『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1085

2017-07-28 08:56:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは打ち合わせを終える、場を解く。
 パリヌルスは持ち場に戻っていく、オロンテスは今日の報告を終えてパン工房へ足を向ける、アエネアスとイリオネスは、建造の場を引き上げていく。
 歩きながらアエネアスはイリオネスに話しかけた。
 『なあ~、イリオネス、マリアの集散所の連中どのような話のルートで新艇を知ったのかに疑問を感じている。お前は、マリアの集散所を視察してきているな。彼らの情報感度はどんなものかな?』
 『はい、見てきておりますが、それはわかりません』
 『彼らが新艇を知ったルートは、いかなるルートかについて考えてみてくれ。いずれにしても、お前と俺が考える範囲を超えはしないと考えるが』
 『解りました。思いつくところを考えてみます』
 『おう、そうしてみてくれ。俺の考えるところは、実物を見ての引き合いか、ウワサのいずれかのひとつと考えている』
 『そのことは、明後日の集散所の話で解ると考えていますが』
 『いやな、イリオネス、それをいろいろと考える。これが楽しい!自分の考えが的中したとき『おう、当たったか』とささやかな快感を感じるのだな』
 『そうですか、楽しそうですね』
 『イリオネス、楽しいぞ!この謎あて問答!明後日の夕刻にはそれが判明するのだな。二人でこの謎あて問答をやらないか、どちらの答えがあっているかだ!どうだ?』
 『いいですね!やりましょう!』
 イリオネスは、アエネアスの提案を快諾した。
 『それでは、明日の夕刻、互いの答えを出して、書きとめる。翌日の夕刻、答えの照合をする。それでいいですね』
 『解った。おう、それでいい』
 二人の謎あて問答が幕を切って落とした。
 アエネアスもイリオネスも心を躍らせている。
 湧きあがる感情、微笑みが沸いてくる、抑えるが抑えられない、微笑みがこぼれる、笑みが怒涛となる、二人は顔を見合わせて大声をあげて笑った。
 『おう、笑いがはじけたな』
 再び、顔を見合わせて笑った。
 二人は、この謎あて問答を誰にも知られることなく二人だけでやる、そこに言い知れぬ喜びを感じていた。
 彼ら一族が生計を営むニューキドニアの浜の今日が静かに暮れていった。