☆第322話『誤射』(1978.9.29.OA/脚本=小川 英&うど・ふみこ/監督=児玉 進)
長さん(下川辰平)が銀行強盗犯(信実恭介)を撃ったら人質(結城しのぶ)に当たっちゃった!という、後に恒例化する「長さんが射撃絡みで失態を犯し、刑事を辞めようとする話」の代表的な一編。
だけど実は長さんが的を外したワケじゃなくて、撃った瞬間に人質が自ら動いたのが本当の原因。
彼女は自殺するつもりでわざと動いたんだけど、その事実を明かそうとしない。生き残ってしまった以上、ろくでなしの兄(金子研三)が作った多額の借金を返さねばならず、警察から慰謝料をふんだくりたい兄に口止めされてるのでした。
けど、長さんがマスコミから袋叩きにされ、刑事を辞めるしかない状況に追い込まれても、一言の弁解もしてないという事実を知って、彼女の心は大きく動きます。人質が自ら動いたことを証明さえすれば、長さんは何の責任も負わずに済むのに!
結末はわざわざ書くまでもありません。どんな理由があろうとも、自分がやったことの責任は最後まで自分で負う。そんな長さんの生きざまを見て、彼女も心を入れ替えるワケです。
……っていうのが本筋なんだけど、このエピソードは他にもいくつかトピックスがあります。まず最大のトピックは、三代目マスコットガールのアッコ(木村理恵)が番組を卒業しちゃうこと。
祖母が亡くなり、実家が営む旅館を手伝うことになったという事情で、ボス(石原裕次郎)に退職願を提出したその日に、たまたま立ち寄った銀行で上記の事件に巻き込まれます。
けれど粗筋を読んで頂ければお分かりのように、このストーリーは別にアッコがいなくても成立しちゃいますから、後から無理やり組み入れた感は否めません。
人質が撃たれた直後、今度はアッコを盾にして犯人が逃走する→民間人を撃っても同僚は撃たない長さんはけしからん!ってことでマスコミの炎上ネタにされちゃう=作劇上の意味は一応あるんだけど、それが余計に取って付けた感を倍増させてる気もします。
でも多分、創り手は承知の上なんですよね。約3年も休まず勤めてくれた木村理恵さんへの餞として、無理にでもアッコの見せ場を作りたかった。愛あればこその不自然さなんだろうと思います。
この場面にはもう1つ見所があって、それはどさくさに紛れて人質=結城しのぶさんのおっぱいを触る長さんと、アッコのおっぱいを触る犯人役の信実恭介さんw(画像参照) 強盗シーンの醍醐味ですw
トピックはまだあります。それは着脱式のパトライトが『太陽にほえろ!』に初めて登場したこと。他の番組じゃ1年以上前から使われてたのに、こちらは随分と遅い登場でした。
最初にゴリさん(竜 雷太)が使い、次に長さんが使う際にはパトライトをわざわざアップで見せ、ボン(宮内 淳)に到っては多部未華子さんの真似をしてw、意味もなく箱乗りしながら装着してました。
DVDのオーディオコメンタリーで、これを最初にやったのはジーパン(松田優作)だと宮内淳さんが仰ってたけど、勿論それは勘違い。たぶん『大都会 PART II 』で徳吉刑事(優作さん)がやってたのと記憶がゴッチャになってるんでしょう。
それともう1つ、ボス=石原裕次郎さんの真っ黒なお顔もトピックですw 9月の放映ですから撮影は8月頃、たぶん夏休みでまたハワイへ行かれたんでしょう。
そんな黒人みたいな顔のボスが、射撃練習場でわざと的を外し、長さんを励ます場面もトピックかも知れません。立会人を務めた警官が「藤堂係長みたいな名手が的を外すなんて!」ってことで驚くんだけど、ボスは長さんがいなくなった後でもう1回連射し、弾丸6発で綺麗な直線を描くという神技をわざわざ披露するんですよねw
このシーンでもオーディオコメンタリーで宮内さんが「カッコ良すぎる!」「ずるい!」「わざわざ見せなくても!」などと愚痴っておられたけど、おっしゃる通りですw なにもそこまで見せなくたって、ボスがわざと的を外したことくらい大方の視聴者は察すると思うんだけど、それでも念入りにフォローしなくちゃいけないのがテレビというメディアなんですよね。
ボスが命中精度の高い6インチの銃で的を外し、逆に一番命中精度の低い2インチの銃で神技を見せるっていうのがまた、実に芸が細かい!w
あと、ここで使われた拳銃=COLTトルーパーMk―lll の6インチ(スコッチ、ロッキーが後に愛用)がたぶん『太陽』初登場であったことも、マニア的にはトピックの1つかも知れません。
前回レビューの#320と、大女優=岡田嘉子さんを迎えた#321は共に豪華ゲストで、次回#323と#324は北海道ロケの超大作。'78年秋の改編期スペシャル月間ってことで、この#322も見どころ満載のエピソードでした。