ささやかな幸せ

SUPER EIGHT、本、美術鑑賞、俳句、お茶が好き!
毎日小さな幸せを見つけて暮らしたい。

『9月9日9時9分』

2021-04-27 22:57:06 | 
『9月9日9時9分』 一木けい 小学館
 バンコクからの帰国子女である高校1年生の漣は、日本の生活に馴染むことができないでいた。そんななか、高校の渡り廊下で見つけた先輩に、漣の心は一瞬で囚われてしまう。漣は先輩と距離を縮めるが、あるとき、彼が好きになってはいけない人であることに気づく。それでも気持ちを抑えることができない漣は、大好きな家族に嘘をつくようになり……。
 いやあ、おばちゃんは、キュンキュンしました。恋の始まりのときめき。恋をしているときのドキドキや弾むような心、疾走感、キラキラ。どう思っているんだろうという戸惑いや恐れ。ぜ~んぶ入って、甘酸っぱい。
 百均に行き、ラーメンを一緒に食べた時間は何だったのだろうと問う漣に朋温は、「あれは、デートだった」と答える。キャー。「漣は俺の彼女。俺は漣の彼氏」キャーキャー、言われてみたい!朋温に借りた英和辞典にマーカーが引いてある。「affection 温和で永続的な愛情」と。もう、ノックアウトですわ。
 しかし、キュンだけではないのが、この本のすごいところ。生き方についても深いのである。
 二人は、家族の問題でロミオとジュリエットのように引き離される。家族にも友人にも人に言えない秘密がある。その秘密も、見方によって違う側面を見せるのだ。漣の姉が「自分で決めていいときなんてなかった」と叫んだ時。母親は、お母さんに押し付けられて仕方なくやってきた、自分で選ぶ権利はなんかなかったと取る。妹の漣は、「自分で選んだ結果がよかったときなんてなかった」と取る。本当はどうなんだろう?理由はいろいろなことが混じりあって一言では表せないのだろう。一言で言えたら、物事は簡単に解決するだろうから。
 生きていくのが辛かったり、生きていく価値がないと思ったり、何もする気がおこらなかったら。「自分を六十日後まで冷凍保存するような心持ちで、寝て起きて食べて」「困ったときはプロに頼って(家族や身近な人だけでは限界があるから)」こういうことを言ってくれる人が身近にいたら、助かる人はどんなにたくさんいるだろうか。とりあえず目の前のことをひとつひとつやっていき、とりあえず目標60日。
「許されなくても、みっともなくても、私は私の道を探すんだ」「悩んで迷って、自分で考えて、選んだ道は、不正解じゃありません。(今願っている結果にならないかもしれないが)間違いではないんです」「すべてを知ることは無理だとしても、私にとってほうんとうに大切なことが何か気づかないまま、たった一度の人生を終えたくない」さまざまな言葉や行動に勇気をもらう。
 そして、今更ながら「頭ごなしに責めたり拒絶する」のではなく「許すことを前提にしてる」人になりたいと思った。
 いつか漣と朋温が結ばれることを思ってやまない。そして、タイに行きたくなった。
 
コメント
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