アキレスとの約束が、パトロクロスの頭中から、すっかり抜け落ちていた。彼を突き動かして、いるものは何なのか。人智の及ばない力の働きか。身に着けている軍装のなせる業か。迫り来る死の運命の力なのか。闘い、争いの恐怖が心身のいずこにも無く、彼の容姿容貌は、戦場の中にあって輝いていた。彼は、干戈を交えながらトロイ軍を押しさげていった。
生命の危機を脱したヘクトルは力を回復していた。小高い丘の上から戦場を見渡していたヘクトルは、船陣での敵との激戦を思い起こし、退き下がって来る自軍を見つめて無念の唇を噛んだ。戦いの風景の中に、ひときわ煌びやかな軍装で槍を奮い、戦車で駆けてくる将を目にした。
『アキレスではないか!』 目を見張ると同時に、彼の心の炎が燃え上がった。
『奴を倒す!』 率いている軍団と戦車との間隔が開いてきている、時は今だ。ヘクトルの決断は、素早かった。アキレスに見えたパトロクロスの手勢はわずかである。自軍の将兵に軍団に当たるよう指示したうえで、ヘクトルは、倍する手勢を引き連れて、パトロクロスのアキレスに挑んでいった。
生命の危機を脱したヘクトルは力を回復していた。小高い丘の上から戦場を見渡していたヘクトルは、船陣での敵との激戦を思い起こし、退き下がって来る自軍を見つめて無念の唇を噛んだ。戦いの風景の中に、ひときわ煌びやかな軍装で槍を奮い、戦車で駆けてくる将を目にした。
『アキレスではないか!』 目を見張ると同時に、彼の心の炎が燃え上がった。
『奴を倒す!』 率いている軍団と戦車との間隔が開いてきている、時は今だ。ヘクトルの決断は、素早かった。アキレスに見えたパトロクロスの手勢はわずかである。自軍の将兵に軍団に当たるよう指示したうえで、ヘクトルは、倍する手勢を引き連れて、パトロクロスのアキレスに挑んでいった。
