その場考学研究所 メタエンジニアの眼シリーズ(50)
書籍名;「あきつしま大和の国」[2008]
著者;大谷幸市 発行所;彩流社 発行日;2008.2.20
初回作成年月日;H29.8.23 最終改定日;H29.10.7
このシリーズはメタエンジニアリングで「文化の文明化」を考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
1995~2007に発行された3冊の本を読んだ。著者の大谷幸市の経歴や専門分野は3冊の本には書かれていないが、過去数冊の古代史関連の本を著している。
『渦巻といえば、ケルト人を思い浮かべる人が多いと思います。ケルトの渦巻きは再生観で説明されています。』(pp.4)
著者は、この著書の中では、一回ねじって輪っかをつくる「メビウスの帯」に固執している。
『縄文土器の網目模様にメビウスの帯と同じ現象を発見しました。さらに、メビウスの帯を被った土偶を見つけました。縄文土器の網目模様とメビウスの帯は、
・螺旋を巻くことによって新しい形が生まれている。
・螺旋を巻くことによって継続性(永遠性)が生まれている。
という現象を共有しています。(別にメビウスの帯は表と裏の区別がつかない現象を持っています。縄文土器の複雑な網目模様を生み出した撚(より)紐(ひも)と絡(らく)条体(じょうたい)は螺旋を巻いています。縄文人が螺旋模様、すなわち撚紐に執着したのは、この螺旋を巻くことによって新しい形が生み出されるという過程に生命の原理を重ね合わせていたからにほかなりません。この生命誕生の原理は、古代人が考えた死と生の問題に深くかかわっています。』(pp.5)
著者は、いままでの縄文土器や銅鐸の文様に、彼らの死生観が込められていることに気づかなかったとして、
『私は、これに代わるわが国の古代史を解くキーワードとして、
1、メビウスの帯
2、しめ縄状模様
3、渦巻文
4、「xと+」形
5、円接多角形
という五つの要素を提案します。』(pp.6)
『頭部だけの小さな土偶の存在に気づきました。それは長野県大花遺跡出土の土偶(井戸尻考古館所蔵)です。この土偶は、頭に∞字形の被り物をしています。この∞字形には百八十度のねじれが認められます。これはその∞字形の被り物がメビウスの帯であることを裏付けています。』(pp.8)
さらに、中国のいくつもの少数民族に伝えられている伏義と女媧図や、東王父・西王母と伏義と女媧図が並べられている図などを例に、「泥で人形を作る」と「円と直線の文様」が古代中国に源泉があるとしている。(pp.84)
更に、二つの渦をつなげたS字渦文と逆S字渦文への発展から、その組み合わせにより、ハート形が現れることを強調している。(pp.94)
また、土偶の人は「踏ん張っている」の 多いことに注目して、
『ハート形土偶を造った縄文人は、両足を湾曲させることによって、それをみごとに再現しています。』(pp.96)としている。つまり、顔はハート形で、手と足の特殊な格好から、体全体でS字渦文と逆S字渦文を現わしているというわけである。
頭に渦巻き模様を付けた国宝の「縄文のビーナス」も、極端に大きい臀部を後ろから盛れば、まさしく同じように、体全体でS字渦文と逆S字渦文を現わしている。(pp.100)
『メビウスの帯を被った土偶を見つけました』、『この土偶は、頭に∞字形の被り物をしています。この∞字形には百八十度のねじれが認められます。これはその∞字形の被り物がメビウスの帯であることを裏付けています』の記述に興味を持ち、実物を目で確かめたくなって、近くの井戸尻考古館を訪ねた。
井戸尻は、縄文遺跡の宝庫で大賀蓮の池や、古代米の田んぼもある。毎年の収穫祭には縄文祭りが行われている興味深い場所だ。
丁度、付近の考古館が協力して「縄文の渦」の特別展の会期中で、展示内容とその説明パネルはいつもよりは充実していた。目的の土偶はなかなか見つけられなかった。売店で販売中の書籍(あのネリー・ナウマン女史が滞在中の厚手の記録書籍など)を1時間ほど見ているうちに、学芸員の方が戻り、くだんの土偶は片隅にあった。
さて、これは本当に「メビウスの帯」であろうか。かすかな疑問が残った。
書籍名;「あきつしま大和の国」[2008]
著者;大谷幸市 発行所;彩流社 発行日;2008.2.20
初回作成年月日;H29.8.23 最終改定日;H29.10.7
このシリーズはメタエンジニアリングで「文化の文明化」を考える際に参考にした著作の紹介です。『 』内は引用部分です。
1995~2007に発行された3冊の本を読んだ。著者の大谷幸市の経歴や専門分野は3冊の本には書かれていないが、過去数冊の古代史関連の本を著している。
『渦巻といえば、ケルト人を思い浮かべる人が多いと思います。ケルトの渦巻きは再生観で説明されています。』(pp.4)
著者は、この著書の中では、一回ねじって輪っかをつくる「メビウスの帯」に固執している。
『縄文土器の網目模様にメビウスの帯と同じ現象を発見しました。さらに、メビウスの帯を被った土偶を見つけました。縄文土器の網目模様とメビウスの帯は、
・螺旋を巻くことによって新しい形が生まれている。
・螺旋を巻くことによって継続性(永遠性)が生まれている。
という現象を共有しています。(別にメビウスの帯は表と裏の区別がつかない現象を持っています。縄文土器の複雑な網目模様を生み出した撚(より)紐(ひも)と絡(らく)条体(じょうたい)は螺旋を巻いています。縄文人が螺旋模様、すなわち撚紐に執着したのは、この螺旋を巻くことによって新しい形が生み出されるという過程に生命の原理を重ね合わせていたからにほかなりません。この生命誕生の原理は、古代人が考えた死と生の問題に深くかかわっています。』(pp.5)
著者は、いままでの縄文土器や銅鐸の文様に、彼らの死生観が込められていることに気づかなかったとして、
『私は、これに代わるわが国の古代史を解くキーワードとして、
1、メビウスの帯
2、しめ縄状模様
3、渦巻文
4、「xと+」形
5、円接多角形
という五つの要素を提案します。』(pp.6)
『頭部だけの小さな土偶の存在に気づきました。それは長野県大花遺跡出土の土偶(井戸尻考古館所蔵)です。この土偶は、頭に∞字形の被り物をしています。この∞字形には百八十度のねじれが認められます。これはその∞字形の被り物がメビウスの帯であることを裏付けています。』(pp.8)
さらに、中国のいくつもの少数民族に伝えられている伏義と女媧図や、東王父・西王母と伏義と女媧図が並べられている図などを例に、「泥で人形を作る」と「円と直線の文様」が古代中国に源泉があるとしている。(pp.84)
更に、二つの渦をつなげたS字渦文と逆S字渦文への発展から、その組み合わせにより、ハート形が現れることを強調している。(pp.94)
また、土偶の人は「踏ん張っている」の 多いことに注目して、
『ハート形土偶を造った縄文人は、両足を湾曲させることによって、それをみごとに再現しています。』(pp.96)としている。つまり、顔はハート形で、手と足の特殊な格好から、体全体でS字渦文と逆S字渦文を現わしているというわけである。
頭に渦巻き模様を付けた国宝の「縄文のビーナス」も、極端に大きい臀部を後ろから盛れば、まさしく同じように、体全体でS字渦文と逆S字渦文を現わしている。(pp.100)
『メビウスの帯を被った土偶を見つけました』、『この土偶は、頭に∞字形の被り物をしています。この∞字形には百八十度のねじれが認められます。これはその∞字形の被り物がメビウスの帯であることを裏付けています』の記述に興味を持ち、実物を目で確かめたくなって、近くの井戸尻考古館を訪ねた。
井戸尻は、縄文遺跡の宝庫で大賀蓮の池や、古代米の田んぼもある。毎年の収穫祭には縄文祭りが行われている興味深い場所だ。
丁度、付近の考古館が協力して「縄文の渦」の特別展の会期中で、展示内容とその説明パネルはいつもよりは充実していた。目的の土偶はなかなか見つけられなかった。売店で販売中の書籍(あのネリー・ナウマン女史が滞在中の厚手の記録書籍など)を1時間ほど見ているうちに、学芸員の方が戻り、くだんの土偶は片隅にあった。
さて、これは本当に「メビウスの帯」であろうか。かすかな疑問が残った。
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