『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1463

2019-01-30 05:50:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスの話が続く。
 『オキテス、お前がやっている営業活動だが、話し相手が浜頭である、彼らはひとかどの人物であり、海千山千の人物たちである。世の中の甘いも酸いもよく知っている。それ故に老獪でしたたかである。そういうわけだから、自分の利を計ってムダをしない。心するのだな。人当たりのよさそうなところを見せて、内面に怖いものをひそめ持っていると考えて当たればいい』
 『そういうものですか』
 『オキテス、物事の局面に対して、読みが浅かったり、甘かったりしたら足をすくわれる。そうは思わんか』
 『なんとなくわかります』
 『相手と手を携えて物事をやる、相手と息が合うとか合わないとか、息づかいだな、そこで働かせるのが気働きだ。息づかいを感じ取り、機微をつかみ、間をとったりして一気にタタミこむ。気迫の勝負だ。このあたりが勝負のしどころだな。相手を立てて、こちらの考えているところに誘い、物事を決着する。交渉ごとのまとめどころだ!オキテス、理解してくれたかな』
 『統領の説明で理解しました。そのあたりを数をこなして慣れていきます。勉強になりました。ありがとうございました』
 アエネアスの説くところは、交渉ごとのむつかしさを説いている、耳にした者らにとってもいい教訓であった。
 オキテスが口を開く。
 『次回催行をする展示試乗会は引き合いの受注化を目指しての開催であり、10月度に完成した船舶を在庫艇と合わせて納入しようと考えています。その打ち合わせをしたいと考えています』
 『おう、そうか、了解した』
 一同は会議を終えての打ち合わせを終える。頃合いは午後の半ばに到っていた。
 この時代の事業の進め方については、成文化されたものはない。事業を行うにあたって、機序を重んじて順序よく遂行されていたらしいことがうかがわれる。時間をかけて想像の領域からはみ出ることなく、約束が守られ誠意ある取引きが自然体で為されていたと推考される。
 一同は散会して、アエネアスとイリオネスが会所におちつく、アエネアスがイリオネスに語りかける。
 『なあ~、軍団長、今回催行した船舶売り出し展示試乗会のことだが、オキテスの事前打ち合わせの実行が結果の出る状況を招き、その結果を獲得したといえる。お前の感触はどうだ?』
 『統領の言われる通りです。事前の営業活動をしたればこそ、招き寄せた成果と言えます。私が特に感じるのは、イラクリオンとレテムノンにおける成果が期待以上のものであったことです。どことなく不思議な力の作用を感じています』
 『そうか、オキテスの業務遂行力と、プラス、不思議な力の作用か!いい結果とは、そういうものかもしれんな』
 二人は、その結果の何故かを考えても確かな答えを得ることができない不思議と言うほかがない結果として受けとめた。