『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1078

2017-07-20 13:18:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは祝宴の風景の中にいる。飲めや、食べろやの集いの島を巡って歩く。
 彼は、隣り合わせた者に話しかける。
 『飲んで食べているかな?味の方はどうだ?宴っていいものだな』
 『隊長もそう思われますか?私は、いつもそう思って宴の中にいます』
 『話をする、話を聞く、いいものだ!感無量というところかな。俺にとって、このような話し合い、語り合いがめずらしいのだな』
 『宴の中にいると孤独が侵入してこない。俺がいる、奴がいる、もう一人の奴もいる』
 『話をする、話を聞く、それで心が紡がれていく。絆ができていく』
 『話す相手が持っているもの、自分はそれを持っていない。相手の持っているものを共有する。それが喜びでもあります。たまに、持ちたくない荷物もありますが。隊長、酒杯を手にしてください。酒を注ぎます』
 『おう、ありがとう』
 『お前も杯の酒を飲みほせ!俺が注ぐ!』
 『ありがとうございます』
 二人は注ぎ合って酒を口に運ぶ。そこに一人が加わり、また一人が加わる。ギアスが顔を見せる。
 『おう、ギアス、よう来た。お前もそこに座れ!』
 『はい!』
 『ギアス、海戦の話を聞かせろ!』
 ギアスが海戦の話をし始める。周りの者らは酒を飲むのも忘れてギアスの話に聞き入る。気づいた時には、20人余りがギアスの話に耳を傾けている。
 パリヌルスが周りにいる一同に酒を注いでやる、焼けた肴を手渡してやる。
 『わあ~、隊長!馳走になります』
 『おう、気にするな。飲んで食べてギアスの話を聴け!今している話は、俺に報告していない話だ、まさに武勇談というところだ』
 『ギアス艇長のとっておきの海戦談義ですか』
 集まっている者らの数が増えている、聴衆といえる、海戦の勇者の話に耳を傾けている。
 飲むほどに、酔うほどに、彼らはギアスの話に心酔している。
 祝宴の各所に人が集っている。
 オキテスも場にできている人の集いの中にいる。海戦を戦った者の一人を呼んで話を語らせている。
 あちこちにある人の集いが歓声をあげる、その都度、杯の酒を飲みほしている。
 統領と軍団長は、スダヌス浜頭の語り口に心を酔わせている。
 彼らが楽しんだ祝勝の宴が終宴の時に到ろうとしている。小島の連中が引きあげていく、彼らを見送る、また飲み始める、勝利した海戦談義を語らせる、その語りに酔う、羨望を心に湧かせる、海戦に参加している気分になる、祝宴は人間模様を描きながら幕を閉じようとしている、一人去り、また、一人去りと場に集った者らが去っていく。
 セレストスらが場の後始末にとりかかる、酔いつぶれた者の始末もする。
 彼らが見あげる夜空には、夏盛りの月が澄んだ風情で光を投げ落としていた。