『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第10章  アキレスとヘクトル  34

2008-03-08 07:47:17 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 プリアモスは、老いを忘れて跳ね起きた。従者をも他人に知られること無く起こした。静かに気付かれることなく、アキレスの陣営を離れることが出来た。うまくいった。プリアモスは安堵の胸をなでおろした。
 ヘクトルの遺体をを引き取ったプリアモスの姿が、戦野の中をトロイ目指して歩を運んでいた。
 暁の光が地を照らし始めた。プリアモスの娘カッサンドラが城壁の櫓の上から、戦野を見つめていた。父と従者の二人がヘクトルを乗せた車を引いて来るのを見つけた。彼女は大声をあげた、出せるだけの大声をあげて叫んだ。声は良く通った。
 『皆っ!出て来て!ヘクトルが帰ってきたのよ。』
 城中から皆が出て来て、門のところに集まった。ヘクトルを乗せた車が門をくぐり、城壁の中に入った。ヘクトルが帰って来た。皆が駆け寄り、ヘクトルとプリアモスを取り囲んだ。トロイ城市内に哀切の気が満ちた。