が危うくなったらポイ捨てする親戚一同とかね。

アンは苦労して苦労して、何年もかかってやっと王妃の座をつかむけど、全く幸せにはなれなかった。それどころか、毎日不安に苛まれ、ストレスを溜める日々が続く。
ことさら偉そうに振る舞ったのも、その憂さ晴らしのためだろう。それでまたどんどん味方を減らしていくという悪循環。

幸せそうな人がほとんど出てこないんだよな。宮廷の人たちは、我侭で傲慢な王のご機嫌取りに終始している。ちょっと機嫌を損ねれば首が飛ぶから日常会話も命懸け。

映画版も見たけど、こっちはヌルかった。登場人物がみんないい人すぎてビックリ(ドロッドロだった原作と比べてのお話)。でも、これはこれで全然別物として楽しめたかな。

長い原作なら、映画版を思い切って別物にするのもアリだと思う。「ハリー・ポッター」なんて、原作に忠実にしようとしすぎて映画的なテンポが失われているように感じたから。

ただし、ドラゴンボールの改変は許せん。


「ブーリン家の姉妹3 宮廷の愛人」感想

2014年01月31日 | 小説

エリザベスとダドリーにひたすらイライラし、ダドリーの妻エイミーがひたすら可哀想な話。

エイミーは誠実な人なのに、ダドリーみたいなロクデナシのためにいろいろ思いつめてしまうのが切ない。一度は毅然とダドリーに反旗を翻して、ダドリーが唖然となる。ざまあと思ったんだけど、結局はまた元に戻ってしまう。

ダドリーはエイミーを何も考えていないバカな女だと思っていたんだけど、本当は違った。夫と違う意見を持っているといろいろ問題があると思って黙っていただけだった。こういうの、現代でもありそうだよな。

ダドリーが本当に嫌な奴でな。傲慢で、自己中で。農民の仕事をものすごく見下してるけど、彼らが畑を耕さなかったら、こいつが食うものだって何もなくなるのにね。顔以外にこいつ何かいいところあるんだろうか。
前作(愛憎の王冠)ではもう少しマシな人っぽく見えたんだけど、こいつに憧れてるハンナの目を通して描かれていたからなんだろうなあ。

セシルは狡猾で冷酷だけど、本当に国と女王のためを思って行動している。ダドリーをはじめ大概の側近は私利私欲にまみれているけど、彼は違う。ときには耳の痛いことを言って女王を諌めたりもする。こういう人材は貴重だ。ダドリーはいらん。
このセシルとダドリーの二人が、表面上はお互い愛想良く振舞いながら、内心では火花をバチバチ散らしているところが怖い。けど面白い。

エリザベスは、ちょっと無能っぽく描かれすぎな気もしないでもない。性格は悪くても一向に構わないんだけど、あれだけ名君として名高い(多分)人なんだからもうちょっとこう……。
若さ故の未熟さ、なのかなあ。年取ったら変わるんだろうか。