ジェットエンジンの技術(15)
第18章 第2世代(1970年代)の民間航空機用エンジン
この時代の民間航空機は超大型の全盛期でジャンボジェットと呼ばれたボーイング747、ロッキード L-1011 トライスターとマクドネル・ダグラスDC-10 の三つ巴の競争の時代であった。それらの機体への搭載エンジンは、米国のGEとP&W、英国のRRに限られ、その3社独占体制は、これ以降現在も続いている。エンジンは、それぞれCF6、JT9D,RB211シリーズで、頻繁に改造型や推力増強、または敢えて推力を下げたエンジンなどが開発された。ここでは、CF6シリーズに限って述べることにする。後述するように、民間航空機用エンジンは、その競争の激しさから、最終的には同じ性能のエンジンになってしまう宿命なのだからである。
18.1 大型エンジンのシリーズ化
TF39の民間用として開発されたCF6-6は、マクドネル・ダグラスDC-10に最初に搭載され、1971年8月にサービスを始めた。単段のファンとブースター段を5段の低圧タービンが駆動、16段の高圧軸流圧縮機を2段の高圧タービンで駆動する形式で、圧縮比は24.3であった。ファンの直径は86.4in(2.19m)で、41500lbの推力を発揮した。さらに後年、後継としてCF6-50シリーズを、推力を46,000-54,000lb(205 to 240kN)に増強して開発を続けた。
また、エアバスA300にも採用され、1971年にエールフランスがローンチ・カスタマーになり、さらに1975年にはKLMが最初のCF6-50エンジンを搭載したボーイング機の発注を行った。さらにCF6ファミリーは、CF6-80へと発展することになった。高圧圧縮機は14段となり、2段減らすことに成功した。CF6シリーズの寿命は飛び抜けて長く、2000年代になっても、なお改良型が開発された。それらの中には、全日本空輸がボーイング747SR(国内便のショートレンジ)専用として推力を落としたCF6-45も含まれる。また、他の派生型として産業用と船舶用に開発され、LM6000シリーズと称して高速船舶や艦船に多く搭載されている。
このように、一旦開発された新型エンジンは、その後数十年間に亘って改造がすすめられることが常態化した時期でもある。このことから、以後のエンジンでは、派生型への変更が容易になる工夫が、設計当初から基本設計に盛り込まれることになった。エンジンの開発費を単独エンジンだけで回収することは、ほとんど不可能であり、エンジン会社は派生型で資金回収を図るビジネスモデルを構築せざるを得なかった。そのために、新規開発エンジンの受注を、大きなエアラインから得ることへの競争が、ますます激しくなった。
最も多く使われたCF6シリーズのエンジンの例を以下に示す。
CF6-6 の搭載機;DC10-10
CF6-50の搭載機;AirbusA300B、DC10-15/-30、KC-10、Boeing747-200、747-300
CF6-80Aの搭載機;AirbusA310-200、Boeing 767-200
CF6-80C2の搭載機;AirbusA300-600/R/F、A310-200/-300、
Boeing 767-200/200ER、767-300/-300ER、767-400ER、E-767/KC-767、747-300、747-400/-400ER、MD-11、C-5M 、
川崎 C-2
CF6-80E1の搭載機;AirbusA330-200/-300、A330
最大出力(Lb.);41,500~72,000。高圧圧縮機の段数;14段~16段、バイパス比;4.24~5.92。これらのエンジン仕様は幅広く変化をしており、50年以上にわたって派生型が使われ続けている。
18.2 国内の状況
一方、日本では純国産エンジンの研究の機運がたかまり、政府主導の大型プロジェクトとして進められることになった。FJR710は、日本の独自技術のみによって研究された高性能ターボファンエンジンである。1971年から2期に分け合計10年間をかけて、旧通商産業省(経済産業省)工業技術院の大型プロジェクト制度の下に研究開発され、推力5トン(12000lb)、燃料消費率0.34、バイパス比6を目指した。
この研究は、第一期1971-75年度で総開発費67億円、第二期1976-81年度で、総開発費185億円(当初、その後減額されて130億円)として行われた。技術面の詳細については、後に述べる。
図18.1 FJR710 / 20 (IHI提供)
第18章 第2世代(1970年代)の民間航空機用エンジン
この時代の民間航空機は超大型の全盛期でジャンボジェットと呼ばれたボーイング747、ロッキード L-1011 トライスターとマクドネル・ダグラスDC-10 の三つ巴の競争の時代であった。それらの機体への搭載エンジンは、米国のGEとP&W、英国のRRに限られ、その3社独占体制は、これ以降現在も続いている。エンジンは、それぞれCF6、JT9D,RB211シリーズで、頻繁に改造型や推力増強、または敢えて推力を下げたエンジンなどが開発された。ここでは、CF6シリーズに限って述べることにする。後述するように、民間航空機用エンジンは、その競争の激しさから、最終的には同じ性能のエンジンになってしまう宿命なのだからである。
18.1 大型エンジンのシリーズ化
TF39の民間用として開発されたCF6-6は、マクドネル・ダグラスDC-10に最初に搭載され、1971年8月にサービスを始めた。単段のファンとブースター段を5段の低圧タービンが駆動、16段の高圧軸流圧縮機を2段の高圧タービンで駆動する形式で、圧縮比は24.3であった。ファンの直径は86.4in(2.19m)で、41500lbの推力を発揮した。さらに後年、後継としてCF6-50シリーズを、推力を46,000-54,000lb(205 to 240kN)に増強して開発を続けた。
また、エアバスA300にも採用され、1971年にエールフランスがローンチ・カスタマーになり、さらに1975年にはKLMが最初のCF6-50エンジンを搭載したボーイング機の発注を行った。さらにCF6ファミリーは、CF6-80へと発展することになった。高圧圧縮機は14段となり、2段減らすことに成功した。CF6シリーズの寿命は飛び抜けて長く、2000年代になっても、なお改良型が開発された。それらの中には、全日本空輸がボーイング747SR(国内便のショートレンジ)専用として推力を落としたCF6-45も含まれる。また、他の派生型として産業用と船舶用に開発され、LM6000シリーズと称して高速船舶や艦船に多く搭載されている。
このように、一旦開発された新型エンジンは、その後数十年間に亘って改造がすすめられることが常態化した時期でもある。このことから、以後のエンジンでは、派生型への変更が容易になる工夫が、設計当初から基本設計に盛り込まれることになった。エンジンの開発費を単独エンジンだけで回収することは、ほとんど不可能であり、エンジン会社は派生型で資金回収を図るビジネスモデルを構築せざるを得なかった。そのために、新規開発エンジンの受注を、大きなエアラインから得ることへの競争が、ますます激しくなった。
最も多く使われたCF6シリーズのエンジンの例を以下に示す。
CF6-6 の搭載機;DC10-10
CF6-50の搭載機;AirbusA300B、DC10-15/-30、KC-10、Boeing747-200、747-300
CF6-80Aの搭載機;AirbusA310-200、Boeing 767-200
CF6-80C2の搭載機;AirbusA300-600/R/F、A310-200/-300、
Boeing 767-200/200ER、767-300/-300ER、767-400ER、E-767/KC-767、747-300、747-400/-400ER、MD-11、C-5M 、
川崎 C-2
CF6-80E1の搭載機;AirbusA330-200/-300、A330
最大出力(Lb.);41,500~72,000。高圧圧縮機の段数;14段~16段、バイパス比;4.24~5.92。これらのエンジン仕様は幅広く変化をしており、50年以上にわたって派生型が使われ続けている。
18.2 国内の状況
一方、日本では純国産エンジンの研究の機運がたかまり、政府主導の大型プロジェクトとして進められることになった。FJR710は、日本の独自技術のみによって研究された高性能ターボファンエンジンである。1971年から2期に分け合計10年間をかけて、旧通商産業省(経済産業省)工業技術院の大型プロジェクト制度の下に研究開発され、推力5トン(12000lb)、燃料消費率0.34、バイパス比6を目指した。
この研究は、第一期1971-75年度で総開発費67億円、第二期1976-81年度で、総開発費185億円(当初、その後減額されて130億円)として行われた。技術面の詳細については、後に述べる。
図18.1 FJR710 / 20 (IHI提供)