アキレスは、返事を渋った。彼の思いは、幼いときからともに過ごしてきた友パトロクロスを失いたくはなかった。アキレスは、生きている限り、その日常の中にパトロクロスのいない風景など考えてもいなかった。残り少ない自分の人生を友とともに過ごしたかった。彼の腕の中で最後のときを過ごす自分を、心の中に描いていた。
『パトロクロス。お前の考えは判った。しかし、それをやるからには、俺の言うとおりににしてくれ。君と俺のためなのだ。敵を深追いすることは許さん!いいな。平原まで押し返したら、ただちにここへ戻るのだ!このこと、しかと心して行け!判ったな。約束だ。いいな!』
アキレスは、くどいくらいに念を押した。パトロクロスは約束した。
アキレスのしくじりは、彼につける副官に、このことを命じていなかったことであった。
『パトロクロス。お前の考えは判った。しかし、それをやるからには、俺の言うとおりににしてくれ。君と俺のためなのだ。敵を深追いすることは許さん!いいな。平原まで押し返したら、ただちにここへ戻るのだ!このこと、しかと心して行け!判ったな。約束だ。いいな!』
アキレスは、くどいくらいに念を押した。パトロクロスは約束した。
アキレスのしくじりは、彼につける副官に、このことを命じていなかったことであった。