さくら

日本はもうすぐ　さくら咲く季節だろう。
私は、海外に２５年以上住んでいるので、目にまぶしい桜の散る景色も　久しく見ていない。
雨が降ると、さくらは一気に散る。
そのあと、花びらのじゅうたんができて、その上を歩くときは、気が引けるものだった。
そんな記憶も　幼少時代のものだから、今から４０年も前のさくらの花だ。

東京では、御殿山というところに住んでいた。
そう品川と五反田の間にある地域だ。
私は、御殿山に残る桜並木を歩くのが好きだった。たぶん、いまでもあるだろう。
あれから、すでに　３０年近い時間が過ぎ去ってしまった。

今年の咲く花も、あのときに咲いていた花も　同じように見えるだろうが、それは　同じように見えるだけで別のものだ。
あのときに桜並木の下を歩いていた若者であった私と、今年の桜並木の下を歩くであろう同じ年頃の若者は、もちろん、別のものだ。

ただ、時間がこうして残酷に過ぎ去り、私は、そのなかでどこか置き去りにされ、気がつくと　シドニーにいる。

日本の国債の借金が多すぎるために、将来の見通しは暗いのだそうだ。
それは、イギリスのテレグラフという三流紙の見通しなので、取るに足らない話だと一笑に付して　受流しても良いが、しかし、日本の政府がきちんと将来の展望を立てることができたなら、もう少しマシな見立てをしてくれるはずだ。

日本の国の強みと弱み、そして機会と脅威をきちんともう一度確認して、分析をもとに、科学的なアプローチで未来を築かなければならないのに・・・