先日KADOKAWA社から発売された、『太陽にほえろ!伝説/増補決定版』以来17年ぶりとなる、岡田晋吉さん(元・日本テレビプロデューサー)の著作による『太陽~』公式本です。
タイトル通り、今回は『太陽~』を通して萩原健一さん、松田優作さん、石原裕次郎さんの素顔を語る内容であることは事前に分かってたので、私はあまり期待してませんでした。
そのお三方についてはもう語り尽くされた感があるし、まして著者が岡田さんとなると前述の『太陽にほえろ!伝説』や『青春ドラマ夢伝説』等の本と各種インタビューで、同じエピソードを何度繰り返し拝聴して来たか判りませんから、新鮮な情報はもう期待出来ないと思ってました。
しかもボス、マカロニ、ジーパン以外のメンバーは無視かよ?って、番組そのもののファンとしては憤りさえ感じてました。
けど、話題がそのお三方に絞られてることが、かえって功を奏しました。それだけ1人1人に文字数が費やされたお陰で、初耳のエピソードが意外に多く、すでに耳タコのエピソードに関してもディティールが追加され、掘り下げられたことによって新たな発見がいくつもあり、思いのほか読み応えがありました。
特に面白かったのが、プロデューサーから見たショーケンさんと優作さんの、性格の違いについて。こちらから何か小言を言った時、ショーケンさんはとことん議論して納得すれば素直に従うけど、優作さんはすぐに「はい」って返事して従うフリをして、実際はその通りに絶対しなかったんだとかw
自分のやりたいようにやらなきゃ気が済まないのは両者とも同じなのに、片や正面からぶつかり、片や飄々とかわしちゃう。
スタッフからすりゃどっちも厄介で面倒臭いけどw、両者それぞれの人間観が伺えて興味深い。ショーケンさんの方が人間好きで、優作さんは人間を(特に偉い立場の人を)信じてない感じがしますよね。
もう1つ印象に残ったのは、岡田さん&梅浦洋一さん(元・東宝テレビ部プロデューサー)&竜雷太さんによる座談会で明かされた、『太陽~』の企画は竜さん(つまりゴリさん)が肝だった、っていうお話。
キャスティングで最初に決まったのは竜さんだった、っていうお話は聞いた覚えがあるし、ゴリさんのキャラが一番『太陽~』のスピリットを体現してることは我々ファンも解ってたけど、「竜さんが企画の核」であり「竜さんがいないと成立しなかった」とまで元プロデューサーのお二方が明言されたのは、今回が初めてじゃないかと思います。
これはもしかすると、昨年ついにショーケンさんが亡くなられて、気遣いする必要が無くなったお陰かも知れませんw 「おいおい、新米刑事の成長が肝なんじゃなかったのかよ?」って、文句言われる心配が無くなったからw
ショーケンさんに関しては、今回の出版に先駆け「ちくま文庫」社から発売された文庫版『太陽にほえろ!伝説』も同じくなんだけど、マカロニ刑事の写真が極端に少ないのがとても不自然だし、非常に残念な点でもあります。一体なぜ?
ちょっと古い話だけど「映画秘宝」誌の別冊ムック『男泣きTVランド』が発売された時、表紙のオモテが優作さん、ウラがショーケンさんのそれぞれ肖像画だったのが、ショーケンさんサイドからのクレームにより、第2刷からは両面とも優作さんに変更された事がありました。どなたか存じ上げないけど権利保有者の方がうるさいのかも知れません。
私が感じた不満はそれだけで、本の内容に関してはおおむね満足、保存用と2冊買った甲斐がありましたw
もちろん、欲を言えばシンコやチャコ、ボンにスニーカー、ジプシー、ブルース、マイコンw等についても詳しく語って頂きたいところだけど、商売にならないのは重々承知してますから諦めます。
とにかく『太陽にほえろ!』ファン、昭和アクションドラマのマニアなら、『太陽にほえろ!伝説』と併せてこれは必須のバイブル。買わなきゃダメです。
私は取り上げられている若手刑事がマカロニとジーパンだけ、というところで立ち読みだけで済ませてしまったかな…
誰が扱われているかは置いておいて、もう史料として拝読すべきものかもしれませんね。マニアなら。