前回はなんだか暗くて切ない話になっちゃったので、今回は最高に明るくてファンキーな友人との、忘れられない夏の想い出を書きたいと思います。
小学3~4年生の頃、近所に住むY君とよく遊んでました。で、夏休みのある日、そのY君と川辺で遊んでたら、中学生ぐらいの明らかに不良っぽい男子2人組に絡まれたんですね。
細かい部分は憶えてないんだけど、私とY君が川に小石を投げてたのを「環境破壊やろ!」みたいな、要するに言いがかりをつけて脅しに来たワケです。
小学3~4年生と中学生とじゃ体格差があり過ぎるし、不良に対する免疫もまるで無かったもんだから、私とY君はそいつらに命じられるまま「すみませんでした」「許して下さい」って、何がいけなかったのか解らないまま泣いて謝るしかありませんでした。
それだけでも充分トラウマになり得る恐怖体験だけど、私にとって本当の意味でのトラウマは、この後です。
「お前はもういい、帰れ。せやけどお前はなんか気に入らん。残れ」
不良2人組はそう言ってY君だけを解放し、私1人を更に脅し続けたんですね。
怖すぎて詳細は記憶に無いけど、たぶん「こいつ、川に落としたろか」とか「夜になるまで帰さんからな」みたいなことを言われたと思います。
私はクラスで一番のチビで色白で、しかもオカッパ頭でいかにも「お坊っちゃん」ぽい風貌でしたから、不良からすりゃ格好の餌食だったんでしょう。最後は号泣しながら土下座させられて、やっと解放されたような記憶があります。
たぶん実際は10分か15分程度の出来事なんだろうけど、自分の感覚としては1時間ぐらい延々と恫喝されてたような、生まれて初めて死の恐怖を味わった地獄の時間でした。
あれ? 最高に明るくてファンキーな友人の話じゃなかったの?って思われてるかも知れないけど、大丈夫です。ここからが本題です。
ようやく不良たちから解放された私がまず思ったのは、Y君を長い時間待たせて悪かったなあってこと。さぞや心配してるだろうから、早く無事な姿を見せてあげなくちゃって、私は2人の自転車が置いてある場所へと駆け足で戻りました。
そしたら、そこにあるのは私の自転車だけ。あれ? おいおいY君、もしかして助けを呼びに行ってくれたの? まさか警察を連れて来るとか? 参ったなぁ、あんまり大袈裟に騒いで欲しくないんだけど……
って、とりあえずその場でしばらく待機したんだけど、いつまで経ってもY君は戻って来ない。えっ? ま、まさかY君……今一番の親友であるハリソン君を見捨てて、家に帰っちゃったとか?
いやいや、いくら何でもそりゃあり得んやろ!って思いながら、とりあえずY君の家に行ってみた私の眼に飛び込んで来たのは、満面の笑顔で弟やその仲間たちと無邪気に遊ぶ、最高に明るくてファンキーなY君の姿なのでした。
少年期に味わったこの体験は、私の人格形成に多大なる2つの影響を与えたと思ってます。1つは、不良に対する条件反射的な恐怖と嫌悪感。そしてもう1つは人間不信です。
理不尽としか言いようがない理由で人を恫喝し、しかもより弱そうな相手をターゲットにする不良という人種の卑劣さ。
自分が中学生になって世間で「ツッパリ」が一種のブームになってもまったく憧れなかったし、もちろん「横浜銀蠅」とか吐き気がするほど軽蔑してました。極道者をヒーローとして描いた映画なんか、例え高倉健さんが主役でも絶対に観ません。義理だとか人情だとか、そういうものを片っ端から踏みにじって生きてるのがヤクザでしょうに。
で、人はおおむね保身のために他人を裏切る……なんてデューク刑事(金田賢一)ばりにニヒルな台詞を吐くのは大袈裟かも知れないけど、自分さえ助かれば後はどうでも良かったY君と、私がそれから疎遠になったことは言うまでもありません。
別にそんな経験をしなくたって、私の人格は大して変わってないのかも知れないけど、心を深く傷つけられた出来事っていうのは、やっぱ忘れようにも忘れられない。特に少年期のそれは深い。
不良に絡まれたこと自体は、今となってはあの程度で済んで良かったと思うけど、その後のY君がね……っていう夏のメモリーでした。
PS. 本日、ファイザー製のワクチン第1回接種。1時間半ほど経ったけど今のところ全く異状なし。もう若くないんスねえ……けどま、よかった。