『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  47

2011-03-29 07:31:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは短く答えた。これらを引き取るテカリオンの心中を推し量った。
 『判った。了解する』
 テカリオンは、慎重さを崩さなかった。
 兜、鎧、楯は、それなりに値決めして、剣と槍は、ひと山いくらと断を下して提示した。
 『それは何ぼなんでも安すぎる。もうちょっとどうにかならないか』
 テカリオンはしぶった。彼は、この要請に応じようか、どうするか、迷ったすえに応じることにした。
 『そこまで言われるのなら判りました。ここいらが、精一杯のところです』
 『そんなものかな。いいだろう、了解する』
 商談は終わった。品々の値決めを終えた当事者たちは緊張を解いた。パリヌルスは、一同を見回して、
 『まあ~、一服しましょうや』 と茶を注いだ。
 テカリオンは、気にしていたことをイリオネスに訊ねた。
 『イリオネス殿、貴方の左手にある、線引きされた板と鉄の棒は何ですかな』
 『あ~あ、これですか。テカリオン殿はこの道具をご存知じゃないのですかな。これは、いたって重宝、この上ないないものなのです。方角を測り、大雑把であるが時を知る道具なんですわ』
 『ほう~、そんな道具があるのですか。見せていただいてよろしいですかな』
 イリオネスは売り込みのタイミングを謀った。
 『どうぞ、どうぞ』
 『ひとつは、板に十字に線引きして中央に穴がある。棒を差し込んで立てるようになっていますな。しかし、もう一つは、何の仕掛けもない、ただの鉄の棒ではありませんか』