『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1483

2019-02-27 04:16:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 夜半からの荒れ模様が荒れつのる、やみそうにない。
 彼ら一行が荒れ模様のおさまりをひたすらに待つ、おさまりを乞い願う、オキテス以下一行のひたすらの願いである。
 午後半ばになって荒れがおさまってくる、空一面の雲に切れ目が見えてくる、陽が射してくる、風もおさまりかける。
 オキテスとダッカスらが波打ち際に立つ、西に沈みゆく太陽を見送る、願いが届けよとばかりに念じる。
 エドモン浜頭から、気持ちのこもった差し入れが届く、彼ら一同は、感謝して夕食を終える。
 ようやくにして、彼らは満天星空の夜を迎える。
 オキテスは、ダッカスら数人のスタッフを連れて、エドモン浜頭宅へ謝礼に足を運ぶ。
 『エドモン浜頭殿、ありがとうございました。一同ありがたくいただきました。満天に星を見るように天候が落ち着いてきました。明朝には出航できそうです。いろいろと心遣いをいただきありがとうございました』と言い終えて一同が低頭する。
 『そうか、天候が回復したか、それは重畳!何よりだ。天気は気まぐれ、いつ急変するか判らない、そのような季節にさしかかっている。道中、入念気配りだ!無事の航海を祈っている』
 一行はエドモン浜頭宅を辞する。
 宿営地に戻ったオキテスは、一同に明朝出航の件を伝えて寝についた。
 彼らは、夜が明けきらない、星が光を振りまいている刻にイラクリオンの浜を離れて帰途航海に就く。
 イラクリオンを出て半刻後に東の水平線を破って昇る大日輪をのぞみ見ながら、嵐の終焉をうねりで伝える海洋を懸命に漕ぎ走る。
 帰途航海の2艇は、沿岸からの離岸距離を短く保ち航走する。
 積載人員制限量オーバーの人員が乗船している、漕ぎかたの交替を繰り返し力走する。
 レテムノンまでを通常航走時間を2割強短縮して航走する、昼食時間を過ごす。
 ダッカスが航海事情を一同に説明する。
 『天候も落ち着いてきている、海も落ち着いてきている。ここからは一気に半島岬に向かい、我らが浜を目指す。我らが浜に到着する頃合いは、日暮れの頃合いと考えられる!懸命の漕ぎを要請する。一同、奮励して漕いでくれ!』
 2艇はレテムノンの浜をあとにする、一刻半を経ずして半島岬の東端にしかかる、進行方向を西に転じる、東北東から風が来ている、帆張りする、船を押す力は十分とはいえないが、少しは頼れた。
 艇上の漕ぎかた連中は、懸命に櫂を握って漕ぐ、2艇は航走する、キドニア沖を通過する頃には、宵が迫りくる、秋の宵は短い、日暮れてくる。
 浜が近づく、とっぷりと日暮れている、オキテスがダッカスに指示する。
 『ダッカス、松明信号だ!』
 松明に火をつける、松明信号を浜に送る、その信号を受けて、浜にかがり火が燃えあがる。
 2艇がニューキドニアの浜に無事の帰着を果たす、浜には大勢が出て、オキテスらを迎える。
 アエネアスらも浜に立って帰着した彼らを迎える。
 オキテスら一同が波うち際に整列する、アエネアスに無事の帰着を報告する。
 『おう、ご苦労であった。嵐に遭遇し大変であったろう。それにもかかわらず全員無事の帰着ごくろうであった』
 アエネアスが進み出る、オキテスの肩をしっかりと抱いた。