1970年代半ば、『太陽にほえろ!』の大ヒットを受け、各テレビ局が刑事ドラマの製作に着手、雨後のタケノコみたいに刑事物がひしめく一大ブームが巻き起こりました。
だけど安易に『太陽』を模倣したような番組はあまり人気を得られず、ことごとく短命で消えて行く事になります。
そんな中で大衆の支持を集め、ロングランを果たしたのがTBSの『Gメン’75』、テレ朝の『特捜最前線』、日テレの『大都会』シリーズ等で、その各番組の辣腕プロデューサーや脚本家の皆さんが後年、異口同音に仰ったのは、こんなお言葉でした。
「打倒『太陽にほえろ!』を目指すなら、同じ事をやっても勝ち目は無い。とにかく『太陽にほえろ!』がやらない事をやろうと思った」
刑事ドラマに限らずとも、やっぱり他者がやらない事にチャレンジした者だけが歴史に名を残すワケで、そんなパイオニア精神で成功した代表的な刑事ドラマが、他ならぬ『太陽にほえろ!』でした。
その牙城を突き崩せるのは、同じようにパイオニア精神を持った攻めの姿勢の創り手だけ、って事なんだと思います。
『Gメン’75』を創った東映+TBSチームは『太陽』よりも先に『キイハンター』というアクションドラマを大ヒットさせたプライドもあり、打倒『太陽』に賭ける想いがひときわ強かったかも知れません。
まず一番大きな特徴は、刑事たちの所属が所轄署ではなくGメン(連邦捜査局)であるという設定。アメリカのFBIみたいに政府直轄の秘密警察で、国際的な犯罪を扱ってスケール感を演出してました。
そしてアンチ『太陽』の姿勢が顕著に表れてるのが、刑事達の呼び名です。『太陽』式にニックネームで呼び合うのが刑事ドラマの常識になりつつあった中で、Gメンはあえて「○○刑事」「○○警部補」など苗字+階級で呼び合うんですよね。
ニックネームの親しみ易さとは対照的にビジネスライクな感じが「大人っぽい」雰囲気を醸し出し、それが『Gメン』のイメージを決定づけたように思います。
それ以上に『太陽』の逆を行ってたのが、レギュラー刑事の心情よりもゲストキャラ(犯人や被害者)のドラマをメインに描いた事。「ハードボイルド」をキャッチコピーにしただけあって、刑事が捜査に私情を挟まない乾いた世界なんですね。
サスペンスやアクション物は好きなんだけど、刑事のヒューマニズムを前面に押し出した『太陽にほえろ!』という番組は何となく気に食わない……みたいに感じてた視聴者層が、その真逆を行く『Gメン』に飛びついたのかも知れません。
もちろん『キイハンター』からのファンも多かったでしょうけど、『Gメン』が大ヒットして7年にも及ぶロングランを果たしたのは、『太陽』とのライバル関係がプラスに作用した事も大きいんじゃないかと私は思ってます。
と言うのも放映当時、中学のクラスメートで「『太陽にほえろ!』なんか幼稚やで、『Gメン’75』の方が百倍おもろいわ!」って、やたらムキになって言って来る奴がいたんですよねw
『太陽』ファンは別に『Gメン』の事を意識してないのに、『Gメン』ファンはやたら『太陽』を目の敵にする傾向があったように思います。それって何となく巨人ファンと阪神ファンの関係みたいで、まぁ私の身の周りだけで起こってた事かも知れないけど、とても興味深い現象でした。
私自身はやっぱり、『太陽』の真逆を行く『Gメン』の作劇には馴染めませんでした。登場人物にどれだけ感情移入出来るか?が私の鑑賞&評価ポイントなので、犯人や被害者のドラマがメインに描かれるとのめり込めないんです。
それは性格として犯罪者に肩入れ出来ないのと、犯人や被害者はその回限りのゲストキャラに過ぎないことも理由に挙げられます。やっぱりレギュラーでずっと出てる刑事側の方が感情移入し易いワケです。
犯人側中心のドラマになると全体的にトーンが暗くなっちゃうのも、私にとっては大きなマイナスポイントです。『Gメン』は毎回ゲストキャラを悲劇のどん底に突き落とし、救いも与えず突き放すようにして終わっちゃう。それをレギュラー刑事達はいつも、ただ傍観してるだけなんですよね。
だから『太陽』とのライバル関係を度外視しても、私は『Gメン』をあまり面白いドラマだとは思ってなかったです。
だけど他の刑事ドラマがやらない事にあえて挑戦するハングリー精神と、それによって輝かしい実績を残した有言実行力はリスペクトしてやみません。
『Gメン’75』と言えばオープニングの「Gメン歩き」(横一列になって真っ直ぐ歩くアレ)とか、『Gメン’75』と言えば「香港カラテ(カンフー)シリーズ」とか、番組独自のスタイルが今や伝説化してるのも本当に凄いと思います。
女性刑事を男性と同等に扱い、容赦なくハードな事をさせるのも『Gメン』の独自路線でした。藤田美保子、森マリヤ、夏木マリ、セーラ、范 文雀、江波杏子など、男性レギュラーより女性レギュラーの方が強く記憶に残ってる位です。
もちろん、圧倒的な貫禄と超マイペースな棒読み台詞が忘れられないボス・黒木警視(後に警視正)=丹波哲郎の存在感、犯人と相撃ちになって殉職した関屋警部補=原田大二郎、カラテの達人で実は中国人の草野刑事=倉田保昭、クール&ダンディーなエリート・小田切警視=夏木陽介、一見ソフトなナイスミドルだけど実は鬼夜叉の立花警部補(後に警部)=若林 豪、といった面々も印象深いです。
宮内 洋、千葉 裕、鹿賀丈史らが参入した番組終盤になると、’80年代という明るく軽い時代を反映してか、ハードボイルドが売りだった筈の『Gメン』にも軽いノリや人情話が目立つようになり、らしさを失ってしまったのがちょっと残念でした。
それでも、アンチ『太陽にほえろ!』としては最も成功したであろう番組『Gメン’75』の存在を、丹波さんの棒読み台詞と共に、私はずっと忘れないでしょう。
TBS系列の土曜夜9時枠にて1975年5月から'82年4月まで全355話、そして'82年10月から'83年3月まで続編『Gメン'82』全17話が、さらに'93年と'00年、'01年には復活版スペシャルも制作・放映されました。
米軍は沖縄編とかであれだけ悪役にしてたのに、自衛隊との仲は良好なんですね(笑)
ちなみに七曲署も海上自衛隊の音楽隊(だっけ?)の建物なんですよね。
そういえば両者で自衛隊が出てくるエピソードってありましたっけ?
石原プロは結構自衛隊をネタにしていましたが…。
二次小説、読んだらこの記事のコメント欄に感想書かせてもらいます。ちょっといつになるか分かりませんが、気長にお待ちください。
『大都会3』などはアクション中心で、キャラクターどうしのドラマもあったから楽しく読めましたが、今回の『Gメン』や前回の『ジャングル』みたいに事件や捜査が中心になってしまうと、私はダメなんです。すみません。
ただ、過去のご自分の行動に対する反省を創作に込め、発信するというやり方には共感するものがあります。刑事ドラマの二次小説という形よりも、いっそ適当谷損気さんのそんな過去の体験や想いを、そのままストレートに書かれた手記が読みたいと、個人的には思いました。
うーんそうですか…そうなると今書いているうちの一つも果たしてハリソンさんが楽しめる出来になるかどうか微妙になってきましたね。
今書いているのがどんなのかって?
一応、刑事モノでアクション描写も入る予定なんですが、舞台は日本じゃありません。登場人物たちも日本人じゃありません。
そのうえ、詳しくないと分からない現地の事情やら用語やらがポンポン出てくる予定なので、余計に「読めない」作品になってしまうかもしれません。
それに、個人的事情で「もう書くまい」と思っていた作品ですし…そういうわけで、ハリソンさんが楽しめる作品が書けるようになるにはまだもう少しかかりそうです。
すみません…。
婦警が大活躍する『西部警察』の構想をお聞きした時に「それは面白そう!」と私があおってしまった手前、ちゃんと読む義理があると思って多少ムリして読んで来ました。そこをお察し頂ければと思います。
小説はもういいです。すみません。昨日書いたように、適当谷損気さんご自身が体験したネット上のトラブル等、事実を綴られた手記なら読みたいと思ってます。興味本意ではなく、自分にもそういう過ちは色々あるので、共感出来ると思うからです。
適当谷損気さんを信じて、正直な気持ちを書きました。どうか気を悪くしないで下さいm(__)m