『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  28

2009-08-26 09:18:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは、市民たちの許に戻ってきた。彼の表情は、安堵した表情と考える人の表情が混濁していた。
 オロンテスは、市民たちに打ち合わせの内容を告げ、浜頭、浜衆たちの歓待の宴に参加することについて、自分たちがしなければならないことを説いた。
 彼は、表現しきれない語彙を動員して、身振り、手振りで皆に訴えた。この時代の言語の発達段階からみて、そのようにして、考えや意思が聴き手に伝えられた。単純で数少ない言語数、思考も現代のように複雑ではなく、何を考えているか、伝え手の表情、そして、身振り、手振りで聴き手に伝えられ、理解されていった時代でもあった。
 『皆の衆、我々は、いま、生きてここにいる。昨日も、このエノスの入り江に着いて、ここの浜を取り仕切っている浜頭の世話になり、エブロス川の川向こうの浜に難を避けた。そのうえ、いま、私たちを歓待の宴に招いてくれる。我々の出来ることは、極々、限られている。ささやかではあるが、我々の持っている財物の一部を出して、礼を尽くしたい思うがどうだ。また、そうでなければ、我々、トロイ人としての誇りを失う。私のこの思いに、皆、賛同してほしい。』