
ラグーサの朝。
旧市街の日の出を撮ろうと、部屋をそっと抜け出す。
昨日の絶景ポイントに到着し、教会の壁に寄りかかる。老いたテリア犬が一匹、尻尾を弱々しく振りながら寄ってくる。
ふと見上げると、教会の向かいにある家のベランダに、主人らしき男が葉巻をくわえて出てきた。
旧市街を眺めて、一服、二服。
腹の出たオヤジなのだけど、カッコいいんであります。自分の街に誇りを持っていることが、その一瞬でうかがい知れるのであります。
男たるもの、かくありたい。
昨夜は街で学会があったらしく、ホテルはどこも満室でありました。
しかし、親切なホテルの従業員が、貸しアパートを紹介してくれたのであります。料金はホテルの半額程度だったから、結果としては実に良かった。朝飯も、近くのバール(カフェ)の食事券をくれたのが嬉しかった。
ここのクロワッサンは、細君いわく
「これまで食べた中で一番美味しいかも!」。

アウトストラーダを疾走するのが夢だった細君
しかしスマート(小型車)にも抜かれてしまう
イタリア人のスピード狂、あなどるなかれ
いよいよシチリア島の最終地、タオルミーナへ向かう。ここは映画『グラン・ブルー』の舞台になったところで、シチリアでも屈指のリゾート地ということでありますぞ。

まず向かったのが、丘の上にあるギリシア劇場。
客席の一番上に座ると、舞台の背後には美しい海とエトナ山が見えるというロケーションなのだ。
崩れた煉瓦。
風になびく、名も知らぬ花。
パチンと手を叩くと、きれいに反響して返ってくる。
この荒廃ぶり、遺跡好きにはたまりません。
このように、舞台を前にして、客席が半円形に広がるのがギリシア風劇場なのだそうです。
一方、舞台が中心にあって、客席がぐるりと取り巻いているのがローマ風劇場なのだそうです。
現物を前にすると、なるほどと得心がいくのであります。
ところで、タオルミーナ名物のエトナ山は活火山なのですが、これがこの後、凄まじいことになることを、我々はまったく知らないのであります。

何も知らずにポーズを取る男たち
4月9日広場にて

この晩、珍しいアーモンドの酒を飲んだ
ゴマビスケットを浸して食べると美味

食事を終えて部屋に帰ってみると、なんとエトナ山が噴火しているではないですか!
溶岩が流れて、赤々と光っているのが見える。
あまつさえ、水蒸気がもうもうと上がっている。
恐るべき地球の生態、脈動するマグマ。
このままリラックスしていて、いいのか!?