2001年秋に東映系で公開された、平成『仮面ライダー』シリーズ初の劇場版で、東映創立50周年記念作品・仮面ライダー30周年記念作品でもあります。監督は田崎竜太さん、脚本は井上敏樹さん。
伝統的に仮面ライダーの映画って、歴代ライダー揃い踏みとかスーパー戦隊とのコラボなど、良くも悪くも徹底した「お祭り」なんだけど、この作品はひと味違ってます。
もちろんアンノウン(怪人)が大群で押し寄せたり(お化けゴキブリかと思ったらアリがモチーフなんですねw)、本作限定の仮面ライダー「G4」が登場したりとイベント要素はいくつもあるんだけど、そういうことを抜きにしても1本のSF怪奇アクション映画として存分に楽しめる作品になってます。
自衛隊の管理下にあった超能力開発研究所がアンノウンの大群に襲われ、かろうじて脱出した子供2人=紗綾香(木村 茜)とレイ(大高力也)がそれぞれ街をさ迷うことになります。
で、予知能力のある紗綾香が翔一(賀集利樹)を交通事故から救ったことで美杉家の新たな居候となるんだけど、彼女を追って来た自衛隊のマッド・サイエンティスト=深海一等陸尉(小沢真珠)に真魚(秋山莉奈)が眼をつけられてしまい、拉致され、磔にされて、あんな事やそんな事をされちゃいます。
深海一等陸尉がなぜ真魚を拉致したのか? それは、彼女が紗綾香を凌ぐほどの強い超能力の持ち主だから。
じゃあなぜ、深海一等陸尉は超能力者を欲しがるのか? それは、究極のリーサル・ウェポン(人間兵器)とも言える「G4」を完成させる為に必要だから。
かつて警視庁G3ユニットのリーダー=小沢警部(藤田瞳子)が開発したG4システムは、装着する者に負荷がかかり過ぎてその生命を奪ってしまう為、封印したにも関わらず深海一等陸尉が設計図を盗み出し、極秘裏に完成させてしまった。
G4を装着するのは自衛隊の水城三等陸尉(唐渡 亮)なんだけど、その潜在能力を最大限に引き出す為に真魚のサイキックパワーが必要となるワケです。よく解んないけどそういう設定なんですw
かくしてG4は起動してしまう。G3の進化形「G3-X」を装着することで格段に強くなった我らが氷川刑事(要 潤)は、水城三等陸尉の身を案じてG4の装着をやめさせようとするんだけど、そんな氷川を水城は「甘い」と言います。
「生への執着がある限り、充分な戦いは出来ない」「俺は死を背負って戦っている」「死を背負うことこそ、我々の使命だ」
……っていうのが水城の主張。その話を氷川から聞いたアギト=翔一は「嘘臭いです」「生きるってことは、美味しいってことじゃないですか?」と、ワケの分からないことを言い出しますw
「キャベツを食べても大根を食べても美味しいです。もしかしたら何も食べなくても美味しいです。死を背負ったりしたら、不味くなります」
ワケは分かんないけど何となく翔一に共感した氷川は、水城を救う為にもG4と戦う覚悟を決めるのでした。
「僕は彼(翔一)のようにはなれないし、あなた(水城)のようにもなれない。中途半端です。でも、これだけは言えます。僕は生きるために戦う。生きることを、素晴らしいと思いたい!」
しかし前より強くなったとは言え、サイキックパワーを得て究極となったG4にはやはり歯が立たず、G3-Xはまた例によってフルボッコにされちゃいます。
ここで両者の生みの親である小沢警部が、とんでもない指令を氷川に下すんですよね。
「G3-XとしてG4と戦っても勝ち目は無いわ。氷川誠として戦いなさい!」
それで氷川は、ライダーマスクを外してG4に立ち向かう。よく分かんないんだけどw、つまり気持ちで戦えって事なんでしょう。果たして死を覚悟した者が強いのか、それともあくまで生きようとする者が強いのか?
結局、システムの負荷に耐えきれなかった水城が自滅しちゃうんだけど、そこまで追い込めたのは氷川の生きようとする強い気持ちがあればこそ、なんだろうと思います。
恐ろしいことに、装着者の水城が息絶えてもなおゾンビのごとくG4は動き出すんだけど、そこで氷川がとどめの弾丸を浴びせるんですよね。「もういいだろうっ!!」っていう悲痛な叫びと共に。
その瞬間、この映画は完全にG3-X=氷川刑事が主役になりました。何より生きることが大事なんだ、生きようとする者こそが強いんだっていう創り手のメッセージを、彼が体現して見せたワケです。
いやぁ氷川刑事、カッコ良くなりましたね! 私はもう、すっかり要潤さんのファンになりました。
本来の主役であるアギト=翔一は今回、真魚が拉致されたことで彼女との絆をより強く意識したみたいだし、3人目のライダー「ギルス」に変身する涼(友井雄亮)はエスパー少年=レイと友情を育んだりしたけど、あくまで作品の彩りに過ぎませんでした。
この劇場版のストーリーはTVシリーズ企画時から想定されてたらしいし、思えば第1話もこの映画も、最初に登場するのは氷川刑事=G3でした。主人公はあくまで翔一=アギトだけど、創り手たちの思い入れが一番強いキャラクターは氷川なのかも知れません。
あと、今回(私はTVシリーズを第4話までしか観てないので)初めて眼にすることになった3人目のライダー「ギルス」もまた、野性味が溢れ過ぎてて魅力的です。いきなり腕をちょん切られて、そこからカマキリみたいな腕が生えて来るのには大変驚きましたw すっかりポップ化して来た令和のライダーシリーズじゃ考えられない血なまぐささです。
世界観そのものがハードかつリアルで、平成シリーズの初期は我々世代(つまり昭和ライダーを観て育った男子)に向けて創られてるように感じます。
最近のシリーズはヤングママ向けなんだろうけど、やがて今の子供たちが大人になった頃にはまた、この『アギト』みたいな尖った作風に回帰するのかも?
同じキャラクターを扱った作品でも、時代によって内容が大きく変わっていくから面白い。今後もライダーやウルトラマンには注目していきたいと思ってます。
PS. 本作には警視総監役で藤岡弘さんも特別出演。最近はライダー映画にも度々出演されてますが、当時としては画期的だった事と思います。
あと当時BSE問題で焼肉の売り上げが不振になったときにアギトの話でG3ユニットの話し合いで結構焼肉屋が舞台になり彼女が豪快に焼肉を食べていてそれが印象に残っています。
あと彼女は5作目のブレイドにもゲスト出演しています。こちらはストーリー上あんまり目立ったキャラではなかったのですが。
この映画には格別の思い入れがあります!
いまではフォームチェンジも珍しくはないですが、この映画では
アギトのバーニングフォームとシャイニングフォーム、そしてギルスのエクシードギルスが初だしなですよ!
劇場で初めてこのフォームになったのです!
それだけでも大興奮なのですがさらに、アギトの作品上、オープニングテーマにのってアギトが戦ったのはこの映画だけなのです!
もう、アギトファンにはたまらないプレゼントなのですよ!
また演出も素晴らしく、鳥の鏡のおもちゃの演出のふくせんなんか本当に好きです!
最近はもうやりつくされて感じなくなった思わせ振り演出も、この映画のエンディングフィルムは新鮮でした!
見事に本編に関係ない思わせ振り演出ww
平成ライダー映画ではこのアギトのG4とダブルのAtoZのみが、私的に神がかり的に素晴らしい映画で何回観ても興奮します!
見ていただけて嬉しいです!
ありがとうございます!
実はここに書き込む前に昨晩見てました!※何回目ww
焼き肉シーンが頻繁に出てきますよねw もしかしたらタイアップがあったのかも?
>キアヌさん
新フォームをテレビに先駆けて映画で見せるのは『マジンガーZ対デビルマン』のジェットスクランダーや『マジンガーZ対暗黒大将軍』のグレートマジンガーみたいなもんですよねw
思えばライダー映画自体が「東映まんがまつり」から生まれてますから、言わば伝統芸? 映画のみ劇中で主題歌を使ったのも、そういう意図があっての事かも知れませんね。
今のライダー映画も好きだけどやっぱりこの映画がダントツに好きです。(私は20代でアギトリアル世代です)
リアルな作風も大好きですけど、翔一君の下らないギャグだったり、氷川さんのお約束の不器用ネタだったりで笑うところも一杯あるから好きなんですよね。今のライダーも笑えるけど、アギトみたいな日常的な笑いが好み。
555はハードでシリアス過ぎて今でも観ると少し疲れてしまいますが、アギトだと常にいい感じで観れるからいつまでも新鮮です。今のライダーと違って車の上で戦うとか泥臭いシーンが多いですけどそれがリアリティとして機能してるから、シリアスなシーンだろうがライダーのシーンだろうが問題なく観れるんですよね。555や龍騎はそれでも辛くなりましたけど、今の時代でこんな撮影は厳しいかな?主に安全面で・・・
長々と失礼致しました。
アクション撮影に関しては、年々規制が厳しくなってると思われます。それで刑事ドラマはアクションから逃げて謎解き物ばかりになってしまいました。今でも頑張ってくれてるのは特撮ヒーロー物だけ。ホント頭が下がる想いです。