『トロイからの落人』 FUGITIVES FROM TROY 第７章 築砦 1425

　オキテスらは休むことなくイラクリオンの港をあとにする。
　ダックスは、マリアからの道中、船速の維持に留意して操船している。船速をおとすことなくイラクリオンに着港する。
　彼らが使用してい試作戦闘艇は、そのような操船ができるように配慮して造られていたのではなく、艇の船首に施した衝角構造が現代における船舶に採用されているバルバスバウ的な効果を生み出していたのではなかろうかと推察される。
　オキテスがテムノス浜頭に声をかける。
　『テムノス浜頭、レテムノンに向けて、イラクリオンを出ます』
　『おう、オキテス隊長、君らの気遣いがわかっている。気づかうことなくやってくれ！』
　『はい、ありがとうございます』
　『ところで、今日、今夜の停泊をどこに予定している？』
　『はい、今夜の停泊は、スダヌス浜頭のスオダと予定しています。レテムノンからスオダまでの航海については慣れているともいえるので』
　『そうか、ムリだと思えば、俺の浜で停泊してもいいのだぞ?』
　『ありがとうございます。その時はよろしく願います』
　『おう、心得た』
　テムノス浜頭との会話が終わる。
　オキテスは、艇上を見渡す、漕ぎかたらと目を合わせる。ダックスは、風の状態に気を配って操船している漕ぎかたらは、漕ぎ手をゆるませることなく一心不乱で艇を漕ぐ。
　オキテスもダックスも状況を見計らって漕ぎを交替する。
　ダックスは、船速維持航走策を講じて漕走している。２４人の漕ぎかたらの３分の１に漕ぎを休ませ、３分の２にあたる１６名の漕ぎかたによる漕走によって、船速を維持して航走を続ける。
　艇は、順調に行程を航走し、想定した時間にレテムノンに着く。
　テムノス浜頭がオキテスに声をかける。
　『オキテス、予定通りの到着だ！ご苦労であった。操船担当を誉めてやってくれよ。売り出しの件、展示試乗会の開催、レテムノンのことは俺がやる、うまく事を運ぶ、任せておけ！』
　『ありがとうございます。浜頭、よろしく願います』
　『統領、軍団長によろしくな。販促ツールをもらう！』
　オキテスは、レテムノン分としての３０枚をテムノス浜頭に渡す。
　別れの挨拶を交わす、オキテスら一行はレテムノンの港をあとにする。
　一路、スダヌス浜頭の待つスオダの浜を目指した。