最終回はまるで『アベンジャーズ/エンドゲーム』を観てるようでしたw
森若さん(多部未華子)の孤独な戦いから始まったこのドラマ、最後には経理部のみならず天天コーポレーション全員が一丸となっての戦争(正確には一部の人たちしか知らないんだけどw)にまで発展し、もし初回と最終回だけを観た人がいるなら、森若さんが皆に理解されてるわ恋人はいるわでw、あまりの変化にビックリされた事でしょう。
これが「ドラマ」なんですよね! 人がどう変わっていくかを見せるのがドラマであって、やれ真犯人は誰だとか裏切り者は誰だとかに終始する昨今の刑事ドラマは、謎解き「ゲーム」であってドラマじゃない。
しかしそれにしても、やれ2つのストーリーを同時進行させるだの『太陽にほえろ!』だの『あぶない刑事』だの『チャーリーズ・エンジェル』だの『スター・ウォーズ』だの『アベンジャーズ』だのと、やたら過去作品のパターンに嵌めたがる私をあざ笑うかのように、これほど変幻自在に作劇パターンを(テコ入れじゃなく確信犯的に)変えて来た連ドラは前代未聞かも知れません。本当に最後まで先が予測出来ない作品でした。読めたのは唯一、でんでんさんが「日曜劇場」した第7話だけ。
最終回が大団円になるであろう事は誰にだって予測出来るけど、まさか会社の身売り問題があんなにあっけなく解決するとは予測しませんw(別にクーデターってワケでもなかったし)
そこが『これは経費で落ちません!』っていうドラマの面白さ。啖呵を切って悪徳上司を懲らしめ、演説をぶって泣かせるような「日曜劇場」的ドラマを過去にさんざん観て来たせいで、ついついそういうクライマックスを我々は想像しちゃうんだけど、そもそも勧善懲悪がテーマの作品じゃないんです。
ダース・ベイダー感満載だった新専務(橋本 淳)も、実は婚約者である研究開発室の美月さん(韓 英恵)に「やり過ぎよ」って注意されただけで話の解る人になっちゃったしw でもそれって、めちゃくちゃ現実的じゃないですか?w どんなに突っ張ったところで、しょせん頭のいい男はカノジョや嫁さんの言いなりってことで。
最終的に森若さんが示した「数字」が専務を動かすのは想定内だけど、営業部の山崎さん(桐山 漣)による加勢が決め手になったのは予想外。彼はもしかすると本気で森若さんが好きなのかも?w(だからって続編で三角関係とかはご勘弁)
いや、やっぱり、何だかんだ言っても社員みんなが天天コーポレーションを愛してるって事ですよね。その理由がよく解る最終回でもありました。
それにしてもあまりに盛り沢山かつスピーディーで、映画館並みに集中して観ないとついて行けない側面もあり、ながら見が基本の一般的テレビ視聴者は戸惑ったかも知れません。
ネットで話題になったNHK番組を解説付きで再放送する『NET BUZZ』で取り上げられたのも、一番分かり易くて泣ける回だった第7話(でんでんさんの日曜劇場)でした。私もめちゃくちゃ泣いたけど、個人的には一番『これは経費で~』らしくないと感じた回です。
本来、そうやって多数派が喜ぶ王道パターンに嵌まらないのが本作の素晴らしさで、どちらかと言えば玄人ウケする番組だと思うんだけど、マニアックになり過ぎない絶妙なバランス感覚で見事、多数派と少数派両方に支持された稀有な番組とも言えそうです。
そこはやっぱり、森若さんの恋と成長をとても丁寧に、ちゃんと本筋に絡めながら描いて来たこと。会社で働くという事はどういう事なのか、どうあるべきなのかっていう明確なテーマ(メッセージ)を最後までブレずに描いて来たこと。
そして何より、全てのキャラクターに血を通わせ、魅力的に描いてくれたことが、我々の心をがっちり掴んで離しませんでした。
創り手がどういう姿勢で臨めば新鮮かつ面白いドラマが生まれ、多くの視聴者たちのハートを掴めるのか? そのヒントが随所に見られる教科書みたいな作品。文句なし!
今季ナンバーワンは無論のこと、今年ナンバーワンもいよいよ現実味を帯びて来ました。
ムーミン
それぞれが自分の分をわきまえ、与えられた仕事をしっかりやれば自然と雰囲気も良くなることを教えられました。仕事がしんどくなるとつい愚痴ってしまいがちですが、そんな時に森若さんを思い出そうと思います。