メタエンジニアの眼シリーズ(145)
TITLE: メタ分析
書籍名;「メタ分析入門」[2012]
著者;山田剛史、井上俊哉 発行所;東京大学出版会
発行日;2012.10.31
初回作成日;R1.10.22 最終改定日;
引用先;メタエンジニアリング
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
副題は「心理・教育研究の系統化レビューのために」で、そのための手法を説明している。「メタ」という言葉は、工学ではあまり使われないが、人文・社会科学系では研究に欠かせないものであることが、この著書から分かる。理系でも医学は同じ状況にある。創薬や臨床医療では必須のモノのように思える。しかし、エンジニアリング万能の時代になっては、エンジニアリングもメタ的に考えなければならない。
「メタ分析」という言葉は、1976年にG.V.グラスの「Primary, secondary and meta-analysis of research」で登場した。しかし、その手法はそれ以前からあったという。いくつかの論文を系統的に調べて、統計的な結論を得る手法であり、文献検索から始まる。
このように書くと、メタエンジニアリングとの関係が薄いようだが、実際のプロセスはまさにメタエンジニアリング的、すなわちMECIプロセスに沿っている。しかも、結論は純数学的に得ることを主張している。
第1章では、メタ分析を次のように定義している。
『メタ分析とは、同一のテーマについて行われた複数の研究結果を統計的な方法を用いて統合すること、すなわち、統計的なレビューのことである。』(pp.1)
つまり、1次研究に対する、2次研究の位置づけになる。人文科学分野では、2次研究を経ないと、一般には認められ難いようだ。
データ重視であり、『データを用いない理論研究や質的な事例研究をメタ分析の対象にすることはできない。』(pp.1)と断言をしている。系統的なレビューの中の統計解析の部分のみを指している。つまり、単一の研究では決定的な結論を主張することは無理で、標本誤差を減らして正確な推論を導くための必須の手法との位置づけになっている。
目次はその実行プロセスに沿っており、続いて数例が示されている。その前に、「記述的なレビュー」と「メタ分析」の比較が詳細に語られ、メタ分析は記述的レビューの不足点を補う位置づけとしている。
具体的な手順は以下であり、まさにMECIプロセスになっている。( )内は追記
『手順1;メタ分析の問題を定義する(Mining)
手順2;メタ分析の対象となる文献を探す(Exproaring)
手順3;コーディングを行う(Exproaring)
手順4;研究の質を評価する(Converging)
手順5;統計解析を行う(Converging)
手順6;統計解析結果を解釈する(Converging)
手順7;メタ分析の結果を公表する(Implementing)』(pp.21)
このように見てゆくと、MECIプロセスももう少し細かく分けなければ、具体的な手順にはならないように思える。
記述された統計手法の具体的な数式等は省略して、事例の一つを取り上げる。「個人主義と集団主義を再考する」(2002)で、ヨーロッパ系アメリカ人が、他のどの社会よりも個人主義的だという主張を検証している。
アメリカ人と世界各地の民族との比較、アメリカ国内の人種差の比較を別個に行った結果が示されている。ほぼ常識の範囲内なのだが、こんな結論もある。
『「常識」に反するのが日本人との比較である。絶対値は大きくないものの有意な正の値であり.アメリカ人は日本人よりも集団主義的だという結果であった。』(pp.225)
また、『ユニークさやプライバシーに関する項目を含む尺度を用いて個人主義を測定した研究の方が.そうでない尺度を用いた研究よりも,I1米の個人主義の違いが大きいことがわかる.とくに,ユニークさについては.それらの項目を含まない尺度を使った研究では、日本人の個人主義がアメリカ人を上回るという結果が得られている。(ユニークさに関する項目例 :私は多くの点でほかの人と異なり、ユニークです。プライバシーに関する項目例:私はフライバシーを好みます)』(pp.225-226)
確かに、このような聞き方をされた場合には、日本人はYesと答える割合が多いように思う。
「メタ」という言葉の使い方にもいろいろあるが、多様化の時代になって、どの分野でも今後重要視されなければならないことは一致しているように思う。
TITLE: メタ分析
書籍名;「メタ分析入門」[2012]
著者;山田剛史、井上俊哉 発行所;東京大学出版会
発行日;2012.10.31
初回作成日;R1.10.22 最終改定日;
引用先;メタエンジニアリング
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
副題は「心理・教育研究の系統化レビューのために」で、そのための手法を説明している。「メタ」という言葉は、工学ではあまり使われないが、人文・社会科学系では研究に欠かせないものであることが、この著書から分かる。理系でも医学は同じ状況にある。創薬や臨床医療では必須のモノのように思える。しかし、エンジニアリング万能の時代になっては、エンジニアリングもメタ的に考えなければならない。
「メタ分析」という言葉は、1976年にG.V.グラスの「Primary, secondary and meta-analysis of research」で登場した。しかし、その手法はそれ以前からあったという。いくつかの論文を系統的に調べて、統計的な結論を得る手法であり、文献検索から始まる。
このように書くと、メタエンジニアリングとの関係が薄いようだが、実際のプロセスはまさにメタエンジニアリング的、すなわちMECIプロセスに沿っている。しかも、結論は純数学的に得ることを主張している。
第1章では、メタ分析を次のように定義している。
『メタ分析とは、同一のテーマについて行われた複数の研究結果を統計的な方法を用いて統合すること、すなわち、統計的なレビューのことである。』(pp.1)
つまり、1次研究に対する、2次研究の位置づけになる。人文科学分野では、2次研究を経ないと、一般には認められ難いようだ。
データ重視であり、『データを用いない理論研究や質的な事例研究をメタ分析の対象にすることはできない。』(pp.1)と断言をしている。系統的なレビューの中の統計解析の部分のみを指している。つまり、単一の研究では決定的な結論を主張することは無理で、標本誤差を減らして正確な推論を導くための必須の手法との位置づけになっている。
目次はその実行プロセスに沿っており、続いて数例が示されている。その前に、「記述的なレビュー」と「メタ分析」の比較が詳細に語られ、メタ分析は記述的レビューの不足点を補う位置づけとしている。
具体的な手順は以下であり、まさにMECIプロセスになっている。( )内は追記
『手順1;メタ分析の問題を定義する(Mining)
手順2;メタ分析の対象となる文献を探す(Exproaring)
手順3;コーディングを行う(Exproaring)
手順4;研究の質を評価する(Converging)
手順5;統計解析を行う(Converging)
手順6;統計解析結果を解釈する(Converging)
手順7;メタ分析の結果を公表する(Implementing)』(pp.21)
このように見てゆくと、MECIプロセスももう少し細かく分けなければ、具体的な手順にはならないように思える。
記述された統計手法の具体的な数式等は省略して、事例の一つを取り上げる。「個人主義と集団主義を再考する」(2002)で、ヨーロッパ系アメリカ人が、他のどの社会よりも個人主義的だという主張を検証している。
アメリカ人と世界各地の民族との比較、アメリカ国内の人種差の比較を別個に行った結果が示されている。ほぼ常識の範囲内なのだが、こんな結論もある。
『「常識」に反するのが日本人との比較である。絶対値は大きくないものの有意な正の値であり.アメリカ人は日本人よりも集団主義的だという結果であった。』(pp.225)
また、『ユニークさやプライバシーに関する項目を含む尺度を用いて個人主義を測定した研究の方が.そうでない尺度を用いた研究よりも,I1米の個人主義の違いが大きいことがわかる.とくに,ユニークさについては.それらの項目を含まない尺度を使った研究では、日本人の個人主義がアメリカ人を上回るという結果が得られている。(ユニークさに関する項目例 :私は多くの点でほかの人と異なり、ユニークです。プライバシーに関する項目例:私はフライバシーを好みます)』(pp.225-226)
確かに、このような聞き方をされた場合には、日本人はYesと答える割合が多いように思う。
「メタ」という言葉の使い方にもいろいろあるが、多様化の時代になって、どの分野でも今後重要視されなければならないことは一致しているように思う。
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