私は夏目漱石の「坊っちゃん」が大好きだ。「坊っちゃん」の映像化作品をテレビで放送するとなれば、見ないわけにはいかない。このドラマ化の話を夏頃に聞いてすぐにこんな記事を書いたくらいには注目していた。
昨日、twitterのトレンドに「坊ちゃん」が入ってたね。間違える人多いけど、正しくは「坊っちゃん」ね。
坊っちゃん、二宮和也で大丈夫かなってちょっと心配してたんだが、うん、やっぱりね。ちょっと威勢の良さが足りないな。気性が激しそうには見えない。穏やかそうに見えちゃう。
二宮って江戸っ子って聞いてからちょっと期待してみたけど、べらんめえ口調でもなかったし。
見た目に関しては、原作のイメージからそれほど離れているとは思わない。坊っちゃんは原作を読んでいない人からは長身で体格の良い男臭い外見だと誤解されがちだけど、実際は逆。小柄で線の細いタイプ。顔もどちらかと言えば優男系、あるいは少年っぽい感じなんではないかと思う。だから気性が荒いわりに生徒に舐められるんだ、多分。
というわけでとりあえず「小柄」という条件はクリアしてたが、それ以外はうーん。
坊っちゃんのべらんめえ口調もそうだし、生徒たちも方言で喋ってなかったな。「なもしじゃないぞな、もし」とか言ってほしかったのに。
まあその辺は、かなり気をつけないと地方の人をバカにする描写になるから自重したのかもしれない。「坊っちゃん」の原作自体、主人公が明らかに松山の人たちを蔑視していて、大好きな小説ではあるけどその部分はちょっと気になるからな。
若干イメージと違うとは言っても、坊っちゃんはまだいい。一番合ってないと思ったのは古田新太の山嵐。山嵐はあんなおっさんじゃないやい。もっと若いんだよ。若くてデカくてゴツいの。
坊っちゃんも原作では20代前半だから、二宮じゃちょっとトウが立ってるかなと思ったけど、山嵐と比べたらそんなの可愛いもんだった。
逆にすごくピッタリだなと思ったのは、及川光博の赤シャツ。キザったらしくてネチネチして嫌味な役がとってもはまっていた。演じている本人もノリノリで楽しそうに見えた。
校長や野だいこも、まあまあ合っていたかな。野だいこが赤シャツに従順なばかりじゃなくなっていくところは、ドラマオリジナルだけどすごく良かった。
山本耕史のうらなりくんは、最初見たときイメージと違うなと思ったんだ。だけど話が進んでいくにつれ、これはこれでいいと思えるようになった。オドオドして自信なさげな振る舞いがまさに「うらなりくん」で、演技次第でなんとでもなるんだなと改めて思わされた。
山本耕史、結婚に至ったエピソードがもろにストーカーでドン引きしたけど、やっぱり役者としては嫌いじゃないな。でも赤シャツ役をやったらもっとはまっていたんじゃないかとは思う。
マドンナに関しては、イメージに合ってるも合ってないもないんだよな。マドンナって映像化作品ではいつも出番が多いよね。でも原作では完全な脇役で、「長身の美人」であるという以外にはっきりした情報はないから。坊っちゃんと直接言葉を交わすシーンもなく、チラッと後ろ姿を見るだけ。主人公はマドンナの行動を伝聞で知っているに過ぎず、実際はどんな人柄なのかもよくわからない。
ただ、原作ではうらなりくんと相思相愛ではなかったことは確かだ。冴えないうらなりくんに愛想を尽かして、喜んで赤シャツと交際しているような感じだった。
総合的に見ると、山嵐に関してはまるで納得いってないし坊っちゃんもちょっと……って感じではあるものの、他は良かった。
後半のストーリーは原作とは大分違うけど、いい改変の仕方だった。うらなりくんのことが好きでアグレッシヴなマドンナも、生徒たちや野だいこが坊っちゃんに感化されていくところも。特に終盤の赤シャツと生徒たちとのやり取りにはスカッとした。
あと、これは完全に余談なんだけど、「牙狼〈GARO〉-GOLD STORM- 翔」のガルド(中島広稀)が生徒の中にいたね。
生徒たちは全員名前もなくてモブ同然ではあったけど、一応その中では一番目立っていたかな。赤シャツに「黒板にいたずら書きをした奴は名乗り出ろ」と言われて真っ先に立った子。
ガルド、坊主頭似合ってるな。そしてやっぱり林遣都に似てるな。「坊っちゃん」に林遣都が出演していると勘違いする人、いそう。私は一時期この二人の区別がつかなかったから。
小柄だし、あと三年くらいしたら坊っちゃん役が似合うようになりそうな気がする。少なくともテレビでは実際に演るのはまず無理だとは思うけどね。知名度の問題もあるし。