恩師のご著書「講演集」より
講演集、 二
東京・沖縄講演のお土産話――懺悔と告白
先の続き・・・
沖縄へ来てほしいと招いていただいた時、
ほんとうならご遠慮させていただこうと思っておりましたが、
しかし自分のありのままの姿を見てもらわなくてはいけないと思って、
沖縄へ寄せてもらいました。
向こうへ着きますと、
ホテルの畳の部屋で皆さんが何人か雑魚寝でお休みになっていました。
私たち大阪から行きました四名のうち、
K先生と私の二人は大きい部屋に入れていただき、
あとの二人は別に一部屋頂いて泊めていただいたのです。
私に部屋へ案内して下さった方が、早速「先生、これを見て下さい」と言って
病状を書いたものを持ってこられました。
五十八歳の男性の方です。
その方が肺癌でもう二、三か月の命とお医者さんから宣告されているそうですが、
ご本人が知ると生きる希望を失い、自殺する危険性があるから、
絶対に秘密にしなさいというお医者さんの指導で、
奥さんもそれをかくしてご主人に分からないように努めておられたとのことです。
ところが、福岡に癌専門のよい病院があるから、
沖縄から福岡へ患者さんを送ることになったそうですが、
ご本人は癌ということを聞かされていませんから、
「なぜ私が福岡へ行かなくてはいけないのか」と言われる。
「行ってもらわなくてはいけません」「どうしてか」というやりとりがあって、
私が沖縄へ行かせてもらう前日の晩に、
とうとう「実はお医者さんから癌でこれだけの寿命と言われました」と奥さんが
ご主人に言ってしまったのです。