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その場考学研究所:ボーイング777のエンジンの国際開発のチーフエンジニアの眼をとおして技術のあり方の疑問を解きます

メタエンジニアの眼シリーズ(146)メタ言語能力

2019年11月09日 07時06分04秒 | メタエンジニアの眼
メタエンジニアの眼シリーズ(146)
TITLE: メタ言語能力


書籍名;「メタ言語能力を育てる文法授業」[2019]
著者;秋田喜代美ほか 発行所;ひつじ書房
発行日;2019.8.8
初回作成日;R1.11.8 最終改定日;
引用先;メタエンジニアリング
 
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。



「メタ言語」とは何であろうか。日本大百科全書(ニッポニカ)の解説には、このようにある。

『高次言語ともいう。われわれはしばしば(言語を使って)言語について語る。そのとき、そこで話題とされる言語を「対象言語」とよび、それについて語るために使われる言語を「メタ言語」とよぶ。たとえば、英語の文法について日本語で語る場合、英語が対象言語、日本語がメタ言語である。また、ある形式的な記号体系を日常言語によって定式化する場合、対象言語はその記号体系自体であり、メタ言語は日常言語である。対象言語とメタ言語とは、実際上同じ言語であってもよいが、しかし、ある記号や文がそのどちらに属するものとして使われているかを明確に区別しないと、とくに論理学や意味論において奇妙な矛盾が生ずることがある。』
この場合の「メタ」の使いかたは、一つ上の次元と言えなくもないが、だからと言って視点や視野が一気に広がるものでもない。言語上の「メタ」と考えたい。

この著書もそのような感覚で書かれているように感じた。冒頭の「序」に経緯が書いてある。

『本書は、科学研究費補助金基盤研究(A)「社会に生きる学力形成を目指したカリキュラム・イノベーションの理論的・実践的研究」(2011一2013年度1;以下「イノベーション科研」)中の「基幹学習ユニツト」の1部門を成す「メタ文法プロジェクト」の研究成果に基づく研究と議論をまとめたものである。 「イノベーション科研」全体の目標としては、東京大学教育学部附属中等教育学校との連携のもとに、社会の構造転換を視野に入れた新しい公教育のカリキュラムのあり方を検討し、2019年度から順次施行される学習指導要領の改訂に対して積極的な提案を行っていこうとするものであるが、本プロジェクトは、とくに「言語力育成」をカリキュラムの達成目標に掲げ、 言語力の核としての「メタ文法能力」をいかに育成するかを研究課題とし た。「メタ文法能力」の何たるかについては後述する。』(pp.1)

つまり、英語の中等教育のあり方(カリキュラム)についての、ある一つの意見が示されている。中身についての批評は避けて、以下は「メタ」という言葉をどのように使っているかに絞って纏める。

先ずは、英語の授業について、やたらと英会話や英語の文献を読ませるのではなく、文法をしっかりと学んで理解すべきと主張している。そのことを、次のように記している。

『教育言語として日本語を活用する利点としては、さらに生徒が言語の法則性に敏感になることが挙げられる。単に日本語を足場として目標言語たる英語を習得するに留まらず、両言語の間を行き来することでそれぞれの言語には違った規則があることを学び、通常の言語運用よりもさらに高次の、いわば「メタ・レベル」から言語を客体化することができるようになるのである。』(pp.5)

 そして、その具体的な手法として「メタ文法能力」の育成を,次の様にあげている。
 
『「メタ文法能力」とは、言語を高次から観察・分析する「メタ言語能力」を文法に特化した概念である。ここで言う「文法」とは、理論言語学で言うような母語話者の脳内に理論的に存在する広義の言語能力の総体ではなく 、狭義に語彙と統語法の規則を指すものとする。ただし、本プロジェクトが指定するメタ文法能力は、かならずしも母語のみにおいて働くものではなく 、言語横断的に、外国語習得の際にも働くものであるため、この能力の育成は、英語のみなら、ほかの外国語習得能力の育成にもつながると考えられる。』(pp.5)

 第8章には、さらに明確な定義が示されている。
 
『20世紀中盤の認知革命によって、言語を脳に内蔵された知識(以下、「言語知識」と呼ぶ。最近の術語を用いれば、「内在言語(1-language)」)と捉える考えが広く受け入れられるようになったが、やがて、言語知識を対象として、高次から観察したり、分析したりする能力にも関心が向けられるようになった。本章では本書の他の章との整合性を考慮し、この能力を「メタ言語能力(metalinguistic abilities)」と称することにする。』(pp.277)

 そして、「文法」という言葉を次のように定義している。
 『「文法」とは、言語知識の総体を指すのではなく、「語彙と統語法の規則」を指す』(pp.277)

 また、「メタ文法能力」という言葉を次のように定義している。
 『言語を高次から観察・分析する「メタ言語能力」を文法に特化した概念』(pp.277)

 いずれも、「日本の英語教育では、言語横断的な文法指導を重視すべし」との結論になっている。しかし、この著書は、メタエンジニアリングに大きな示唆を与えてくれる。つまり、ここでの定義と同じ考え方で纏めると、「メタエンジニアリングの主機能」が「具体的なエジニアリングの行為を高次から観察・分析する」ということになる。
 この場合、言語の場合には過去や未来に対する広がりは、あまり認識できないのだが、具体的なエンジニアリングの行為に関する場合には、その結果が世の中にどのような影響を与えたか、また、将来どのような影響が考えられるかなど、時間的な広がりが存在する。また、空間的な広がりについても、同様なことが云える。

しからば、メタエンジニアリング能力を育てるための「文法」に代わるものは、いったい何であろうか。それが、「MECIメソッド」になるのではないだろうか。


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