『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  37

2011-03-15 07:29:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 むなしい思いを胸にナウプリオスは帰ってきた。
 『奴ら何としてくれよう』彼は考えた。
 彼が最初に手掛けたのは、トロイに出かけて留守にしている諸将の夫人をそそのかして、姦通や不倫をさせることを企んだ。まずは、アガメムノンだ。アガメムノンの妻女クリュウタイムネストラを狙った。アガメムノンの従兄弟のアイギストスをけしかけ、クリュウタイムネストラと情を通じさせた。また、クレタのイドメネウスの妻メダにはレウコスと密通させた。この者たちは出来上がった。男たちは女たちの夫の留守の無聊を慰めた。これによって、アガメムノンは、戦利として連れ帰ったトロイの王女カッサンドラとともに妻とアイギストスに謀られて斬殺された。クレタの領主であるイドメネウスは、レウコスに妻と娘を殺され、その上、領主の座を奪われて国から追放されてしまったのである。これらの事件は、ナウプリオスの謀り事によるものであった。
 次は荒っぽく天と地の利を用いての残虐の仕掛けをやった。戦い終えて帰国してくる船団に仕掛けたのである。
 エボイア島の東の端が岬であり、その南が海峡である。この岬が断崖絶壁のカフエレス岬である。ギリシア本国への通路であり、岩礁地帯でもあり、まさに航海の難所であった。
 ナウプリオスは、月のない夜、この岬の絶壁に烽火(のろし)をあげて、港だと思わせ、近づいてくる船を岩礁地帯に誘い込み、遭難させる計略を仕掛けた。