川柳・ボートっていいね!北海道散歩

川柳・政治・時事・エッセイ

むかしと今

2008年02月08日 | 川柳
               尾 藤 川 柳

        役人の子はにぎにぎをよく覚え   タル1

 たとえば、徳川三百年間に培養された役人の体質を
          そのまま受け継いでいるような今回の社会保険庁問題。

        社保庁で行方不明になる老後    小針準平

        弱り目に年金祟り目の介護     石島健治

        出しかけた離婚届を引っ込める   斧の小町

        迷子札貼って納める保険料     高梨 満

        内閣が向こう一年さがしもの    白石 洋

        占いに近い年金相談所       中村義平

        やっぱりが付くと社保庁らしくなる 杉山太郎

          (ともに尾藤川柳選<よみうり時事川柳>)

 川柳の眼は、高所にあってぬくぬくとしているような対象には容赦なく批判の矛先を向けますが、自分と同じ地平で真剣に生きようとしている仲間たちには、常に温かい視線を注ぎます。

          子ができて川の字なりに寝る夫婦    タル1

 も、よく眼の利いた描写ですが、これとは反対に深刻な現代をとらえた
                         パロディーがあります。

          子を端に預金を中に寝る夫婦   名和れい

 これはアジアの子を対象にした「将来は親の面倒を見るか」というアンケートの結果、「見ない」という回答が日本の少年に最も多く、一方、頼りにするのは子どもより預金という親側の回答も踏まえての句ですが、ここでは笑いの質がまったく入れ替わっています。

       川柳の笑いも、時代とともに複雑化しているということです。
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川柳の眼

2008年02月08日 | 川柳
               尾 藤 三 柳

          駿河町畳の上の人通り   タル初

 駿河町は一町が越後屋。のちに三井呉服店から三越百貨店(デパート)になりました。それにしても「畳の上の人通り」とはうまいモノの見方で、これが普遍的な川柳の眼です。

        素一歩で女房は越後屋へ上がり  タル5

 わずかな所持金(「素一歩」は万札一枚ぽっきりというほどの意味」)で、堂々と越後屋へ上がる大胆さはさすが女で、男はただあきれて見ているばかりです。

      どっからか出して女房は帯を買い   タル5

 ヘソクリは今も昔も女の特技で、ここでは宵越しの金が確実に太っているのです。
これらの風景が読者の共感を得るのも、すべて作者の「眼の働き」です。

       伊勢丹と合併が噂されている現代の句では、

    三越と伊勢丹が着るペアルック    箱根伝之介
    百貨店ふたつ足しても百貨店     小野崎帆平

 などという句が現れています。

 様々な時代、さまざまな状況に出遭いながら、この小さな文芸が生き続けてこられたのは、いつの場合も弱者の側に立って社会の連帯を生み出し、また、庶民の率直な思いを訴えて、ひるむことのない雑草の逞しさがあったからでしょう。
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