メタエンジニアの眼シリーズ(156)
TITLE: レジリエンス工学
書籍名;「レジリエンス工学入門」[2017]
① 著者;古田一雄 発行所;日科技連 発行日;2017.7.28
初回作成日;R1.12.10 最終改定日;R2.1.22
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
東日本大震災の後に、東大大学院工学系研究科が「震災後の工学は何をめざすのか」を発行し、その中で、レジリエンス工学の果たすべき使命が示された。本書は、その活動の中身を説明している。
「震災後の工学は何をめざすのか」については、以前、30年前に発行された同様の書と内容が似ており、進歩が少なく、真の再発防止に繋がるのかと批判したのだが、この書についても多くの疑問が生じてしまった。その疑問点を?―?で示した。
時代背景;
1960年までの「技術の時代」
1980年までの「ヒューマンエラーの時代」
2000年までの「社会・技術の問題」
2000年以降は「レリジエンスの時代」
?レリジエンスは太古からあった。古代中国の水行政、武田信玄などなど?
言葉の定義については、このように記されている。
レリジエンス = システムが環境の変化を吸収して機能を正常に維持する能力
レジジエンス工学 = 社会技術システムにレリジエンスを造り込むための方法論
・リスクマネジメントの限界; 従来のマネジメントの範囲を超える状況を考慮する
?従来のマネジメントの範囲は業種によって異なる。実務を知らない象牙の塔の空論?
・レリジエンスの三角形;機能不全による損害の時間積分 ⇒この面積を最小化するのが目的
?時間軸も損害軸も普遍的な定義ができない?
・レリジエンスの特性;①頑健性 ②冗長性 ③対処能力 ④迅速性
レリジエンスの基本特性;①安全余裕 ②緩衝力 ③許容度 ④柔軟性
?特性と基本特性の違いは?
?どの特性も、従来から通常のシステムの要件になっている?
・『レジリエンスは通常状態における安定運転、異常状態における事故防止、事故後における損害の最小化、災害発生後の速やかな復旧など、システムのあらゆる運用を対象とする。』(pp.15)
?工学的に見れば、全く独立して考えるべき状況を、混濁している?
?全分野を統合することの意義?
?複雑なシステムの設計を、実際に経験したことがない人たちが考えている?
・レジリエンスの実現プロセス;予期、監視、反応、学習の繰り返し(pp.20)
?あらゆる・・・、常に・・・は現実的ではない。やはり、象牙の塔を感じる。?
・自然災害とレジリエンス;
?詰まるところは、災害の再発防止対策か?
・重要社会インフラのレジリエンス;都市がどの程度のレジリエンスを有しているかの評価方法の確立
都市の全体モデルを作るところからのスタート⇒シミュレーション⇒評価
?作業量が膨大で、最終目的にかなう方法か?
・エネルギーシステムのレジリエンス向上;
不確実性下における費用便益の最適化問題(pp.77)
?既に、確立された分野で、多くの政策に取り入れられている?
読後感として残るのは、ジェットエジン設計時に導入している「FMECA」との比較だった。
① レジリエンス工学は、分野ごとに細分割されている。FMECAは、どの分野でも共通。
② 想定外が発生しても、最低限のシステムの維持を目的としているので、最悪の事態が起こってしまった時の、壊滅的な破壊を防ぐ具体的な方策を、考えて予め導入することとは異なる。
③ 「システムにレリジエンスを造り込むための方法論」なので、既存のシステムについて考え始めるが、FMECAはシステムの基本設計段階から考え始める。
④ FMECAは、損害の大きさと発生頻度について、普遍的なクラス分けと規格化が行われているが、レジリエンス工学ではそのようなことが可能か?
TITLE: レジリエンス工学
書籍名;「レジリエンス工学入門」[2017]
① 著者;古田一雄 発行所;日科技連 発行日;2017.7.28
初回作成日;R1.12.10 最終改定日;R2.1.22
このシリーズは文化の文明化プロセスを考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
東日本大震災の後に、東大大学院工学系研究科が「震災後の工学は何をめざすのか」を発行し、その中で、レジリエンス工学の果たすべき使命が示された。本書は、その活動の中身を説明している。
「震災後の工学は何をめざすのか」については、以前、30年前に発行された同様の書と内容が似ており、進歩が少なく、真の再発防止に繋がるのかと批判したのだが、この書についても多くの疑問が生じてしまった。その疑問点を?―?で示した。
時代背景;
1960年までの「技術の時代」
1980年までの「ヒューマンエラーの時代」
2000年までの「社会・技術の問題」
2000年以降は「レリジエンスの時代」
?レリジエンスは太古からあった。古代中国の水行政、武田信玄などなど?
言葉の定義については、このように記されている。
レリジエンス = システムが環境の変化を吸収して機能を正常に維持する能力
レジジエンス工学 = 社会技術システムにレリジエンスを造り込むための方法論
・リスクマネジメントの限界; 従来のマネジメントの範囲を超える状況を考慮する
?従来のマネジメントの範囲は業種によって異なる。実務を知らない象牙の塔の空論?
・レリジエンスの三角形;機能不全による損害の時間積分 ⇒この面積を最小化するのが目的
?時間軸も損害軸も普遍的な定義ができない?
・レリジエンスの特性;①頑健性 ②冗長性 ③対処能力 ④迅速性
レリジエンスの基本特性;①安全余裕 ②緩衝力 ③許容度 ④柔軟性
?特性と基本特性の違いは?
?どの特性も、従来から通常のシステムの要件になっている?
・『レジリエンスは通常状態における安定運転、異常状態における事故防止、事故後における損害の最小化、災害発生後の速やかな復旧など、システムのあらゆる運用を対象とする。』(pp.15)
?工学的に見れば、全く独立して考えるべき状況を、混濁している?
?全分野を統合することの意義?
?複雑なシステムの設計を、実際に経験したことがない人たちが考えている?
・レジリエンスの実現プロセス;予期、監視、反応、学習の繰り返し(pp.20)
?あらゆる・・・、常に・・・は現実的ではない。やはり、象牙の塔を感じる。?
・自然災害とレジリエンス;
?詰まるところは、災害の再発防止対策か?
・重要社会インフラのレジリエンス;都市がどの程度のレジリエンスを有しているかの評価方法の確立
都市の全体モデルを作るところからのスタート⇒シミュレーション⇒評価
?作業量が膨大で、最終目的にかなう方法か?
・エネルギーシステムのレジリエンス向上;
不確実性下における費用便益の最適化問題(pp.77)
?既に、確立された分野で、多くの政策に取り入れられている?
読後感として残るのは、ジェットエジン設計時に導入している「FMECA」との比較だった。
① レジリエンス工学は、分野ごとに細分割されている。FMECAは、どの分野でも共通。
② 想定外が発生しても、最低限のシステムの維持を目的としているので、最悪の事態が起こってしまった時の、壊滅的な破壊を防ぐ具体的な方策を、考えて予め導入することとは異なる。
③ 「システムにレリジエンスを造り込むための方法論」なので、既存のシステムについて考え始めるが、FMECAはシステムの基本設計段階から考え始める。
④ FMECAは、損害の大きさと発生頻度について、普遍的なクラス分けと規格化が行われているが、レジリエンス工学ではそのようなことが可能か?
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