『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  35

2011-03-11 07:44:21 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 兄のパラメデスとともに参軍していた弟のオイアクスが、なぶり殺されボロぎれのようにされた兄の遺体を引き取った。余りにもその無惨さに悲しみに打ちひしがれた。彼は、この悲報を本国の父に知らさなければならない、その必然に思い至った。
 『何んとしても、この悲報を父に伝える』 だが、この時代のことである、方法も手段もない。どうすれば伝えることができるか、それも他人に知られることなくやらねばならない。彼は考えに考えた。知恵をしぼったがいい考えが思い浮かばない。心はどん底であえいだ。
 この一念がつのった。つのりにつのった。脳漿をしぼって考えた。遂に彼は一計を思いついた。まさに眉つばものの一計である。彼の執念が為した一計であった。
 彼は作業に取り掛かった。大量の『板切れ』の準備に取り掛かった。その『板切れ』に兄の謀殺の詳細を描いてトロイの浜から海に流した。彼の執念は、海に浮かぶ『板切れ』を押した。本国へと押したのである。
 彼の思いは届いた。エーゲ海に面するエボイア島の岸に、『板切れ』の一枚が流れ着いたのである。それを拾い上げた者の手によって、父である領主のナウプリオスに届けられた。
 ナウプリオスは『板切れ』に記されたことの詳細を読んで怒った。彼は逆上した。そして、決意したのである。