メタエンジニアの眼(174)
TITLE: 戦略は歴史から学べ
書籍名;戦略は歴史から学べ[2016]
著者;鈴木博毅
発行所;ダイヤモンド社 発行日;2016.3.25
初回作成日;R2.3.10

このシリーズは企業の進化のプロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。
『』内は,著書からの引用部分です。
著者は、既に多くの書籍を発行しているビジネス戦略、組織論を主とする企業コンサルタント。副題は「3000年が教える勝者の絶対ルール」で、古代ギリシャに始まる、代表的な戦いの勝利の原因を探っている。歴史が証明しているので、戦略としての基本的な考えには、間違いが無いと思われる。
その中からいくつかを紹介する。
① 強みだけでは勝てない。強みを活かせる状況をつくる
歴史上の事例は、ペルシャ帝国とギリシャ都市国家の戦争。BC490の「マラトンの戦い」で、ギリシャ軍は2倍のペルシャ軍に勝った。ペルシャ軍の強みは、騎兵と弓部隊、ギリシャ軍の強みは重装備の歩兵。ギリシャ軍は、狭い場所での白兵戦にもちこんで勝った。
10年後の「第2次ペルシャ戦争」では、ペルシャ軍は10倍の兵力。ギリシャ軍は陸戦を放棄して、海戦にもちこんだ。「サラミスの海戦」で、ギリシャ軍は突撃型の強固な船体を造り、大船団に突撃し、勝利した。
⇒この戦略の適用事例は、富士フィルムの写真用からの撤退
⇒時代の変化や競合との関係により、強みの活用方法は変わる
② 機会を捉えることに焦点を合わせる
「ガリア戦記」の中のシーザーの言葉、『成功は戦闘そのものにではなく、機会を上手くつかむことにある』(pp.48)
シーザーの機会活用の実践方法は、次の3つ
・戦場に最速で到着し、優位を占める
・必要となる物資を押さえる
・通過する場所に、強固な砦を築く
⇒ビル・ゲイツのスピード
⇒ハードの普及を見越して、ソフト作成に先回りする
③ 組織の最も弱い部分が、全体の結果を決める
豊臣秀吉は、小牧・長久手の戦いで家康に敗れ、天下取りが危うくなった。彼は、総力戦を避けて、家康陣営の最も弱い部分を次々に落とした。
⇒鎖理論、鎖は最も弱いところで切れる
⇒制約理論、生産性の全体成果は、ボトルネックの解消にかかっている
④ 適切なベンチマーキングとその応用力
秋山信之の海戦の方法。彼はアメリカで戦法を徹底的に学んだ
⇒ベンチマーキングの4分類(pp.212)
・戦略かプロセスかどちらに焦点を合わすのか
・組織のどのレベル(トップか下層か)に焦点を合わすのか
・マーキング相手は、自社内、業界内、他業界、世界レベルのどれか
・目的は何か、ビジネス変革か、業績評価か
読んでいくうちに、一つの言葉が浮かんだ。孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」が、全てに当て嵌まってしまう。要は、彼我の中身の知り方についての問題になっている。そこで思いつくのは、太平洋戦争中の日本と米軍の航空機の使い方の違い。
① ゼロ戦対グラマン
始めはグラマンの連敗だった。米軍は、南方で接収した機体を、本国の一か所の研究所に集めて、弱点を徹底的に調べた。しかし、ゼロ戦ほどの極端な軽量化は、パイロットの生命を尊重する米軍には受け入れられない。そこで考えた戦略が、高空の編隊からの急降下爆撃だった。
そのためには、均一な性能を持つエンジンが必要ということで、品質管理の方法を色々考えだして、量産に適用した。員性能がバラバラだった日本の戦闘機は、個人戦には強いが、団体戦には弱かった。

② 最近「破壊された日本軍機」という本を読んだ。米軍が詳細な記録を残しており、その管理者が書いた。総数は13000機にのぼる。驚いたのは、その多くは特攻機への改造が進んでいたということ。つまり、本土上陸が見えてくると、練習機も含めたすべての航空機を特攻機に改造して、輸送艦から上陸用舟艇に乗り移る瞬間をとらえて、特攻機による総攻撃を計画していたことが、米軍にはわかっていた。そこで、無理な上陸作戦は止めて、大規模空襲作戦に切り替えたとある。これで、どれほどの米兵が死なずに済んだか。まさに、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」だった。
日本は、当時の軍部は勿論だが、現代の企業でも、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」をそれほど重要視しているようには見えないものが多い。「高い技術力を使って、良いものを作れば売れる」主義のままのように見えるのだが。
TITLE: 戦略は歴史から学べ
書籍名;戦略は歴史から学べ[2016]
著者;鈴木博毅
発行所;ダイヤモンド社 発行日;2016.3.25
初回作成日;R2.3.10

このシリーズは企業の進化のプロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。
『』内は,著書からの引用部分です。
著者は、既に多くの書籍を発行しているビジネス戦略、組織論を主とする企業コンサルタント。副題は「3000年が教える勝者の絶対ルール」で、古代ギリシャに始まる、代表的な戦いの勝利の原因を探っている。歴史が証明しているので、戦略としての基本的な考えには、間違いが無いと思われる。
その中からいくつかを紹介する。
① 強みだけでは勝てない。強みを活かせる状況をつくる
歴史上の事例は、ペルシャ帝国とギリシャ都市国家の戦争。BC490の「マラトンの戦い」で、ギリシャ軍は2倍のペルシャ軍に勝った。ペルシャ軍の強みは、騎兵と弓部隊、ギリシャ軍の強みは重装備の歩兵。ギリシャ軍は、狭い場所での白兵戦にもちこんで勝った。
10年後の「第2次ペルシャ戦争」では、ペルシャ軍は10倍の兵力。ギリシャ軍は陸戦を放棄して、海戦にもちこんだ。「サラミスの海戦」で、ギリシャ軍は突撃型の強固な船体を造り、大船団に突撃し、勝利した。
⇒この戦略の適用事例は、富士フィルムの写真用からの撤退
⇒時代の変化や競合との関係により、強みの活用方法は変わる
② 機会を捉えることに焦点を合わせる
「ガリア戦記」の中のシーザーの言葉、『成功は戦闘そのものにではなく、機会を上手くつかむことにある』(pp.48)
シーザーの機会活用の実践方法は、次の3つ
・戦場に最速で到着し、優位を占める
・必要となる物資を押さえる
・通過する場所に、強固な砦を築く
⇒ビル・ゲイツのスピード
⇒ハードの普及を見越して、ソフト作成に先回りする
③ 組織の最も弱い部分が、全体の結果を決める
豊臣秀吉は、小牧・長久手の戦いで家康に敗れ、天下取りが危うくなった。彼は、総力戦を避けて、家康陣営の最も弱い部分を次々に落とした。
⇒鎖理論、鎖は最も弱いところで切れる
⇒制約理論、生産性の全体成果は、ボトルネックの解消にかかっている
④ 適切なベンチマーキングとその応用力
秋山信之の海戦の方法。彼はアメリカで戦法を徹底的に学んだ
⇒ベンチマーキングの4分類(pp.212)
・戦略かプロセスかどちらに焦点を合わすのか
・組織のどのレベル(トップか下層か)に焦点を合わすのか
・マーキング相手は、自社内、業界内、他業界、世界レベルのどれか
・目的は何か、ビジネス変革か、業績評価か
読んでいくうちに、一つの言葉が浮かんだ。孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」が、全てに当て嵌まってしまう。要は、彼我の中身の知り方についての問題になっている。そこで思いつくのは、太平洋戦争中の日本と米軍の航空機の使い方の違い。
① ゼロ戦対グラマン
始めはグラマンの連敗だった。米軍は、南方で接収した機体を、本国の一か所の研究所に集めて、弱点を徹底的に調べた。しかし、ゼロ戦ほどの極端な軽量化は、パイロットの生命を尊重する米軍には受け入れられない。そこで考えた戦略が、高空の編隊からの急降下爆撃だった。
そのためには、均一な性能を持つエンジンが必要ということで、品質管理の方法を色々考えだして、量産に適用した。員性能がバラバラだった日本の戦闘機は、個人戦には強いが、団体戦には弱かった。

② 最近「破壊された日本軍機」という本を読んだ。米軍が詳細な記録を残しており、その管理者が書いた。総数は13000機にのぼる。驚いたのは、その多くは特攻機への改造が進んでいたということ。つまり、本土上陸が見えてくると、練習機も含めたすべての航空機を特攻機に改造して、輸送艦から上陸用舟艇に乗り移る瞬間をとらえて、特攻機による総攻撃を計画していたことが、米軍にはわかっていた。そこで、無理な上陸作戦は止めて、大規模空襲作戦に切り替えたとある。これで、どれほどの米兵が死なずに済んだか。まさに、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」だった。
日本は、当時の軍部は勿論だが、現代の企業でも、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」をそれほど重要視しているようには見えないものが多い。「高い技術力を使って、良いものを作れば売れる」主義のままのように見えるのだが。
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