最終回では、お腹で順調に育ってた筈の胎児が、実は産まれても恐らく1週間程度しか生きられない重病であることが判明し、産むべきか否か葛藤する母親(鈴木 杏)と父親(金井勇太)の姿が描かれました。
産まれても苦しみだけ味わう人生なら、産まない方が本当の優しさなんじゃないか? 否、例え僅か1週間でも精一杯の愛情を注いでやるのが親の務めなんじゃないのか?
悩んだ挙げ句に出産し、難病が嘘みたいに元気そうな赤ちゃんを全身全霊で愛する両親だけど、やっぱり赤ちゃんは1週間で亡くなっちゃう。
涙が枯れ果てるくらい号泣させられるけど、両親の選択が正しかったかどうかの結論は示されません。そこには正解も不正解も存在しないんです。
ただ、産んだのは単なる自己満足じゃないかと自分を責める母親に、一部始終を見守って来た看護師見習いのアオイ(清原果耶)が言うんですよね。自分のお母さんにギュッっとしてもらえて嬉しかったって。
「子供がお母さんにしてもらいたい事なんて、それ位なんじゃないでしょうか」
アオイ自身にも、ちょっとした障がいを持って生まれたせいで母親から疎まれて来たこと、だけどそこにお互いの誤解があったことを最近になって知り、ようやく素直に愛を感じられるようになったという背景がある。そうした描写の積み重ねが、究極の悲劇に光を灯してくれるんですよね。
アオイが抱える障がい自体、彼女のおっちょこちょいなキャラクターにちゃんと理由があることを示す、実に見事な設定だと思いました。
第4話で妊婦を死なせてしまった由比院長(瀬戸康史)や、それで残された若い父親と赤ちゃんの存在も、この最終回で必然的に活かされてました。
全10話、無駄と思えるエピソード……どころか無駄なシーン1つさえ見当たらず、緊張の糸が緩むことも全く無く、最初から最後まで我々を画面に釘付けにさせた奇跡のドラマでした。
また、以前の記事にも書いて来た通り、生まれてくる生命と同等に、いやそれ以上の比重で去っていく生命の存在も、残酷さを恐れずストレートに見せてくれたことで、我々がこの世に生きていられることの奇跡、その有難さを実感させられ逆説的に「生きる力」を与えてくれたように思います。
たった1週間しか生きられないと判ってる赤ちゃんを産むことが、正解なのか不正解なのか回答は示されないって書きましたけど、全10話をトータルで観れば答えは1つしか無いんですよね。
誰もが一度や二度は見失っちゃう「生きることの意味」を、この作品は最初から一貫して描いてくれました。そういう明確なメッセージが柱にあるからこそ、我々は毎回胸を打たれ泣かされて来たんでしょう。
クオリティーの高さもさることながら、本作の素晴らしさはそこに尽きるんじゃないかと私は思います。
あと、連ドラ初主演・清原果耶ちゃんの透明感と、脇を固めるレギュラーキャストやゲスト陣の熱演、そして何より原作の素晴らしさ。間違いなく今期ナンバーワンです。
今回のセクシーショットは、アオイの先輩看護師を演じた水川あさみさん。
『花とアリス』の鈴木杏さんが母親役で出てくるなんて時の流れを感じましたが、自分自身のことを考えると、不思議じゃないんですよね。
いいドラマでした。よくやったNHK。これからも受信料ちゃんと払います2軒分請求されたって文句は言わない。
清原さん、素晴らしかったです。スタンディングオベーションで賞賛させてもらいます。ブラボー!
これが民放なら「もっと女性視聴者にアピールしろ」だの「残酷な話は控えろ」だの「ジャニーズを使え」だの「乳首」だのと横やりが入って、凡作に終わってたかも知れません。NHKだからこそ出来た事なんでしょう。