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ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『警視―K』#07

2021-08-05 00:15:07 | 刑事ドラマ'80年代



 
☆第7話『太陽が上に向いている』

(1980.11.18.OA/脚本=勝 新太郎&須川栄三/監督=勝 新太郎)

今回は『警視―K』にしては珍しい「燃える展開」のお話。まず、政界にも繋がる大手企業=新東亜建設の汚職を捜査中の賀津警視(勝新太郎)が、直属の上司である藤枝課長(北見治一)からやんわりと「手を引く」ことを促され、いきなり激昂します。

「俺たちは何のために国民から税金を貰ってるんだ!? こんな下らない話をしてる間にもどんどん証拠が無くなっていっちゃうんだよ! 悪いヤツが威張ってて、捕まえるほうがビクビクしてたんじゃもう世の中終わりだよっ!!」

全面的に賛成なんだけど、のっけからギア全開で唐突感がハンパないw(後で燃える展開が待ってるんだから、ここはまだそんなに怒らない方が良かったのでは?w)



で、賀津の依頼で新東亜建設の周辺を調べてた情報屋の「ワリちゃん」こと尾張(川谷拓三)が、コソ泥仲間の佐々村(梅津 栄)と置き引きして来たカバンの中身を見て驚きます。それは新東亜建設の汚職を裏づける証拠になるであろう、領収書の束と裏帳簿なのでした。

ここでワリちゃんに魔が差してしまう。現在ベタ惚れ中の呑み屋の女将=時ちゃん(松尾嘉代)に気前のいいとこ見せたくて、賀津にナイショで新東亜建設をユスりに掛かっちゃう。

事の重大さを解ってないワリちゃんは、せいぜい10万円程度の小遣いを稼ぐつもりだったのに、新東亜建設が渡して来たのは500万の札束。

もちろん裏でヤクザが絡んでおり、時ちゃんの店にやって来た用心棒2人組が、彼女のオッパイを指でつついて見せる挑発にまんまと引っ掛かったワリちゃんは、喧嘩を売って即座に撃たれちゃうのでした。



幸い命に別条は無かったものの、友達のワリちゃんが撃たれ、挙げ句に新東亜建設の汚職相手(つまり大事な証人)も口封じに暗殺され、賀津警視の怒りがいよいよ爆発!(のっけから怒ってたけどw)

例の用心棒2人組を引き連れ、高級キャバレーで呑んでる新東亜建設の社長、すなわち黒幕の高浜に近づいた賀津は、まず身分を隠して高浜を挑発。用心棒たちに自分を殴らせ、潜んでた部下たちに現行犯逮捕させます。

署に引っ張られた用心棒2人組は、賀津の狙いも知らずに「シャバに置いとかねえぞこの野郎!」とか言ってイキがります。

「おい、鼻クソ。寝言は寝てる時に言うんだ。眼ぇ覚まして言うもんじゃねえぞ。シャバへ置いとかねえ? それは俺が言うセリフだ!」

そして賀津は殴る、蹴る、髪を引きちぎる、首を絞めるなど高度な取調べスキルを披露し、こう言って用心棒たちを説得します。

「てめえら2人をこの窓から突き落としてな、自殺に見せることだって出来るんだぞ鼻くそっ!!」

そんな賀津の人情にほだされた用心棒たちは、あっさり黒幕の正体を自白。かくして高浜社長を取調室に招待した賀津は、呑んでたウィスキー(もちろん勤務中w)をぶっかけるという手厚い歓迎を施し、人情味あふれる温かい言葉で労をねぎらうのでした。

「お前の洋服はクリーニング屋に持っていきゃ綺麗になるけどな、お前が今までやって来たことはクリーニング屋じゃ綺麗にならねえぞ? 入るとこへ入って洗い直してこい!」

つくづく、これが刑事ドラマだと私は思う。こういうのが観たくて、私は刑事ドラマを追っかけ続けてるんです。

現実にはこんなにうまく行かない事はもちろん分かってます。だからこそ、せめてフィクションの世界でスッキリさせて欲しいワケです。

やっぱり『踊る大捜査線』あたりからですよね。暴力で得た自白は証拠にならないとか、そんなつまらん現実は知りたくなかったですよ。ファンタジーで良かったんです。

本当に追究すべきリアリティーは、まさにこの『警視―K』で描かれてる事だと私は思う。人はこんな局面に立った時、どんな反応をするか? どんな風に動いてどんな言葉を発するのか? それこそがリアルな世界であって、現実の警察組織はどうだの法律はどうだのなんか、ホント心底どーでもいい!

勝新さんは正しかった。あまりに正しすぎて、大方の凡庸な視聴者(もちろん私自身も含む)はついて行けなかった。近年になって再評価されてると言っても、ほんのひと握りのマニアにですからね。追いつくことは誰にも出来ません。



しかし一体どういういきさつなのか、新東亜建設の汚職摘発は全て辺見刑事(金子研三)の手柄として報道されw、何の勲章も貰えない賀津はいつものように、キャンピングカーで愛娘=正美(奥村真粧美)とイチャイチャしながら、愛情たっぷりの目玉焼きを作ってやるのでした。

「なんだよ、このバター」

「それバターじゃないよ、キャベツの芯だよ」

「目玉焼きのこと、英語で何て言うんだ?」

「サニーサイドアップ」

「サニーサイドアップ? どういう意味なんだ?」

「太陽が上に向いてるってこと」

「へえ」

というワケで、サブタイトルの『太陽が上に向いている』は本筋と何の関係もありませんでしたw すごい!w



ゲストの松尾嘉代さんは当時37歳。片平なぎささんが大活躍される前はこの方が「サスペンスの女王」と呼ばれてました。

が、なぜか刑事ドラマへのゲスト出演はごく少なかったようで、同じ時ちゃん役で再登場された『警視―K』第9話の他には『大都会25時』第11話と、あの『はぐれ刑事純情派』第1シリーズの記念すべき第1話があるくらい。

とにかく2時間サスペンスへのご出演が多く、1998年あたりまで色っぽい演技で我々を魅了して下さいました。

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『警視―K』#05

2021-08-02 19:00:08 | 刑事ドラマ'80年代

 
☆第5話『まぼろしのニューヨーク』

(1980.11.4.OA/脚本=柏原寛司/監督=黒木和雄)

「ダニ―」と呼ばれるバンドマンでバーの経営者でもある男が、とあるソープ嬢のアパートで他殺死体となって発見されます。賀津警視(勝 新太郎)ら今宿署の刑事たちが捜査に乗り出し、例によって本庁からやって来た辺見刑事(金子研三)も、エリート風を吹かせながら事件関係者たちとこんな会話を交わします。

「私は本庁の辺見だ」「えっ、ホンチョウの変態?」

「私ね、正子(しょうこ)っていうの」「証拠はあるのか?」

下らないですw しかも今回、辺見刑事の出番はこれだけw だんだん彼が好きになって来ましたw



で、バーで専属歌手を務めるジャズシンガーの洋子(宮崎正子)は、事件当夜ずっと取り立て屋の「大ちゃん」こと結城大(原田芳雄)とカード遊びをしていたって言うんだけど、その時間に結城がソープ嬢のアパート近くを歩いてる姿を目撃されており、賀津警視はこの2人に疑惑を抱きます。



ちなみに賀津と結城が初対面で交わした会話が、これ。

「私の名前ですか? 結城大(ゆうき だい)です」

「言う気ない?」

「言う気ないじゃなくて結城大です」

揃って名優で大スターでもある、あの勝新太郎と原田芳雄の会話とは思えませんw



捜査の結果、実力派シンガー・洋子のお陰で金儲けして来たダニ―が、本場ニューヨークで唱う夢を実現させつつあった(つまりバーを辞めようとしてた)洋子からパスポートを取り上げた事実が判明。それを取り戻そうとした洋子がダニ―と揉み合いになり、恐らく弾みで……



それを確かめるためバーを訪れた賀津に、結城がこんなセリフを吐きました。

「行きますか? コンチクショへ」

「コンチクショ?」

今宿署(こんじゅくしょ)に引っ掛けたダジャレで、勝新さんの反応から見てたぶん原田さんのアドリブですw



「刑事にでもなるかい?」

「ハハ、死にますよ。2日で」

「面白いぞ、刑事も」

続いて出たこれらのセリフも明らかにアドリブ。かくも独特なライブ感に『警視―K』の真骨頂、通常の刑事ドラマじゃ味わえない面白さがあるんですよね。



結城は、夜の街で働く女性たちを助けるため、格安のギャラで取り立て屋と子守りまで引き受けてるナイスガイ。

事件当夜に現場へ行ったのも恐らく、洋子がダニ―を殺した証拠を隠すため。ニューヨークで唱うという彼女の夢を叶えるべく、結城は全ての罪を被ろうとしてるのでした。

で、賀津は結城とポーカーで勝負し、負けたフリをするんですよね。もしかして賀津は、洋子の罪を見逃してやるつもりなのか?



罪悪感に耐えきれず、出発前夜にニューヨーク行きをやめると言い出した洋子に、結城は「お前1人の夢じゃねえんだぞ!」と言って尻を叩き、無理やり「ニューヨークに行きます」と約束させます。

で、翌日。空港でニューヨーク行きの便を見送った結城を、賀津が迎えに来ます。それで促されて覆面パトカーに乗り込もうとしたら、後部座席に手錠を掛けられた洋子が乗っていた! 賀津よ、見逃してやるんじゃなかったのか!?

「…………」

結城は、黙って賀津の顔にパンチをお見舞いします。

「…………」

賀津も、黙って結城を殴り返しますw



つまり今回、賀津警視=勝新さんは悪役に徹してるんですよね! たぶん、結城の優しさと器の大きさ=原田芳雄さんの魅力を引き立てることだけを考えて、こういう結末にした。

じゃあ、なんでポーカー勝負で負けたフリをしたの?っていう謎が残るんだけど、あの時は見逃してやる=自分がヒーローになるつもりでいたのかも知れません。けど、ラストシーンを撮る段になって気が変わったw なにせ『警視―K』っていう作品は全てがアドリブなんです。

大好きなゲストを引き立てる為なら、自分が悪役になることも厭わない。それが勝新太郎というスターであり、だからこそあんな不良で厄介者でも皆に愛されたんでしょう。

男から見ても感じる色気を持った二人のスターと、説明をいっさい省いたシンプルなストーリー、そしてどこまでも映画的なカメラワーク。現在のテレビ番組じゃ観られないものばかりで、いま観ればこそ新鮮だし、シビれます。



洋子役の宮崎正子さんは実際にジャズシンガーで、ソフトロックバンド「ザ・カルア」の元ボーカリスト。'78年にリリースされたソロデビュー曲『ゲット・マイ・ウェイブ』のレコードジャケットが劇中にも登場します。たぶん、勝新さんが彼女のために構想されたストーリーなんでしょう。

 

コメント (2)
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